米国では民泊で何が起こっているのか? エアビーによる不動産市場や住民生活への影響、研究グループが調査報告書を公開

Thanapol Mongta (c) stock.foto

カナダのマギル大学都市計画学部の研究グループが、民泊仲介「Airbnb(エアビーアンドビー、以下「エアビー」)」が米国ニューヨーク市で展開する民泊事業が、地域の不動産市場や住民の生活に及ぼしている影響を調査した。それを、過去3年間の利用状況などをもとにレポートしている。調査対象期間は2014年9月から2017年8月まで。ビッグデータ分析手法を用いて、民泊物件のロケーション、ホストの実態、住宅市場への影響、家賃高騰などジェントリフィケーション問題を探る試みだ。

手頃な価格で暮らすような滞在ができることが人気を呼び、広く支持を受けている民泊だが、一方で居住物件の不足、地域住民の生活の質低下、さらにニューヨークのように多民族が暮らす大都市では、人種間の格差を拡大しているとの指摘も出ている。

マギル大学の研究グループ報告書によると、ニューヨーク地区のエアビー宿泊売上は、違法性が疑われる登録物件によるものが全体の3分の2を占めている。自宅の一部ではなく、一軒家やマンションの居室を丸ごと貸し出す物件は登録物件全体の約半分を占めるが、その売上は4億9000万ドルで全体の75%。一軒家を丸ごと貸し出している物件の約9割(87%)が、ニューヨーク州法に違反していた。

同レポートでは、「昨年のニューヨークにおけるエアビー売上の66%(4億3500万ドル)、予約の45%が違法」と断じている。

またエアビー普及に伴い、地元住民向けの居住物件が減少していると指摘。ニューヨークの長期レンタル向けの賃貸物件市場では、供給数が推定7000~1万3500軒ほど縮小。これに対し、エアビーには120日以上のレンタル物件1万2200軒、240日以上では5600軒が登録され、頻繁に利用されている。

賃貸物件が減少した影響で、過去3年間にニューヨークの長期滞在向けの家賃相場は1.4%上昇(中央値で比較した場合)。今年の家賃相場は同380ドル値上がり、マンハッタンの一部エリアでは、700ドル以上の値上げとなるケースも出ている。

個人が自宅の一部を貸し出すのではなく、複数のエアビー物件を管理する「商業目的」のオペレーターは、ホスト全体の12%に過ぎないが、ニューヨーク市における売上の28%以上を獲得。また昨年は、売上のほぼ半分(48%)を、上位10%のホストが獲得。これに対し、下位80%のホストの売上は、全体の32%だった。

人種のるつぼであるニューヨークならではの問題が、ジェントリフィケーション。地域の経済や住民の構成が変化する都市再編現象だ。当初、ニューヨークのエアビー物件は、ミッドタウンやロウアー・マンハッタンに多かったが、目下、エアビー物件が急増しているのがハーレムなど、アフリカ系住民が圧倒的に多いエリア。

こうした地区で、実際に住んでいない白人オーナー所有のエアビー物件が増えた結果、家賃の高騰を招き、住民たちの暮らしを圧迫。また同じ地区の物件でも、オーナーが白人である場合の方が、非白人の場合より、圧倒的に売上が伸びるといった格差も広がっている。

同レポートによると、アフリカ系住民が多数を占める計72地区でエアビー物件を運営するオーナーは、白人が74%。これに対し、同地区に居住する白人の比率は14%。また、同地区で白人ホストが手にした売上は推定1億6000万ドル。これに対し、黒人ホストの売上は4800万ドルと、大きな差が出ている。

ニューヨークの場合、エアビー登録物件の増加に伴う家賃高騰や住環境問題の影響を受けやすい地区の居住者は、圧倒的にアフリカ系で80%。結果として、民泊の現状が、格差を広げていると問題提起している。

The High Cost of Short-Term Rentals in New York City

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