高成長する世界のオンライン旅行会社、その最新トレンドと地方送客のポイント ―最新動向セミナー取材レポート

電通観光ユニット会OTA分科会が開催した「オンライントラベル最新動向セミナー」で、OTAやオンライン旅行サービスの代表らが登壇。オンライン旅行業界から見た旅行市場動向について語った。

世界のOTAの高い成長率の背景にあるもの

メタサーチ「Travel.jp」を運営するベンチャーリパブリック代表取締役で、オンライン旅行業界の国際会議WIT Japan実行委員長の柴田啓氏のテーマは、世界のOTAの動きについて。先ごろシンガポールで開催されたWeb In Travel 2015を踏まえ、注目すべき3つポイントがあるという。

IMG_2769まず1つ目にあげたのは「業界再編」。柴田氏はこれを「世界で起こっている最も大きな動き」と強調した。

プライスラインをはじめ、エクスペディアやトリップアドバイザー、シートリップなどが次々とM&Aで規模を拡大する動きが加速しているが、その原動力を「成長に対する貪欲さ」だと説明。柴田氏によるとWITをはじめ、海外のカンファレンスでは必ず「どのくらい成長しているか」が話されるほどその意識が強い。その結果、日本でもオンライントラベルは楽天が19%増、ヤフーが12%増と高い伸びで推移しているが、海外OTAの雄はそれを上回る2~3割増の成長率を維持している。

2つ目は「マーケットプレイス」。「勝ち組になるためにしていること」と補足しつつ、OTAがホテルや航空券などサプライヤーの旅行商品の販売から、レストランや現地アクティビティ、メタサーチなど経済圏を周辺領域にも拡大している点を指摘。現在は、それぞれのカテゴリから「いかに効率的な予約に結び付けていくかの勝負になっている」と語る。

最後にあげたのは「スタートアップ(新規の起業)」。柴田氏が「最も注目しているもの」だという。

2005年以降、旅行系のスタートアップは活況で、約1000以上が誕生。そのうち27%はアジアだが、中国やインド、シンガポールが中心で「日本は遅れている」と指摘。WITでは「ブートキャンプ」としてスタートアップのコンペティションを行なっているが、今年は日本からの参戦はなかった。「個人的には若い人たちが旅行の世界に入って業界を盛り上げていかなければ、ダメになっていくと思う」と懸念する。

ただし柴田氏は、現在の旅行系スタートアップの5社に1社はモバイル系であることを説明。実は旅行関連のキーワードを検索したデバイスの割合を見ると、日本は他国よりもスマホが最も多いことから、「日本のスマホのネット接続環境は世界でもリードしている。日本からモバイルを活用した旅行系スタートアップが出てきても不思議ではない」と、今後への期待も示した。

オンライン上に「中央と地方」の概念はない

IMG_2775「訪日外客の地方送客」のセッションでは、ブッキング・ドットコム・ジャパンの日本地区リージョナル・マネージャーの勝瀬博則氏と、トリップアドバイザーのビジネスディベロップメントマネージャーの西林祥平氏が登壇。

このなかで勝瀬氏は、地方送客について「中央と地方の2軸での話が多いが、ネットではその概念がない」とした上で、飛騨で里山サイクリングを提供する「美ら地球」を例示。首都圏空港から300キロ以上離れた飛騨に、このアクティビティを目当てに多くの外国人が訪れている。これについて勝瀬氏は、社長が世界的コンサルティング会社での経験を有し、英語が話せて発信力があること、ネット販売のノウハウがあったことで、おきた事実であるとと分析。地方送客は「勝てる個人がどこにいるか」だとする。

ブッキング・ドットコムでの地方送客については、「ウェブではどこを紹介すれば人が来るのか予測は難しい」と述べ、「ユーザーがどこかに行きたいときに我々がいる状況を作るようにしている」という。これは、旅行者が旅行を探すためにスマホやPCに触れたとき、デバイス上のどこかに出現できる仕組みを指している。そのために、同社はデジタルマーケティングに磨きをかけ続けている。

また、西林氏は同社のクチコミの傾向から、コミュニケーションの重要性を提示。例えば、トリップアドバイザーのクチコミをもとにした日本のレストランランキングでも、上位ほどコミュニケーションの評価が高いという。その内容は「フレンドリーだった」「写真を撮ってくれた」など、「会話や接し方が外国人を惹きつけている」とし、「完璧なコミュニケーションが必要なわけではない」と述べた。これについては勝瀬氏も「ベストの宿や料理ではなく、ベストの経験を求めている」と同意する。

このほか、勝瀬氏は宿泊施設の課題として、予約のタイミングにあわせた体制整備をあげた。世界では1年前から予約が入り、ブッキング・ドットコムでは3か月以内の予約は2割に満たない。しかし、東京では現在、約600施設と契約しているが、そのうち1年前の予約が可能なのは100軒のみ。その他アジアの都市では、7割の施設で予約ができる状況になっているという。勝瀬氏は「海外の人が予約したいときにウェブに出てこなければ、(宿が)存在しないことと同じ」と注意を促した。

取材・記事: 山田紀子


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