オンライン旅行販売の未来予測、フォーカスライト牛場代表に聞いてきた

スマホ所有が定着し、ウェアラブル端末も浸透し始め、人々の手の中にインターネットがある状態が平常化しつつある。ビジネスでも人々の生活のなかでもデジタル化が進む中、旅行のオンライン販売は今後もさらに進んでいくことは必至だ。どこまでオンライン旅行市場は拡大し、それに旅行・観光ビジネスはどのように対応していくべきか――?

フォーカスライトでは旅行者とサプライヤー、旅行会社(仲介業者)の関わりを定期調査しており、その日本部門であるフォーカスライトJapanでは先ごろ、旅行会社をはじめサプライヤーなど関連企業への聞き取り調査をもとに推計した「2013年度 日本のオンライン旅行市場調査 第2版」を発行。この独自調査を行なう代表の牛場春夫氏に、今後のオンライン旅行市場の展開を聞いてみた。

▼オンライン販売どこまですすむ?

今後、日本のオンライン市場はどのように進んでいくのか。

牛場氏は同調査の結果にも出ているように、(1)国内事業者のオンライン販売額の急伸、(2)米国と欧州のオンライン販売比率(43%、42%)に対し、日本はまだ33%と低い(各2013年度、バス除く数値)という2つの点から、「日本のオンライン市場はまだまだ伸びしろがある。日本は欧米に2年以上遅れており、このキャッチアップが続いて大きな成長が期待できる」と根拠をあげる。

成長分野については、オンライン販売比率が最も高い国内航空(63%)は「現状ではほぼ頭打ち」とし、伸びる可能性のある分野として「海外旅行」を指摘。また、他分野よりもオンライン販売比率の低い宿泊(32%)も拡大する余地があると見る。特にインバウンドの増加により、必然的にホテルのネット予約が増加するとし、全体的にインバウンドが底上げする可能性もあるとする。

ただし、「勢いはあるものの、当然ながら徐々に伸び幅は縮小していく」とも指摘。フォーカスライトでは2015年のオンライン販売比率を米国と欧州それぞれ45%と予測しており、日本市場について牛場氏は4割に達すると見ている。その後、5割程度までは進むとするが、「6割強、全体の3分の2程度まで」が現在の環境下でのオンライン販売域だと感じているという。修学旅行や法人団体などの手配では一部はネット化されても、オフライン手配が残る部分があると考えるからだ。


▼未来の旅行のキーワード

とはいえ牛場氏は、さらにオンライン旅行市場が成長する可能性を指摘する。それは技術の進化によるものだ。現在のオンライン販売は予約手配の自動化で行なわれているが、「その技術が次のレベルに進歩すれば、それにつれられて6割以上に拡大する」と見る。

具体的にはどういうことか。牛場氏は、ネット化・デジタル化が進む未来において、旅行のキーワードの一つに「キュレーション」をあげる。その立役者は、人工知能とビッグデータの活用だ。

現在、ネットでの旅行予約では、「日にち、目的地、予算」の3点セットで検索する必要があるが、「その入力も不要になる。人工知能とビッグデータで、自動的にユーザーの嗜好にフィットした旅行を提案するシステムができるようになる」。ドローン(無人航空機)や自動運転車など他分野で先行しているように、旅行でも人工知能を活用した技術開発が進むはずだという。

そして旅行会社に対しては、「オフラインの旅行も大切だとする考え方も多いが、やはりテクノロジーに追いつかれると感じる部分もある。そこまで見据えて取り組まなければならないのでは」と危機感を促す。


▼旅行市場で勝負するためには

つまり、オンライン旅行市場はさらに拡大するが、予約手配の効率化だけでは勝負できなくなると牛場氏は言う。「2000年にOTAが台頭し、2010年にモバイルが第2の革命を起こした。10年周期の進化を踏まえると、2020年にはキュレートされた旅行の自動提案ができるのでは」と、オンライン旅行市場に訪れる早期の変化を予想する。

もはや先々を語るときには「オンライン旅行市場」ではなく「旅行市場」として考えるべきといえるが、刻々と進化する旅行市場にどう立ち向かうべきか。牛場氏は「オンラインはアイディアの世界なので、革新性が必要。例えばLINEも革新的なサービスだった」と述べ、「(既存のサービスと)は違う、変わったことをする必要がある。それが何かを探すことが今、最もするべきことだが、できていない」と指摘。「これまで旅行会社は他に追従して取り組んできた感があるが、それでは追いつけない。グーグルと同じようなことはできるわけがない」と、対応の姿勢を問う。

その上で牛場氏は現在、オンライン旅行市場で注力されている動きとして、旅行予約手配の前後のアクションとなる「タビマエ」「タビナカ」への取組みをあげた。フォーカスライトの調査によると「回答者の5割の人が旅行計画時にどこを目的地とすれば良いのかわからない、決められていない」、タビナカの現地オプションについては「実施の72時間以内に購入している」という結果が出ているという。まだ旅行を決められていない消費者をつかまえて案内していく。この辺りからも、牛場氏があげた「キュレーション」の真意が伝わってくる。

世界では大手OTAがオンライン市場を席巻しようとするM&Aが進む。この動きの中で生き残るためには、革新的なアイディアによる独自性がカギとなる。一筋縄ではいかないが、中小規模の旅行会社でも成し得る可能性があるといえるだろう。

取材:トラベルボイス編集部 山岡薫


取材・文:山田紀子

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