変わるホテル予約の検索トレンドで「メタサーチ」の次にやってくるものは? 旅行検索・予約の新たな局面を考える【外電コラム】

ホテルのオンライン予約取扱高は、ここ数年間で飛躍的に伸びた。各種統計を集めたポータルサイト「スタティスタ(Statista)」によると、ウェブサイト経由のホテル予約は、2017年の市場規模が米国だけで420億ドルを突破。だが、Google(グーグル)やBing(ビング)など有名な検索エンジンでは、トラベル関連の一般的なキーワードを使った検索件数が着実に減少している。例えば「パリのホテル」の検索件数について、グーグル・トレンドのグラフで過去10年の傾向を見ると、以下のようになる。

「hotel in paris」の検索結果の推移:グーグルトレンドより

では「トリバゴ」で検索した結果はどうだろう。グラフで比較すると、「トリバゴ」(赤いライン)は「パリのホテル」(青いライン)の動向とは逆に、検索件数が急増している様子が分かる。

「hotel in paris」と「trivago」を使ったの検索結果の比較:グーグルトレンドより

驚いただろうか? もちろん、パリのホテルを予約することに対する関心が低くなったせいではない。他の都市名を挙げても、ほぼ大差ない傾向が浮かび上がる。要は、オンライン予約のスタート地点が、従来の検索エンジンから、特定の専門分野に絞って掘り下げていくバーティカル(垂直型の)サーチエンジン、いわゆるメタサーチへと移動しているのだ。

ホテル予約時の検索行動の変遷

2~3年前を振り返ると、当時、オンラインでのホテル予約は、かなりのストレスを伴う作業だった。行き先の都市を決めたら、ホテルチェーンのブランド各社のサイトをブラウズしてまわり、価格やロケーションを確認し、いくつものコンタクトフォームに記入させられる。挙句の果てに、お目当てのホテルはすでに満室――。こんなやり取りに、時には何日も費やしたものだが、今は違う。トリップアドバイザーでフィルターにかければ、結果がすぐ手に入り、イライラする場面も減った。

便利なアグリゲーターがまだ存在しなかった2008年頃、ユーザーはなるべく一般的なキーワードで検索をかけることで、広く情報を収集するしかなかった。これが、10年前に「パリのホテル」についての検索数がピークを迎えた理由であり、現在では4分の1に減っている理由でもある。

メタサーチ台頭の原因は「コンテンツの多様化」

ご存じの通り、メタサーチエンジンとは、本質的にはコンテンツを集める「アグリゲーター」に過ぎない。あらゆるウェブサイトのコンテンツをインデックス化するのではなく、特定のトピックに関連したページだけにフォーカスし、検索結果を取り出してみせるのがメタサーチだ。トラベル関連に限らず、メタサーチが成功している背景には、ウェブのコンテンツがあまりにも複雑化し、画像、動画、ニュースなど多様化するなかで、以前のようにハイパーリンクを整理して見せるだけでは用が足りなくなってきたという現状がある。

QMee調べによると、これを書いている今現在、世界中にあるウェブサイトの数はなんと10億ページ以上。さらに1分毎に500ページずつ増えているという。特に旅行のように、幅広い分野に関わる業種では、探している情報を見つけるのに、メタサーチエンジンが重宝する。

メタサーチエンジンの祖は90年代に登場

旅行関連のメタサーチが広く利用されるようになったのはここ10年ほどだが、そのルーツは、すでに90年代に登場している。当時、サーチエンジンの検索結果が断片的になってしまう状況をなんとか改善しようと活躍したのが、専門分野に特化したアグリゲーター各社で、例えばMetaCrawler、BigSearcher、lxquck、Vivissimoなど。検索エンジンのアルゴリズムが進化するのに伴い、こうした比較ツールは不要になったが、今でもメタサーチエンジンが特に重要な役割を果たすのは、情報が細かく多岐に渡っている分野。ホテルの料金や客室在庫の流通などが好例だ。

SEOは役目を終えたのか?

ニューヨークタイムズ紙の調査によると、最終的に購買まで至ったオンライン検索のうち、グーグルなど有名検索エンジンを起点としているケースは、全体の15%以下。ホテル検索においても、「ホテル+都市名」「ベストホテル+都市名」など、セカンダリキーワード(and検索にて、メインとなるワードに続いて入力されるサブワード)を使った検索結果で最上位の表示を勝ち取ることに、以前ほどの価値はなくなった。

いや、いまや「ほとんど役に立たない」とも言える。

宿泊客の大半が専門分野に絞ったバーティカル検索エンジン(あるいはOTAやアプリ)でホテルを探すからだ。セカンダリキーワードの扱いに配慮したSEO対策は、ブランド認知度の向上という観点からは、もはや不要となりつつある。「SEOは死んだ」というのはさすがに極端な言い方だが、少なくとも宿泊産業において、当てはまる部分はありそうだ。

大手が進める合併戦略

アグリゲーター各社によるユーザーエクスペリエンス向上が進んだ結果、予想されていた通り、ホスピタリティー業界大手による買収合戦が激化。将来性があるプラットフォームを自らの陣地に組み込もうとする動きが活発だ。ブッキング・ホールディングス(旧プライスライン・グループ)は2013年にカヤックを、2017年に旅行比較のモモンド・グループを買収。スカイスキャナーはシートリップ傘下へ(プライスラインはシートリップの株主でもあった)。エクスペディア・グループは、トリバゴの最大株主だ。

シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、ブッキング・ドットコム利用のトラフィックのうち、メタサーチから誘導されてきた比率は10%超だが、以前はもっと多かった。しかし、プライスライン・グループ(かつてはトリバゴの売上の40%以上を占めていた)がメタサーチ広告への投資を大幅に減らすようになり、縮小した。エクスペディアにおける比率もほぼ同じとなっている。

ハイブリッドなメタサーチエンジン

メタサーチへの出稿削減は意外かもしれないが、メタサーチエンジンとOTAの境界線が曖昧になりつつある昨今の状況を考えれば、お互いへの広告出稿はやり過ぎであり、ブランドの希薄化を招きかねない。

トリップアドバイザーの最高経営責任者、ステファン・カウファー氏は、「OTAになるつもりはない、メタサーチのビジネスモデルで充分満足している」と繰り返し主張しているが、それぞれをどう定義するかの問題だ。

事実、最新のメタサーチ戦略にはグレーゾーンがいくつかある。OTA各社がメタサーチ各社に広告を出し、メタサーチ各社が互いに広告を出しあうなど、クリック課金型(PPC)広告によるいたちごっこの様相だ。こうした曖昧さが、やがて遠くない将来、メタサーチを取り巻くエコシステム全体に影響し、OTAは予約エンジンを提供するだけの存在に陥る可能性もある。ユーザーがアグリゲーターでホテルを選んだ後、OTAサイトへ移動し、クレジットカード決済だけをおこなうという流れだ。

OTAがオンライン流通の覇者となって10年以上経つが、こうした近未来を危惧した大手OTAが(少なくとも部分的に)自らの役割を再構築しようと動くのもうなずける。今後も必要とされる存在であり続けるためには、プロダクトの多様化と拡充が必要だ。

「ブッキング・スイート(BookingSuite)」の「レート・インテリジェンス(RateIntelligence)」機能から「エクスペディア・トラベル・アド(Expedia Travel Ads)」まで、昨今、大手OTA各社が提供している様々なB2Bツールを見れば分かるだろう。かつてメタサーチ各社は、第三者のデータを集めてくるだけだったが、最近では、検索結果が表示されたページ内で、予約まで完了できるオプションも提供している。OTAにとってはゆゆしき事態だ。

より進化した検索の実現を目指して

グーグルUKのトラベル部門責任者、テリ・スクリブン氏によると、昨今の平均的な消費者は、何かを購入する際に平均30回以上検索をおこない、最多で合計10種類ものウェブサイトをチェックするという。情報内容から価格まで、流通チャネルによって様々な格差や相違点がある状況を考えると、これは非常に複雑かつ難解な作業だ。グーグルが目指しているのは、このやっかいな行程を改良すること。野心的ではあるが、不可能でもない。

グーグルの登場によって、人々の生活習慣は、オンライン上かどうかに限らず、根底から大きく変わった。コロンビア大学の研究によると、例えば「ググる」という行動は、人間の記憶方法にまで影響を及ぼしているという。情報を蓄積、あるいは一部を喪失するといった脳の働きが大きく変化しており、最近では、オンライン上ですぐ手に入る情報は、忘れやすい傾向にあるようだ。

人間の脳は、どんどん順応するようにできている。グーグルのことを、単なる検索エンジンと思っているなら、とんでもない過小評価だ。

メタサーチエンジンの終着点

グーグルは、あらゆる予約プロセスを一気に簡略化できる唯一のプレイヤーだ。ユーザーは検索結果ページで、最初から終わりまでの手順を完結できるようになるかもしれない。同社は数年を費やし、「マイビジネス(MyBusiness)」リストの表示も、劇的に改良してみせた。より精度の高いコンテンツ、写真、レビュー、価格、在庫、Q&A、おすすめ情報などが加わり、OTAのちょっとしたホテル情報ページ並みの内容になった。

もはや専門分野に絞ったバーティカル検索の時代すら、終わりつつあり、これからの注目株は「ポスト・バーティカル検索」、「ポスト・メタサーチ」(以上は造語)だ。

例えばグーグルは、検索結果の表示に始まり、関連コンテンツや在庫情報の提供、そして購買確定のやり取りまで、自社で扱うようになるかもしれない。少なくとも米国では、すでに利用者は電子ウォレットを使い、グーグルでの予約決済が可能だ。ユーザーを広告主の予約エンジンへと誘導するかわりに、「グーグルで買う(Buy With Google)」ボタンを表示。ユーザーがこれを選択すると、グーグルが設定したホテルブランドのページに移動する仕組みだ。支払い手続きが簡単になり、手軽に宿泊予約ができる。ストレスがなく、ユーザーも満足だ。

ただし、そこには巨大企業によるマーケット独占という深刻なリスクが潜む。

これから先にあるものは?

グーグルがオーガニック検索の結果をそのまま10件表示していたのは、もはや遠い昔だ。今では検索結果ページに各種マルチメディアが表示されるのが標準的となっている。例えば「おもしろい猫」と検索すると、表示されるリンクは3~4件足らずだが、動画や画像は何十件も出てくる。

複数の調査によると、昨年、グーグルがユニバーサル検索(検索結果画面に、動画などウェブページ以外のコンテンツも表示する機能)で対応した割合は、同社が処理した検索全体の80%以上(内容は主にユーチューブ動画、画像、ニュース)だった。

検索結果ページであらゆる「アクション」を表示できるようになったことは、ホスピタリティー業界にとって衝撃的な一歩といえる。OTAやブランド各社、メタサーチのウェブサイトが素通りされてしまうからだ。ちなみに、グーグルにとって「トラベル関連」が業種別売上で第三位に君臨していることも要チェックだ。金融サービスと小売業に次ぐ規模であり、かなり関心が高い分野だと言える。

旅行業の厳しい競争にもまれるうちに、検索エンジン、OTA、メタサーチ各社の事業領域は次第に重なり、ゆっくりと均質化が進んでいる。理由は明快で、ダーウィンの進化論とほぼ共通。すなわち、エンドユーザーにとって、最も効率的かつスケーラビリティに優れた事業モデルが生き残り、繁栄する。

かつてラリー・ペイジ氏は「完璧な検索エンジン」とは、「相手の意図を正確に理解し、探していた通りの内容を提示できるもの」だと語っていた。今、グーグルが我々の前に並べてみせる検索結果を見ると、実現までの道のりは、そう遠くなさそうだ。

※編集部注:この記事は、世界的な観光産業ニュースメディア「トヌーズ(tnooz)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:It’s the end of search as we know it (and I feel fine)

著者:シモーネ・プルエト氏

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