ナビタイム大西社長が語った「MaaSの未来」、そのメリットはオーバーツーリズム対策にも

今、注目を集めているMaaS (Mobility as a Service)。経済産業省と国土交通省が今年4月からモビリティサービスの社会実装に挑戦する地域を支援するプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開始するなど、国もMaaSの取り組みを本格化させている。先日開催されたKDDI 5G SUMMIT 2019では、MaaSを積極的に推進するナビタイムジャパンの大西啓介社長が、5Gサービスの展開で拡大するMaaSの世界について講演。地域課題の解決とともに観光分野での活用について、そのビジョンを語った。

所有から「必要な時に賢く利用する時代」へ

MaaSが世界で初めて社会実装されたのはヘルシンキ。「MaaS Global」というベンチャー企業がモビリティオペレーターアプリ「Whim (ウィム)」を開発したことに始まると言われている。Whimは2016年に実証実験を行った後に正式にサービスの提供を開始。公共交通、タクシー、レンタカー、シティバイク、カーシェアリングなどヘルシンキ市内のあらゆる交通手段を網羅し、月額料金を払えば対象の交通機関が乗り放題。予約から決済までを一括して管理する。

現在、フィンランドのほかにベルギーやイギリスにもサービスを拡大。2019年には日本に進出するのではないかと言われている。

大西氏は、Whimに代表されるMaaSが可能になる条件として、「情報通信技術の発達による資産共有の効率化」という技術的側面と「所有中心の購買価値観の変化」という社会的背景を挙げる。そのうえで、日本の社会的変化について言及。パーク24のカーシェア事業の売上の伸びとトヨタ自動車の国内販売台数の推移を比較したうえで、「日本でも『所有する時代』から『必要な時に賢く利用する時代』になっている」との見解を示した。あるコンサルティング会社の調査によると、2030年にはカーシェアなどのサービス関連による売上高が自動車の販売額を上回ると試算されている。

MaaSのもたらすメリットとは、オーバーツーリズム対策にも

MaaSの普及は社会にどのようなメリットを生み出すのか。

大西氏はまず「地方での交通手段の維持」を挙げた。地方では人口減少による過疎化によって公共交通機関の維持が難しくなっているが、MaaSはバスのオンディマンド化などを可能にする。また、「公共交通機関の収入増加も見込める」と説明。ヘルシンキではWhimの導入によりマイカーの利用が減った一方、公共交通の利用者が増加したという。

また、検索、予約、乗車、決済がワンストップ化されることで、ユーザーエクスペリエンスが向上。生活者だけでなく旅行者、特に複雑な交通網に慣れていないインバウンドにとって利便性がアップする。また、大西氏は、カーシェアなどの普及によって自家用車に係る費用が軽減されることから、「MaaSは可処分所得の増加にもつながる」とした。

このほか、観光分野におけるMaaSの活用については、「将来の少子高齢化社会ではインバウンドによる経済成長が基本路線」としたうえで、「訪日旅行者を公共バスからシェアバイクなどに誘導することも可能」といる考えを示した。近年各所で顕在化しているオーバーツーリズムの対策にもつながる。

MaaSに向けたナビタイムの取り組みとは

一般的にMaaSは0〜4レベルの5階層に分かれる。

0は単独のサービス、1は情報の統合、2は予約・決済の統合、3はサービス提供の統合、そして4は官民共同による政策の統合だ。ナビタイムはこれまで電車、バス、自動車など移動手段別に最適化したアプリを開発提供。それを情報の統合に進化させ、「徒歩」+「電車」+「タクシー」など複数の移動手段で最適経路を検索する技術を開発した。また、経路検索から航空券予約や決済を実装した。

さらに、社会全体の目標として、首都圏の鉄道混雑緩和に向けた取り組みも強化。独自技術で各駅、各ルートの混雑度を可視化したほか、鉄道会社とデータ連携し、車両単位の混雑度の表示も可能にしている。同様な技術は道路渋滞の緩和でも活用。渋滞回避でナビタイムマイレージを付与するインセンティブを付けたところ、マイレージ利用者の渋滞走行比率が10%減少したという。

MaaS実装の5段階(プレゼンテーションより)

5G活用でモビリティサービスのパッケージ化を

5Gの登場によって、こうしたサービスの根幹となるデータの精度がさらに増すことになる。

大西氏は、例として、「バス車内のライブカメラ映像やドライブレコーダーの動画などを集約し、リアルタイムの混雑状況を分析することが可能になる」と紹介。また、交通事業者間の接続の最適化や、信号情報、人や車の位置情報の集約でこれまでにないスムーズな移動が可能になるとした。

ナビタイムは、5Gなどのテクノロジーの進化に合わせて、経路検索エンジンや交通・観光ビッグデータを組み込みながら、社会全体でのMaaS連携を支援していく。大西氏は、ナビタイムの将来的ビジョンとして、住居が拠点となる「点」、沿線に基づく「線」、そして都市全体の交通がつながる「面」でのMaaS実装を目指すと表明。「利用者中心主義のもと、モビリティサーピスをパッケージ化し、生活者と旅行者がモビリティとコストをシェアできる仕組みを設計していく」と意気込んだ。

ナビタイム大西社長「MaaSで生活者と旅行者の生活の向上を目指していく」

取材・文 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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