今年実施予定の「旅行業法改正」とは? 検討会委員の弁護士が現行制度から規制緩和まで解説 【コラム】

はじめに

弁護士の谷口です。

本年1回目のコラムでは、私も委員として参画していた観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」による2016年12月8日付「中間とりまとめ(PDFファイル)」における検討結果を踏まえ、本年の通常国会において実施される予定の旅行業法改正の概要について、解説したいと思います。

中間とりまとめでは、大きく分けて、【1】受入環境整備(着地型旅行を企画提供しやすい環境の整備)、【2】現在、旅行業法の規制対象となっていないランドオペレーターに対する制度創設の2点について、法令等の改正に向けた措置が進めることになりましたが、今回のコラムでは、主に、【1】受入環境整備(着地型旅行を企画提供しやすい環境の整備)を中心に解説したいと思います。

受入環境整備(着地型旅行を企画提供しやすい環境の整備)の具体的内容

(1)現行制度について

「着地型旅行を企画提供しやすい環境の整備」とは、平たく言えば、着地型旅行の普及・促進に向けた旅行業法の規制緩和のことです。

観光庁は以前から着地型旅行の普及、促進に取り組んでおり、直近では、2013年4月、保有資産額に関する登録要件や営業保証金の供託義務を緩和した

地域限定旅行業の登録区分を設けました。これにより、着地型旅行を造成・販売する事業者の新規参入が期待されていたところですが、実際には、新規参入はそれほどうまく進みませんでした。

その要因としては、まずは、着地型旅行商品の市場規模、事業採算性の問題が影響していると思われますが(端的に言えば、儲からないということです)、規制面では、旅行業者に課される旅行業務取扱管理者の選任義務や、地域限定旅行業者が造成・販売できる着地型旅行商品の催行範囲が狭すぎることが、その参入に当たっての障壁となったことが考えられます。

現在の旅行業法では、旅行業者は、各営業所に最低1名以上の旅行業務取扱管理者を選任することが求められ、国内の旅行商品を取り扱う営業所においては、旅行商品の催行範囲にかかわらず、国内旅行業務取扱管理者試験に合格した者を管理者として選任する必要があります(法第11条の2第1項、同第5項)。また、この旅行業務取扱管理者は、複数の営業所を兼務することが認められておらず、旅行業者においては、営業所毎に旅行業務取扱管理者を確保する必要があります(法第11条の2第4項)。

そのため、地域限定旅行業者の登録を取得しようとする場合、国内旅行業務取扱管理者試験の合格者で、どこの営業所にも選任されていない人材を必ず確保する必要があるのですが、都心部以外では、そのような人材の確保が困難な場合があるようです。また、当該事業者の既存の従業員に、国内旅行業務取扱管理者の試験を受験させて、資格を取得させることも考えらますが、同試験では、国内全域の地理や歴史の問題等、当該地域での着地型旅行商品を造成、販売する限りにおいては不要な知識も問うものとなっており、事業者に過大な負担をかけるものとなっていたようです。

また、催行範囲については、地域限定旅行業者は、募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行のいずれの旅行類型についても、原則、営業所が所在する市町村とそれに隣接する市町村の範囲という形式的かつ地域格差が生じやすい基準により限定されています(施行規則第1条の2第4号)。そのため、空港やターミナル駅等、観光拠点となる場所が、近距離にあるにもかかわらず催行範囲に含まれないということがあり、かかる催行範囲の規制が、地域限定旅行業者による魅力ある着地型旅行商品の造成を必要以上に阻害することがありました。

(2)規制緩和の内容

そこで、中間とりまとめでは、上記の規制面での参入規制を合理的な範囲で改善するため、以下の3点について規制緩和等を実施することになりました。

ア. 旅行業務取扱管理者の資格要件の緩和

旅行業務取扱管理者試験を現行の「総合」「国内」に追加してもう1種類を新設し、新たな試験は、着地型旅行を取り扱う上で必要な知識を問う内容の試験とし、地域限定旅行業者等は、当該試験の合格者を営業所に選任すれば足りよう法改正を行うものです。

イ. 地域限定旅行業者の旅行業務取扱管理者の選任要件の緩和

地域限定旅行業者については、他営業所との兼任禁止規定を見直し、営業所の業務量等を踏まえて相当と認められる場合には、旅行業務取扱管理者による複数営業所兼務が認められるよう法改正を行うものです。

アとイの改正が実現すれば、地域限定旅行業者の登録を取得しようとする事業者等において、より容易かつ柔軟に旅行業務取扱管理者資格を有する人材を確保できることとなります。

ウ. 第三種旅行業者、地域限定旅行業者が主催できる募集型企画旅行の催行範囲について

催行範囲については、現行法令においても、観光庁長官が告示によりエリアを指定することで範囲の拡大が可能ですが、当該制度の活用実績はこれまでにあまりありませんでしたが、今後は、地域の観光実態に応じて、当該制度をより柔軟に運用していくことになりました。これにより、地域限定旅行業者において造成できる旅行商品も多様化していくことが期待されます。

さいごに

中間とりまとめでの【1】受入環境整備(着地型旅行を企画提供しやすい環境の整備)にかかる法改正等の内容は以上となりますが、中間とりまとめでは、【2】ランドオペレーターに関する制度創設も旅行業法に盛り込む方向で法改正を進めることが結論付けられています。

ランドオペレーターについては、その実態把握、手配内容の明確化、旅行者の安全の観点から、登録取得、契約書面交付義務・記録保存義務、旅行者を害する行為の禁止、行政処分の根拠規定、罰則規定等、必要最小限の規制を設ける方向で議論されていますが、機会があれば、改めて詳細について解説したいと思います。

谷口和寛(たにぐち かずひろ)

谷口和寛(たにぐち かずひろ)

弁護士法人御堂筋法律事務所 東京事務所所属弁護士。2014年5月から2016年4月まで任期付公務員として観光庁観光産業課の課長補佐として勤務。旅行業、宿泊業、民泊など観光産業の法務を担当し、「民泊サービスのあり方に関する検討会」の事務局、「イベント民泊ガイドライン」、「OTAガイドライン」、「障害者差別解消法ガイドライン(旅行業パートのみ)」、「受注型BtoB約款」の企画・立案を担当。2010年3月東京大学法科大学院卒業、2011年12月弁護士登録。

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