LCCピーチとバニラの統合を正式発表、ピーチを存続会社に、ANAら3社トップが明かした統合の背景とは?

ANAホールディングス(ANA HD)は22日、傘下のLCCピーチ・アビエーションとバニラ・エアの統合を発表した。2018年下期から統合に向けたプロセスを開始し、2019年度末を目途にピーチを基盤として統合。これにより、バニラ・エアのブランドは消滅することになる。統合後は、中距離国際路線への進出も進め、成長著しいアジアの需要を取り込むことで、2020年度には売上高1500億円、営業利益150億円規模を計画し、国内第3位の航空会社、アジアのリーディングLCCを目指す。

ANA HD社長の片野坂真哉氏は記者会見で、統合の背景について、「国内需要と訪日需要の取り込みを強化するために、LCC事業をスピード感を持って進めていくことがANAグループの将来にとって重要。統合によって、グループの収益最大化を目指す」と説明。統合のタイミングについては、「昨年2月にANA HDがピーチを子会社化した頃から、その思いが強くなった」と明かし、2社の好調な業績、訪日外国人市場の急成長、地方創生の気運の高まりを主な統合の理由に挙げた。

ピーチは2014年度に累積債務を一掃し、2017年度までに4期連続で黒字化を達成。一方、バニラは日台路線でのシェアを拡大させ、2016年度に単年度黒字化を達成し、今期も黒字化を見込んでいる。

ピーチ社長の井上慎一氏は、「東京オリンピック・パラリンピックを控え、外航LCCとの競争が激化しており、それに勝ち抜くためにはこのタイミングでの統合がベストと判断した」とコメント。成田空港を拠点とするバニラとの統合によって、首都圏からの路線拡大が強化されることを最大のメリットとして挙げた。また、統合によって、大阪の本社機能の一部を東京に移すことも検討していく考えも明らかにした。

同社が進めてきた独自戦略については、「バニラが加わることで、さらに社内の多様性が高まり、独自性に磨きがかかる」と強調。統合後の路線計画については、内際線合わせて50路線以上の規模を目指すとするが、「新規就航路線は、機材の稼働率、就航先との関係、顧客の利便性を総合的に勘案して決める」と述べるにとどめた。

バニラ社長の五島勝也氏は、統合の背景として本邦および外航LCCとの競争激化を挙げるとともに、「(勝ち抜くには)お互いのリソースを生かし、効率的な事業運営が必要になってくる。業績が上向きになっている今が統合のベストタイミングだと判断した」との認識を示した。

片野坂氏は、統合のシナジー効果について、「両社の路線網では3路線しか重複していない。現在のバニラの人材、施設などのリソースがそのままピーチに足されることになり、コスト効率だけでなく、将来の成長にもつながる」と説明。統合は、ピーチへのバニラの事業譲渡という形をとるが、具体的なプロセスや方法は今後検討していく。そのなかで、両社の企業文化は異なることから、「社員の統合に対する共感を作り上げることも大切になってくる」と付け加えた。

両社の統合により、機材は現在の35機から2020年度以降は50機以上になる見込み。中距離国際線への進出を計画していることから、「必要があればワイドボティ機の導入も検討していく」(井上氏)。

このほか、現在バニラはアジアのLCC8社で組織されるバリューアライアンスに加盟しているが、井上氏は「統合後は、どのようなパートナーシップがいいのか、細部を検討して考えていく」との方針を示した。

統合発表会見に臨んだピーチ井上氏、ANA HD片野坂氏、バニラ五島氏(左から)

ANA HD、ピーチの株式を買い増し、保有比率は77.9%に

また、ANA HDは同日、ピーチの株主である香港のファースト・イースタン・アビエーション・ホールディングス(FE)との間で、新たにピーチの株式10.9%を113億円で取得する契約を締結したと発表。これにより、ANA HDの株式保有比率は67.0%から77.9%になる。正式な株式譲渡は2018年4月の予定。

片野坂氏は、今回の譲渡と統合は別の話としたうえで、「FEからは統合について理解を得られている。株式譲渡契約も円満に行われた」と明かした。ANA HDは、昨年4月にピーチの株式比率を38.7%から67%に引き上げ、連結子会社化した。

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