オーバーツーリズムに解決策はあるのか? 外国の現状と対策事例から専門家が考えた【外電】

観光客の増えすぎ問題「オーバーツーリズム」は、人気の観光地にとって大きな問題になりつつある。最近では国連と欧州連合(EU)の両方が、旅行者の混雑を減らすためのガイドラインを公表したほどだ。

国際航空運賃の低価格化、クルーズ市場の成長、そしてAirbnb(エアビーアンドビー)など安価な宿泊施設の選択肢の台頭が、オーバーツーリズム現象に拍車をかけている。この現象は世界各地で起こっているが、特に欧州はその影響が大きいとされる。バルセロナ、アムステルダム、ヴェニスなどの都市では、大量に流入する訪問者への対処に悪戦苦闘している。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

この状況はこれからも悪化しそうだ。英国旅行業協会(ABTA:Association of British Travel Agents)のデスティネーション・サステナビリティ担当シニアマネージャーのクレア・ジェンキンソン氏によれば、海外旅行客の数は2030年までに18億人以上に拡大すると予測される。2010年以降、年間3%以上の増加ペースだ。

「適切に管理しなければ、旅行先のインフラやコミュニティー、環境に負担をかける可能性がある」と、ジェンキンソン氏。「観光旅行がコミュニティーに与える影響について、旅行会社は徐々に認知し始めている」。

旅行アドバイザーの反応

当然のことだが、オーバーツーリズムは旅行アドバイザーやその顧客にとって、急速に大きな問題となっている。

「混雑は日常よくあることで、時には避けられない。だから私たちは、時にはオーバーツーリズムを(旅行体験の)不可欠なものとして受け入れる必要がある」と語るのは、豪メルボルンの専門旅行代理店FBI Travelのマーク・チャキエル最高責任者だ。

FBI Travelではヴェニスやバルセロナの状況と併せて、オーストラリア人観光客に昔から人気のあるバリの混雑についても、耳にする機会が徐々に増えている。アフリカ、ガラパゴス、アイスランドなど遠方の観光地に加え、探検クルーズにとっても、オーバーツーリズムが問題になりつつあるとチャキエル氏は指摘する。

旅行アドバイザーは、顧客の期待をうまく管理する重要な役割を担っている。時には特定の場所に行かないように話すことも必要と、チャキエル氏は付け加える。そうでない時は、代わりの行き先を助言することが重要だ。特にアクティビティ関連や、自然・食物・文化に関係する旅行など、異なる価値の提案が必要とされる。

ロサンゼルスに拠点を置くTravelStore(トラベルストア)社でレジャー担当上級副社長を務めるダン・イルベス氏も、オーバーツーリズムは旅行計画の立案中に対処するべきと考えている。

「顧客より先回りして対応しないと、彼らの望むことにただ従うだけの状況にすぐ陥ってしまう。顧客が計画作成時に私たちの提案を考慮できるように、常に先手を取って説明している」と、イルベス氏は語っている。

TravelStoreの旅行アドバイザーたちは、ショルダーシーズン(通常期と繁忙期の間にある時期)の旅行や、「観光客の少ない地域」への旅行、または「混雑した場所に行こうとしている人たちの旅行プランに混雑していない場所を組み入れてバランスを取ったり、ピークタイムを避けたりする」ことを勧める。

しかしイルベス氏は、特定の観光地での混雑と、過密状態の目的地を混同しないことが重要とも指摘する。

「例えば、ヴァチカンは常に満員で、バルセロナのサグラダ・ファミリアは混雑しており、ヴェニスはシーズン時に人でいっぱいになる。アイスランドはホテル不足に苦しんでおり、(シーズン時は)あまりに多くの旅行者が島に殺到する。日本も目が回るほど忙しなくなる場合がある」と、イルベス氏。「しかし、それでも旅行者たちはローマやバルセロナに行くだろうし、アイスランドや日本に行きたがるだろう」。

認知の向上

英国に拠点を置くオンライン旅行代理店(OTA)Responsible Travel(レスポンシブル・トラベル)社にとって、オーバーツーリズムは中心的な課題だ。同社は「物議を醸している重要な問題の認知向上」に注力している。そのウェブサイト上では旅行業界のオーバーツーリズムを真っ向から非難し、「まだその影響をほとんど、あるいは全く気にかけていない」地域への拡大に懸念を示す。

Responsible Travelのジャスティン・フランシスCEOによれば、「オーバーツーリズムは、現在混雑している欧州の主要都市を超え、さらに広がり続ける問題」だ。

「責任を持って観光事業を設計・運営しなければ、非常に狭くてあまり知られていない場所でさえオーバーツーリズムの影響をすぐに受けるだろう」と、フランシス氏。「例えば、限られた駐車スペースとたった1件の良いレストランがあるだけの小さなコミュニティーは、1台の大型バスが来ただけで限度を超える可能性がある」。

同氏によれば、この脅威に対抗するため、Responsible Travelは自社ウェブサイトに規模の大きなクルーズを掲載しないようにしている。なぜなら「経済的利益が非常に小さいのに、与える影響が大き過ぎるからだ。また、同じ理由からマスツーリズムも売らない」。

解決策はあるのか

EUが発表した最新の研究報告では、DMOと地方自治体がオーバーツーリズムの悪影響を緩和することを推奨している。その方法は、旅行者の訪問範囲の拡大、インフラ・宿泊施設・設備の収容能力の向上、および訪問者の不適切な行動の絞り込みだ。

英国旅行業協会のジェンキンソン氏も同じような見解を持つ。

「政府機関、旅行会社、NGO(非政府組織)、および現地コミュニティーが共通の戦略の上で協力し、観光地を管理する必要がある。その戦略は、ピークシーズン以外の訪問の奨励、長期滞在の促進、最も人気のある場所以外への観光客の分散、何でも良い」と、同氏は指摘する。

さらにResponsible Travelのフランシス氏は、現地の専門家から知識を仕入れることで「見慣れた場所を観光するための、これまでにない方法を見つけることも効果的」を推奨する。旅行者にとってより良い体験となる可能性のあるオフシーズン旅行も奨励する。

「欧州南部の冬と秋の日光は魅力的だ。世界的な温暖化で平均気温が上昇する中、暑い夏よりも旅行しやすい」との見解もある。

TravelStoreのイルベス氏は、旅行業界はオーバーツーリズムを緩和するために、すでにいくつかの手段を講じていると考察。「GlobusやTrafalgarのようなツアーオペレーターでさえも、より多くの穴場を訪問する新たな旅行プランを作り出している。彼らは人気のデスティネーションのみに注力しているわけはない」と、分析する。

「クルーズ商品はさまざまな種類の寄港地観光体験を提案しており、数も増やしている。そのため、流入する旅行者の”群れ”が分散され、大勢が同じ場所に行き、同じ行動をすることがなくなる」。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:Overtourism Has Travel Advisors Telling Their Customers to Please Go Somewhere Else


著者:スキフト アラン・レイボヴィッツ(Allan Leibowitz)氏

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