2019年に旅行業界で起きる5つ大きな変化を予測してみた ー「アマゾン参入」から「昔ながらの広告手法への回帰」まで【外電】

デジタル化によって、最も大きな変革を遂げたグローバル産業こそ、我が旅行業だ。出張や観光など様々な予約や手配から、サプライヤーによるオペレーション効率化のテクノロジーまで、あらゆる業務が激変してきた。旅行は今や、イノベーションの最先端を行く業種と言えよう。

米・旅行関連ニュースメディア「フォーカスワイヤ」が、2019年を展望するにあたり、MMGYグローバル社の最高経営責任者クレイトン・リード氏に、旅行の未来、マーケティングや広告戦略のトレンド、グーグルやアマゾンの影響、モバイル端末のインパクト、パーソナライゼーション、音声テクノロジーについて意見を聞いた。

2019年には、どのような変化が起きるのだろうか。MMGYグローバルの担当チームでは、5つの大きな変化を予測している。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

1. 観光需要の鈍化と価格上昇がデジタル変革の試金石に

2017年末まで、旅行需要は四半期ベースでは20期連続の拡大という絶好調期にあった。しかしこの勢いは2017年がピークで、2018年は減速に転じている。2019年には、稼働客室当たり収益(RevPAR)の伸び率は、3.2%から2.6%に緩むと予測されている。航空会社の国内線旅客輸送量も、一カ月当たり7500万人を少し超えたところで停滞しており、気がかりな状況だ。

旅行需要の成長が鈍化する2019年は、これまで躍進してきたOTAや仲介業者が引き続きマーケットにおける優位な立場を維持できるかどうか、試金石となる一年になるだろう。もちろんマーケットの不振は、既存のビジネスを破壊するディスラプターにはむしろ好機となるが、昨今の状況は、サプライヤー側に有利だと我々は考えている。サプライヤーは、旅行の意思決定において、ファネルの下部から真ん中に位置する消費者に対しても、アプローチを強められるようになる。

航空会社、ホテル、レンタカー、アトラクション施設などが、データ分析から算出した特別料金を、レジャートラベラーに直接提示するようになるのか、注視したい。彼らは法人顧客向けに、コンカー(Concur)、ディーム(Deem)、トリップアクションズ(TripActions)といったコーポレートトラベルプラットフォームとの連携を強めており、直販売上アップを目指している。

その他の注目トレンドは以下の通り。

  • サプライヤー間の提携や統合がさらに進み、より効率的なデジタルマーケティングを、より低い流通コストで展開できるようになる。OTAや仲介業者にとっては厳しい状況だ。
  • 極限までコストカットを徹底した超格安航空会社(ULCC)として、例えばアリージェント航空、フロンティア航空、スピリット航空、ノルウェージャン航空などは、グーグル・フライトやメタサーチなどデジタル流通チャネルを活用し、価格の訴求力を前面に押し出した販売戦略をとる。旅行代理店への回帰の動きも要注目。
  • エコノミー志向と、ラグジュアリー志向の旅行がさらに二極化。コモディティ商品を最低価格で提供するサプライヤーと、すべてカスタマイズした旅を超高額で提供するサプライヤーに二分化する動きが加速する。
  • 宿泊や配車サービスのシェアリング需要は、しばし横ばいとなる。在庫の伸び悩みや関係当局による規制が、伸び悩みの要因だ。

2. アマゾンによる大掛かりな旅行参入

アリババは中国で、国内向け旅行プラットフォーム「フリギー(Fliggy)」を構築し、市場の囲い込みを進めてきた。プログラマティックマーケティングを展開し、自社独自の決済システムやパッケージングエンジンも開発した。アマゾンも似たような状況にあり、旅行マーケットのパイを、一気に大きく切り取ってしまうことが可能だ。

この図で、他の業種におけるアマゾン参入後のシェア推移を見れば分かる通り、ジェフ・ベゾス氏の手にかかると、データから大切な上顧客、低コストの流通チャネルまで、あっという間に業界図が塗り替えられてしまう。アリババは最近、ロボットやAI、顔認証などの技術を使って運営する未来型ホテル「フライズー・ホテル(Flyzoo Hotel)」を中国・杭州でオープンしたが、アマゾンによるホテルも十分ありえるだろう。

現在、デジタル広告費の4%以上をアマゾンが占めており、この数字はさらに急拡大している。しかもアマゾンの広告コンバージョン率をグーグル広告と比べると、効果は二倍も大きい。おそらくグーグル・ホテル・アドが攻撃的になっている背景には、こうした要因もある。グーグルが目指しているのは、旅行の手配や管理に付随する様々な便利ツールを含む、予約機能の提供だと想像できる。

アマゾンがデジタル旅行の勢力図を塗り替えるとしたら、他にどんなことが起きるだろうか?

  • エクスペディアなど、OTAを買収する可能性がある。
  • 追い詰められたグーグルが、予約サービスに本腰を入れるようなる。
  • ペイド・サーチやメタサーチ強化が必要になる一方、OTAの影は薄くなる。
  • (販売時の成約率アップよりも)ネットの入り口のできるだけ早い段階から顧客を囲い込もうとするアプローチが、仲介業者の間で加速。ブランドマーケティングへの投資拡大につながる。
  • AI主導で、バーチャルな場での旅行キュレーションが可能な時代へ。旅行者は、より自分に合った提案内容の中から、手軽に必要なものを選んで購入できるようになる。

3. データ、GDPR、さらなるパーソナライゼーションの追求

2018年は、フェイスブックを始め、オンライン各社によるデータ収集に批判的な見方が高まり、データ・プライバシー問題が話題となった。続く2019年は、プラットフォーム各社が消費者からデータを受け取りシェアすることの対価として、果たしてどのような価値を提供しているのか、明白にすることが求められている。マーケターであれば、消費者の許可を得た上で、位置情報や購買行動、リアルタイムでの意思決定の動きなど、一次情報を集めることが最も重要になるが、旅行業界にとっては、旅行のキュレーションが担当領域になる。

重視しておくべき今後のトレンドは、以下のとおりだ。

  • アプリやウェブサイトの利用に際し、ユーザーが自分のデータを収集・シェアを嫌い、利用を撤回したという事例は全く見当たらない。もっともアプリのダウンロード時に、データ共有の許可をデフォルト設定しているケースは全体の80%に達する。
  • 広告テクノロジーの進歩によりデータの可視化が進み、本当に価値あるプログラマティック・ネットワークがどれなのか明確になっていく。広告プラットフォームにおける不要な中間業者は切り捨てられ、実データに直接接続できる業者への関心が高まる。
  • AI技術の進歩によって、長期的には、広告テクノロジーの変化はますます激化。
  • クリック型広告における無駄なルートが消滅し、コスト削減につながる。より精度の高いターゲティング広告が可能になり、ROI(投資対効果)は高まる。
  • フェイスブックとリンクトインが、旅行のターゲティング広告における主要な出稿先として、引き続き君臨するだろう。ファネルの入り口と出口のどちらを狙う場合でも有効だ。
  • 企業各社は、支払い代わりに個人データを受け取るようになる。例えば、機内で無料Wi-Fiサービスを利用する対価として、詳細なプロフィールや、個人を特定可能な情報を提供するなど。

4. 昔ながらの広告チャネルへの回帰も

最近、当社のクライアント企業の間では、デジタル関連予算を屋外広告(ビルや駅など)やテレビ・ラジオ放送、PR活動やイベント、あるいは印刷物やダイレクトメールでの広報活動に移す動きが出ている。検索エンジンやデジタル・ユニットへの投資が拡大するなか、競争が激化してコストは上昇、ROIは下落しているからだ。希望していた出稿スペースの獲得も大変になっている。こうした傾向は特にモバイルで顕著だ。

ブッキング・ホールディングスやエクスペディアでさえ、旧来型メディアに投じる予算を増やしているが、その理由は、利幅が以前より厳しくなっているためだ。MMGYの欧州のクライアント各社の場合、デジタル広告は増えているものの、取引先ビジネスおよび消費者向けマーケティング予算の半分強ほどだ。

数字を使って説明してみよう。

  • 2019年の広告費は、全国放送のラジオ(6.5%増)およびテレビ(2%増)が拡大すると予想している。OTT(Over The Top=ネット上で動画などコンテンツを提供する企業)を含むテレビ・ラジオ合計では10%増の見込み。
  • あらゆる消費財で、デジタル経由でのビジネスは引き続き拡大する。その一方で、MMGYの調査結果によると、印刷媒体、テレビ、屋外広告が、旅行者の気持ちを動かし、「予約しようと思わせる」効果が高いと評価されている。
  • 同調査では、旅行者の64%が、旅行関連サービスの購買を決める際、企業ブランドを重要視していると回答した。ブランドイメージは、マーケティングミックスにおいて、欠かせない要素と言える。
  • とはいえ、ケーブルテレビ離れが進み、OTTが提供するニッチなコンテンツが盛り上がるなか、旧来型のネットワーク局やコンテンツ・ハブには受難の時代が続く。限られた特定層をターゲットにしたチャネルには追い風が吹く。

5. モバイル、ボイス、AI時代の先に姿を現すのは?

今や消費者は、一日に200回以上もモバイル端末をチェックし、モバイルでブラウザしている時間は一週間に20時間におよぶ。もはやマーケット状況は、大量消費の段階にある。

それよりも注目すべき最近の動きは、米国では世帯の12%ですでに設置済みともいわれる、ウェブ利用や相互接続が可能な新たなデバイスの急速な普及。スマートスピーカーはその一例で、2020年までに、さまざまな検索の50%がボイス(音声)になるとの予測もある。つまり、人々が使用するデバイスは、この先、さらに大きく変わり続けるということだ。

音声でのやりとりで実際に購入まで至るケースは、まだ1%に過ぎないのが現状だ。しかしスマートスピーカーが7600万世帯で普及するといわれる2020年、IoTとボイス端末の連携は、間違いなく緊密になっている。

そういう時代になれば、ボイスを活用したショッピングや予約が増えていくのは想像に難くない。カーニバル、マリオット、ルフトハンザなどの企業は、目下、AIベースのカスタマーサービスプログラム開発に多額を投じて、あらゆる要求に対応できる洗練された顧客対応の構築を目指している。

  • KLMのスマートアシスタンス「BB」は、旅行プランニングから予約まで、すでに何百万件もの顧客とのやりとりをこなしている。
  • ボットが制御するオンライン取引が進化するのに伴い、インフルエンサーの活用などを含むソーシャルメディアでのクチコミ効果は寂れていくだろう。2019年は、インフルエンサーの影響力や価値についての透明性(可視化やコンバージョン指標など)、コンテンツの信ぴょう性を高める動きが加速する。
  • 空港でのアクセスやセキュリティ、搭乗時の顔認証が一般化するのは時間の問題だ。2019年には、広範囲な試験運用が始まり、空港での遅延対策に効果を発揮する。

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の活用は、旅行の分野ではまだあまり進んでいるとは言えないが、スタティスタ(Statista)では、今後4年以内に、同産業規模は2070億ドルに達すると予測している。また「ビジネスインサイダー」の報道によると、最近ではマーケターの51%が、AIを使って、自動化やワークフローに関する消費者の細かい嗜好を拾い集めている。

もっと長期的な視点から今後の変革を見据えるなら、AIの進化により、今までのデータ収集すら、やがて不要になる。こうした作業を一気に飛び越えて、人間の五感、例えば視覚や聴覚などを使って、顧客とやりとりできる時代が到来するという。同じような考え方は、他のところでも散見される。

  • サムソンなどのリテーラーは、低価格のヘッドセット売り込みに力を入れている。成功すれば、VRテクノロジーの新しい顧客開拓につながる。
  • ベストウェスタン、ベルリン観光局、アラスカ航空などのサプライヤーは、顧客向けの新しいサービスにこうした技術を取り入れている。
  • 「ハーバード・ビジネス・レビュー」の2018年6月号記事によると、ブランド力よりも、信頼できるボット・アシスタンスに軍配が上がるようになる
  • 中国のバーチャル・アシスタント「シャオアイス(Xiaoice)」のユーザーは、すでに4000万人。

まとめ ―旅行分野はイノベーションを追うのではなく「リードする」存在に

デジタル・トラベルのエコシステムにおいて、ユーザーエクスペリエンスやデータ収集の改良が進み、予約・購買に関するキュレーションや旅行体験そのものが、どんどん変化している。今や旅行産業は、興味深い実験が進行しているシャーレのような存在であり、世界中のあらゆる業種が注目している。ウーバー、エアビーアンドビー、シートリップなど、多くの新興企業は、これまでにない新しい業態を生み出したグローバル・イノベーターとして認知されている。さらに旅行産業全体も、面白くて、役に立ちそうな事例が多く、他の産業界も、ここから学ぼうとしている。

これから10年先を見据えたとき、解決しなければならない問題はまだ山積みだ。仲介業者の在り方、データ・プライバシー、ベスト・プラクティスの模索など課題は多い。だがここ数年がそうであったように、2019年もまた、数々のサプライズ、見事なアイデア、電光石火の展開にあふれた一年になるだろう。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:A review of 2018, a preview for what's next: Travel marketing


著者:ミトラ・ソレルス(Mitra Sorrells)

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