外国人旅行者の受け入れのために、宿泊施設が知っておくべき注意点や必要な対策を整理してみた【コラム】

こんにちは、ホテルコンサルタントの堀口です。

今回はちょっと軽めの話題を。

継続しているインバウンドの好調についてこの先しばらく続くと見る方も多いようで、既に受け入れ対策を進めている関係者は多いかと思います。

報道やヒアリングなどの業界観察では、よく見られるのは下記のような対策でしょうか。

▼言葉の問題に対する対策

  • 英語や中国語を話せる人材の育成や雇用
  • 音声認識の導入

参考記事:ロボットが観光案内する新たな音声翻訳サービス、旅行者対応と業務用で宿泊施設など対象に -KNT-CT(2015年9月22日)

▼設備的なもの

  • Wi-Fi 環境の拡充
  • 対応するクレジットカードの導入 (銀聯カードなど)
  • 外貨両替機の導入

▼海外とのチャネル(予約経路)の拡充

  • 自社サイトの多言語化

Expedia- Booking.com- Agoda など

▼異文化への理解と対応

  • イスラム教圏からのお客様に対する「ハラール」の取り組み

- ホテルゆがふいんおきなわの事例(2014年9月)- ホテルグランヴィア京都の事例(2013年8月、PDFファイル)

  • タトゥーの受け入れ

- 観光庁による実態調査(2015年6月)- 星野リゾートの受け入れ事例(2015年4月)

日本文化のひとつとして温泉や大浴場の体験は是非とも海外からのお客様に楽しんでいただきたいところではあります。しかし、タトゥーに限らず入浴に対する習慣の違いは大きいようで、同時に入浴された日本人のお客様からのクレームにもつながっており、温泉や大浴場を持つホテルや旅館では入浴マナー啓蒙のための工夫を行っています。

  • ツアーの場合はツアーガイドに案内を渡す
  • チェックインの際に案内を渡す
  • 客室内や浴場内に案内を用意しておく
  • 浴場の更衣室内ロッカーや脱衣かごに案内を掲示する

また、中国最大手のオンライン旅行会社であるCtripは、以下の項目で「中国人に優しい」レベルを表しているとのこと。

  • 無料Wi-Fi
  • 中華レストラン
  • 中国語チャンネル
  • 中国語スタッフ
  • UnionPay(銀聯)カード
  • 電気ポット

東京には5つ、6つの項目を満たすホテルは多く、地方ではまだ少ないそうです。

さて、実際に海外からのお客様を受け入れている最前線のスタッフにお話を伺うと、他にも細々とした受け入れ対応を考えなければならい点があるようです。

  1. 海外のお客様を対応する時間は長くなる
  2. 大きい荷物を預かる工夫が必要
  3. 客室清掃にかかる手間が増えている
  4. 客室の品質維持に関して

これらを順にみていきましょう。

1. 海外のお客様を対応する時間は長くなる

不慣れな土地ではあれもこれも心配になりますし、コミュニケーションも日本人同士のように円滑に進むわけでもありません。そして、海外からのお客様は要求水準が高い方も多く、一度観光案内にかかると相応の時間が必要になることも多いようです。

しかし一方で、これまでのお客様の層に合わせた最小限の人数でフロント業務を行っているところも多く、結果かなりフロントスタッフの手が回らない状態になってしまいます。単に忙しいというだけでなく、顧客満足度の低下やこれまでの顧客の離反にもつながりかねません。

海外のお客様が増えて宿泊部門の収入が増えてきているのだとしたら、スタッフの拡充を考えるべきかもしれませんし、海外からのお客様の要望に円滑に対応する工夫を行うべきかもしれません。

少なくとも、マネジメントの方々は現場に足を運んでみて状況を把握していただく必要がありそうです。

2. 大きい荷物を預かる工夫が必要

ご自身の海外旅行の経験を考えても想像がつくと思いますが、海外旅行の際に持参するスーツケースはかなりの大きさ、そしてそれを気軽にフロントに預けていきます。

しかし、これまで国内旅行を主体に考えていたためか、あるいは宿泊特化型ホテルが増えた際に面積効率を追求した結果なのか、荷物を預かる十分なスペースがない施設が多いのです。

そのような施設ではフロント事務所に無理をしてスーツケースを詰め込んでいたり、複数の場所に分散して保管したり、ロビーにネットをかけて保管したり・・・と、保管状態がお世辞にもいいとは言いかねます。

このような状況では預かったお荷物を探すのにも一苦労、紛失盗難のリクスも高いと言えます。対策として考えられるのは以下のとおりでしょうか。

  • 紛失や盗難に備えて事業者向けの保険に加入する
  • 荷物を預かるスペースを新規に検討する(ロビーの一角を改装するなど)
  • 思い切ってコインロッカーを導入する

 

3. 客室清掃にかかる手間が増えている

「爆買」の言葉に象徴されるように、海外からのお客様の中にはショッピング目的の方もいらっしゃるのですが、結果発生してしまうのが「ゴミ」です。

これまでのお客様が客室に残したものとは比較にならないくらいの量のゴミが出ているようで、客室清掃にかかる手間が増えています。

単に「ゴミの量が増えた」ということだけではなく、客室に備え付けのゴミ箱に収まらないまま残された「モノ」はゴミか忘れ物なのかの判断が難しく、宿泊施設としては保管せざるを得ません。これもまたスタッフの負担増加につながります。

これまで客室の中のゴミ箱は小さな物が多かったようですが、蓋付き大型のゴミ箱の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

4. 客室の品質維持に関して

大きい荷物の影響は預かることだけでなく、客室にも影響してきます。

簡単に言うと、壁紙の寿命が短くなります。

宿泊特化型ホテルはこれまで客室の広さを抑えることで低単価での販売を可能にしてきたという面があります。国内の主張旅行社をターゲットにしていた頃はそれが客室の品質に影響することはありませんでした。

ところが、海外からのお客様は一部屋あたりの利用人数も多く、ツインやトリプルが人気です。トリプルルームに対応するためにエキストラベッドを用意するような場合は、ベッド以外のスペースがかなりタイトになる傾向があります。

そこに大きなスーツケースが加わるのですから、壁紙にスーツケースが当たり、壁紙が破れたりするような劣化が起きるのは避けようがありません。

これから建築される施設では客室の広さなどのスペックを見直す手もありますが、建築コストなどとの兼ね合いもあります。そもそも既存の施設では広さは如何ともしがたい問題です。

対応策としては以下が考えられるでしょう。

  •  スタッフによる日常的な簡易修理が行える体制を作る

- 施設担当を置けるかどうか

- 客室係りやフロントスタッフが対応する場合はトレーニングと機材が必要

  •  改装の頻度を以前より高く検討する

他にも細々とした課題はたくさんあるのですが、いずれにしても解決しておくべき問題です。

売上が好調の今こそ投資できる時期でもあるでしょうから、現状把握の上優先度の高い物から対策を取っていただくことをお薦めします。

堀口 洋明(ほりぐち・ひろあき)

堀口 洋明(ほりぐち・ひろあき)

ホテルコンサルタント。長崎大学卒業後、国内のリゾートホテル、シティホテル、ファンド系ホテルチェーン本部勤務を経て2007年に株式会社亜欧堂を設立。国内系・外資系、シティホテル・ビジネスホテル・リゾートホテルといったホテルの業態を問わない経験を持ち、「ホテルマネジメントをサポートする」をコンセプトに、国内ホテルを中心にコンサルティングを提供中。著書に「ホテルの売上倍増実践テクニック100(オータパブリケイションズ)」など。

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