中東系エアラインの新たな一手、エティハド航空と独ルフトハンザの連携から中東御三家の戦略を読み解く

秋本俊二のエアライン・レポート

ドイツのルフトハンザ・ドイツ航空は2017年2月1日、中東のエティハド航空と業務上のパートナーシップ契約を締結した。ルフトハンザのハブであるフランクフルトおよびミュンヘンと、エティハド航空の拠点であるアブダビを結ぶコードシェア便の販売がすでにスタート。今後は機内食や航空機整備などでも協力関係を深めていくという。

欧州随一のネットワークキャリアであるルフトハンザと、中東の雄エティハド航空が手を組む理由は何か? その背景を探っていくと、中東の“御三家”といわれるエミレーツ航空、カタール航空、エティハド航空のそれぞれの戦略が見えてくる。

中東御三家のさまざまな思惑

世界各地へのネットワーク構築を目的に国を超えたエアライン同士の提携や連合(アライアンス)が組織されるようになったのは1990年代後半だ。現在では世界の主要エアラインのほとんどが、3大アライアンスといわれる「スターアライアンス」「ワンワールド」「スカイチーム」のいずれかに加盟している。

そんななかで一環して独自路線を貫いてきたのが、中東御三家のなかのエミレーツ航空だった。

エミレーツ航空はアライアンス加盟にまったく興味を示さない。豊富な資金力をバックに、拠点であるUAE(アラブ首長国連邦)のドバイから世界の五大陸へ“自力”でネットワークを広げてきた。現在は約80カ国の140都市以上に就航。日本からも羽田・成田・関空からドバイ経由でヨーロッパやアフリカ、南米などへエミレーツ航空便で飛ぶことができる。

それに対して、アライアンスに加盟することで世界に翼を広げる道を選んだのがカタール航空だった。JALもメンバーに名を連ねるワンワールドにカタール航空が加わったのは2013年10月。同社はその後の3年間で急速に就航都市を増やし、現在はエミレーツ航空とほぼ同等のネットワークを実現している。

中東御三家のうちのエティハド航空は、設立が2003年とまだ若いこともあり、上記2社に比べてやや遅れをとってきた。ネットワークも世界110都市程度にとどまっている。海外エアラインへの積極的な投資などで路線網を拡大してきたなか、今回新たな一手に打って出たのが、ルフトハンザ航空との戦略的提携である。

機内食や整備でも協力関係構築

スイス インターナショナル エアラインズやオーストリア航空を傘下に置き欧州随一のネットワークキャリアとして君臨するルフトハンザにとっては、さらなるネットワーク拡大に向け、アブダビ経由でインド亜大陸全域へのアクセスを強化したいという狙いがあった。一方のエティハド航空も、今後はルフトハンザのハブであるフランクフルトからブラジルのリオデジャネイロ、コロンビアのボゴタなどへの大陸間直行便を「EY」で始まる自社便名で運航していくことになる。

ドイツから世界へ翼を広げる欧州随一のネットワークキャリア、ルフトハンザ 。

EAG(エティハド・アビエーション・グループ)のジェームズ・ホーガン社長兼CEOは会見の席で「民間航空産業のなかで最も確立され、認知されているブランドの一つであるルフトハンザとの連携は、出資を伴わないパートナーシップのなかで間違いなく最重要のものとなっていくだろう」と述べた。

ルフトハンザグループは「航空」に関わる事業だけに特化し、世界約270のエアラインに機内食を提供するケータリング会社「LSGスカイシェフ」や、航空各社が運航する航空機約1200機のMRO(メンテナンス、リペア、オーバーホール)を請け負う世界最大の民間航空エンジニアリングサービス会社「ルフトハンザテクニック」などを展開する。

エティハドは今回の提携で、機内で提供する食事などの面でもサービスの質を向上させ、また技術を長年蓄積してきたルフトハンザテクニックに自社機の整備を任せることで安全面でも多大なメリットを享受することになる。

ルフトハンザとの戦略的提携の道を選んだエティハド航空は、独立路線を貫くエミレーツ航空やワンワールド加盟のカタール航空を含む中東系エアラインの勢力図をどう塗り替えていくのか。今後に注目したい。

秋本俊二(Shunji Akimoto) 作家/航空ジャーナリスト

秋本俊二(Shunji Akimoto) 作家/航空ジャーナリスト

東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)や『ボーイング787まるごと解説』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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