世界の若年層旅行者に注目すべき6つのポイント、2020年には40兆円超の巨大市場に ―国連世界観光機関(UNWTO)

UNWTO(国連世界観光機関)は、世界青年学生教育旅行連盟(WYSE)と共同で行った若年層旅行者に関する調査レポート「パワー・オブ・ユース・トラベル」を発表した。

同レポートによると、若年層旅行者(15~29歳)は、世界の海外旅行人口10億人の約23%を占め、お金はないが旅行先に長く滞在するため、消費額は平均以上に高い。「ミレニアルズ」と呼ばれる1980年代から2000年代生まれの世代が中心で、地元の暮らしを求め、他者との交流に積極的。行動範囲が広く、都市部以外にも足を伸ばす状況が明らかになった。

今回の調査結果からは、若年層旅行マーケットの注目すべき特徴として、経済的な側面から6つのポイントが浮かび上がった。 概要は以下のとおりだ。

1. 第一の特徴は「経済インパクト」

最も大きな特徴は「経済的インパクト」だ。調査結果によれば、若年層旅行市場の規模は、2009年は1900億米ドル(約21兆円)だったが、2014年には2860億米ドルに(約31兆5000億円)増加。さらに2020年には4000億米ドル(約44兆円)、人数ベースで3700万人に達すると推計している。市場規模の推移は以下のとおり。

UNWTO:発表資料より

また、若年層の旅行は滞在期間が非常に長いため、旅行一回当たりの消費額は平均2160米ドル(2014年調査、約23万8000円)。これは、海外旅行全体の平均額1097米ドル(2013年調査、約12万円)のほぼ2倍となる。また、資金面では、若年旅行者の4分の1弱が、親や友人などから援助を受けていることや、滞在中に仕事をして旅費を稼ぐという形態も、若年層を誘致したいデスティネーション側が留意すべきポイントだ。

2. 世の中の情勢にあまり影響を受けない

若年層市場は、景気悪化や政治的な事件、感染症の流行などに比較的、左右されにくい傾向にある。また、需要の減少幅が他市場と比べて小さく、回復も早い。例えば景気後退の局面では、就職難の中で悪戦苦闘するよりも、むしろ長期で海外を旅する好機ととらえ、異国でさまざまな経験を積もうと考える若者が多くなる兆候すらある。

3. 若年層は地域社会に直接、お金を落とす

若年層は訪問先の地元コミュニティとの関わりを重視するため、地域社会に直接、お金を落とす傾向が強い。そもそも滞在期間が長いので、旅行予算の60%以上を訪問先で消費する。2014年にWYSEが実施した調査では、「最も重視していること」として「現地の人との交流」が最多の55%、次いで「現地の日常生活を体験すること」(45%)だった。

実際、訪問先コミュニティにもたらす文化、社会、経済的なインパクトも顕著だ。例えばブラジルのアマゾン地域では、バックパッカー旅行者の増加により、現地での雇用機会が増加。木材切り出しの抑制など、環境面での効果もあった。

4. 

「目的志向の旅行」の傾向が顕著に

最近では、レジャー目的から、就労体験や勉強、ボランティア活動などへと、旅の目的がより明確になり、旅行を通じて自身の成長を図ろうとする傾向が顕著となっているのも特徴だ。

5. 海外からの留学生が、滞在国にもたらす経済効果も拡大

オーストラリアでは、海外留学生がもたらす「輸出額」は2014年実績で170億豪ドル(約1兆4300億円)に至る。同様に英国では175億ポンド(約2兆4150億円)。発展途上国の所得水準が上昇するのに伴い、英国への留学生は今後、さらに増加すると見込んでいる。

米国では、海外からの留学生とその同伴家族は886万52人。268億米ドル(約2兆9500億円)の経済効果と、34万人分の雇用を生み出している状況だ。

6.  「ワーキング・ホリデイ・メーカーズ」の存在感が拡大

オーストラリアやニュージーランドでは、労働力を提供する旅行者(ワーキング・ホリデイ・メーカーズ=WHM)の存在感も増している。オーストラリアの場合、2013年までの3年間でWHMビザの発行数は34%増の約24万9231件に拡大。この状況がもたらすメリットとデメリットについて、全国的な論争が巻き起こった経緯がある。最大の不安要因は雇用問題だったが、政府は対応策として、WHMの負担税率を引き上げ、結果として5億豪ドル(約420億円)以上の税収増を見込んでいる。また、オーストラリアの調査会社の試算によれば、WHMが生み出す雇用機会と、WHMが就く仕事の数を足し引きすると、新しく増える雇用機会の方が8000人分多い結果となる。

現在、この問題を研究している豪メルボルンのジェフ・ジャーヴィス博士によると、WHMの平均滞在日数は326日、1日当たりの出費額は90豪ドル(約7560円)。同博士は「経済効果は明らかに大きい上、友人・親戚訪問など副次的な旅行需要をもたらす効果や、海外市場に対するオーストラリア・ブランドのPR効果もある」と指摘している。

なお、WYSEはUNWTOの準会員として、若年層の旅行市場調査などを実施。同調査では、若年旅行者マーケットに取り組む各社のケーススタディや、「食」「語学留学」「若者向けデジタル・コミュニケーション」などテーマ別レポートも紹介している。

※1米ドルは110円、1豪ドルは84円、1ポンドは138円としてトラベルボイス編集部が算出。

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