10年後のツアー&アクティビティ産業はどうなる? 10の予測にまとめた【外電】

旅行テクノロジー関係者に、翌年の予想を聞いても、あまりはっきりとは答えてくれない。なぜなら、一年後に向けた新商品はすでに開発途上にあり、うかつに企業秘密を漏らすわけにはいかないからだ。

こうしたビジネス上の配慮なしで、自由に未来について語ってもらいたいならば、もっと先の将来を予想してもらうのがよい。ただ、そうなると今度は、現状とかけ離れ過ぎて参考にならなかったり、予想が外れたりする可能性も大きくなる。

これを理解いただいた上で、以下に列挙した「10年後の観光、ツアー、アクティビティ」に関する私の予想を読んでほしい。(本当は、新年早々にこの予測を書き上げる予定で、その方がタイミング的にもぴったりだったのだが、予測しないよりはマシということで、お許しいただきたい)

※この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

予測1:顧客が支払った代金は、リテーラーを経由せず、直接サプライヤーへ。

リテーラーが顧客からお金を預かり、しばらくキープした後、サプライヤーやアフィリエイトに支払う仕組みは、本当に必要なのか? 例えば英国の旅行者がニューヨークを訪れて何かを購入するときに、ベルリンの企業を経由して買うことに意味はあるのか? こうしたやり取りは、間違いなく非効率的だ。

グーグルの「Reserve with Google(グーグルで予約)」では、もっと別なアプローチが可能だ。予約や購入に便利な場を提供する一方、支払われた代金は、予約と同時に、サプライヤーが直接受け取る仕組みで、リテーラーの銀行口座を経由して支払われることはない。(サプライヤーは「グーグルで予約」に支払い窓口にアクセスするキーを提供。グーグルはこれを使い、予約客のクレジットカード番号をサプライヤーの取引アカウントに直接送る)。

最終的には、最も効率のよいソリューションが人々から支持されるのが世の常だ。「グーグルで予約」のやり方は、10年以内に旅行業におけるスタンダードになると私は予想している。リテーラーが受け取る分は、リテーラーの支払い窓口に別途振り込まれることになるだろう。(支払い窓口の多くが、このように代金を分割して振り込むスタイルをすでに採用済みだ)

2:「デジタルヒューマン」がツアーガイド役を担うようになる

観光ツアーのデジタル化の話題になり、そこで私が「人間のツアーガイドがこれからは時代遅れになる」と指摘すると、みんな必ず驚く。もちろん気持ちは理解できる。私だって、人間のガイドがよい。そもそも観光とは、異文化や異国の人に出会うことが目的の一部であり、単に建物を見て回るだけではない。

だが、広い意味で、「デジタルヒューマン(またはバーチャル人間)」はいずれ活用されるようになる。ポスト・ヒューマニズムの時代へようこそ。

アマゾンのアレクサは、5000人~1万人もの人々が開発や改良に取り組んでいる。グーグル・ブレインのAIチームが手掛ける研究プロジェクト、ミーナ(Meena)では、人間とそん色ないコミュニケーション能力がほぼ実現している。

こうした流れを阻止することはできない。残る問題は、このテクノロジーを観光分野でどう活かすべきかだ。近いうちに、詳しく取り上げて考察してみる予定だ。

サムソンのバーチャル人間「Neon(ネオン)」も要注目だ。


3:リテーラーがツアーを催行する

その好例として、すでに商品化されているゲットユアガイド・オリジナルを挙げたい。同社では、自社オリジナルの同ツアーを、今後3~4年以内に、売上の半分を占める規模に育てる考えだ。この分野ではもっとも資金力ある大手だけに、もし大成功すれば、ツアー業界全体を再編するような事態もあり得る。

今後10年間で、リテーラーは各社とも、自らツアーを催行するようになるだろう。私が2カ月前に書いた詳しい予測記事もぜひご参照ください。

そうなった場合、我々の業界が過去10年かけて構築してきたツアー関連テクノロジーは、すっかり時代遅れになってしまうかもしれない。ちなみに、ここで話題にしているのは、あくまでツアー商品のこと。アトラクション施設や各種アクティビティの予約テクノロジーは含まれないので、念のため!

4:パーソナライゼーション

商品のパーソナライゼーション(その前段階として、発見のパーソナライゼーション)は、今後10年間で、業界全体に広く浸透していくだろう。

発見のパーソナライゼーションとは、例えば顧客がアルコールを飲まないことが事前に分かり、カクテルを作るクラスの案内は控える、といった対応のこと。商品のパーソナライゼーションとは、顧客があまり自由に歩けないことが分かったので、坂道のきつい山は、旅程に組み込まない、など。

どちらのパーソナライゼーションも、マーケットの主流が「シングルトランザクション」と「めったに旅行しない」お客様である場合、少々難しい。しかし、この問題を指摘する声は増えているので、10年以内に、何らかの解決策が登場するだろう。

商品のパーソナライゼーションが実現するためには、現在のOTAからサプライヤーへの予約導線を全面的に見直す必要がある。なぜならリテーラーは、それぞれの顧客とコミュニケーションをとり、相手に合わせて旅程を変更したり、調整することになるからだ。

5:遺伝子によるパーソナル診断

パーソナライゼーションをさらに一歩進めて、遺伝子チェックを受けるという手法。リテーラーは、顧客のプロフィールを見ながら「あなたにはパリがおすすめ」「あなたにはベトナムがいい」などと話す。それから現地での観光について「食べ歩きツアーがおすすめ」「バンジージャンプはどう」と提案する――

これは10年以内に実現する。周知の通り、DRD4-7R遺伝子(冒険遺伝子、旅行熱遺伝子、と呼ばれる)をチェックすればよいことが分かっている。人間の20%は、遺伝子にこうした突然変異が生じているらしい。

ナショナル・ジオグラフィック誌が2013年に掲載した記事によると、

「人類についての多くの研究結果から、7Rを持つ人はリスクを好む。例えば、知らない場所、初めて聞くアイデア、新しい食べ物や人間関係、ドラッグ、異性との関わりなどを開拓するのが好き。総じて活発に動くことや変化、アドベンチャーに意欲的だ。」

残念ながら、現代社会においては、行動に移すことが難しい内容も多数、含まれているようだが…。

6:マイクロモビリティの台頭で自転車ツアーは過去のものに

2019年10月に、マイクロモビリティ(例えば電気スクーターなど)について書いたが、その後、リサーチ会社「6T」の調査結果から、昨年、パリで電気スクーターを利用した人の42%は観光客だったことが分かった。パリ市街には合計1万5000台のスクーターがあるので、ツアー会社が催行する市内観光をやめた人が、かなりの数にのぼることが推測される。

マイクロモビリティの台頭は、今後もさらに続く。いつでもどこでも利用できる自転車や電気スクーターが普及したら、自転車ツアーの催行会社はどうなるのか。少なくとも都市部において、自転車ツアーは姿を消していくだろう。

7:自動運転車両が2025年までに登場する

私は自動運転の乗り物を使ったツアーのプラットフォームを経営している。だから、この予測は利益誘導ではとの声は覚悟している。それでもやはり、2025年までに(2018年時点での予測と同じ)実現する。フォルクスワーゲン(VW)は、ロボ・タクシーを世界3大陸で2025年までに実用化すると発表している。もっと早い実現計画を明らかにしている企業もある。

バスでの市内観光を催行している企業にとって、自動運転車両に関する根本的な課題は3つある。

  • 車両の電気化:最近、電気で動く車に切り替えるようツアー催行会社に圧力をかけている都市がある。だがすべての車を電気自動車に替えると、その投資分を回収するために、10年間は使用する必要がある。もし3~5年後に自動運転車が実用化されたら、またコストがかさむのではないか?あるいは、自動運転車が登場するまで待つほうが得策なのか?(自動運転車も電動だ)
  • 新しい商品:自動運転での市内観光ツアーは、使用する車両が変わるだけではなく、まったく新しいタイプのツアー商品になる。車を替えるだけで、後は従来と同じルートを走らせればよい、という訳にはいかない。
  • 新しい競争相手:ロボ・タクシーは2022年以降に登場し、観光客向けの移動サービスになる。なかでもマイクロモビリティ(自転車や電気スクーター)分野で、自動運転の技術活用が拡がることは、旅行者の選択肢を大きく拡げるだろう。既存の観光バス会社は、10年後もこれまで通り、ハードウェアを所有する企業であり続けるのか、それともデジタルオンリーのビジネスに転向するのだろうか。

以下の動画は、GMとホンダによる「クルーズ」が初公開され、ロボ・タクシー計画が発表されたときの模様だ。


8:スーパーアプリとコネクティッド・トリップ

航空券やホテルを予約するOTA各社が、最近、「コネクティッド・トリップ」と「スーパーアプリ」について、話題にするようになった。

その意味するところは、原則、旅行に関連するすべてのことを、常時、一つの場所で総合的に管理すること。旅行を構成する各パーツが、バラバラではなく、つながった状態で管理されているので、例えばフライト遅延が発生したら、レストランの予約時間も遅くする、といった具合だ。

ツアー、アクティビティ、観光産業は、ホテルや航空会社のスーパーアプリにとって、重要なパーツだ。スーパーアプリとコネクティッド・トリップについても、後日別の記事で詳しく取り上げる予定だ。

9:万人向けの都市ツアーは無料へ

マイクロモビリティ、自動運転車、そしてデジタル人間を組み合わせた市内観光ツアーが実現すれば、少なくとも都市部では、ツアー代金は無料になる。(これはツアーに限定した話であり、アトラクション施設や体験は含まれない)

ツアーとは、基本的に、移動しながらストーリーを語り、どこかに案内するというものだ。人間の語り部は、今後も必要になるが、一部の富裕層だけが対価を支払ってもよいと考える贅沢品の部類になるだろう。デジタルで、人間とほとんど同じ内容を提供できるようになれば、利用者は無料の方を選ぶ。

この中間層に位置づけられるツアー(無料ではないが、人間のツアーガイドが同行するものよりは価格が安い)では、参加者は訪れる先々で、現地ホストと一緒に観光をする。現地ホストは、旅行者と一緒に移動はしない。旅行者は電気スクーターや自動運転車を降りて訪問先に行き、現地ホストと一緒に20分程度を過ごす。その後、また車に乗って無人ツアー(自動運転車でのツアー)を続けるといった具合だ。現地ホストのコンセプトは、テーマパークにいるキャラクターや役者に近い。常に特定の場所で待機していて、やってくる旅行者と短い時間を一緒に過ごすが、ツアーの全行程に付き添うことはしない。

10:ブロックチェーン

予測記事で、ブロックチェーンに触れない訳にはいかない。

ワインディングツリー社は2019年、パブリック・ブロックチェーンでの航空券とホテルの予約を実現してみせた。この技術が確立されたことで、今後10年間にブロックチェーンを活用した新しいコンセプトが続々、登場してくるだろう。

ただし、テクノロジーだけでは十分とはいえない。ツアーやアクティビティ関連では、ブロックチェーンはまだかなり遠い存在のままだ。旅行関連の同業他社は、もっとプロダクト中心にビジネスを展開している。流通は、テクノロジーだけではなく、他の要素も考慮して取捨選択されるもので、この点が最大の懸念材料だ。市内観光ツアーの流通において、重要な要素は4つある。

  • テクノロジー(データ、価格、在庫の有無、予約の際のコミュニケーション)
  • サプライヤーとの契約
  • カスタマーサービス
  • お金の取扱い

私がかつて従事していた予約システム会社、ツアーCMS社の例を挙げると、技術力はあったものの、技術だけしかなかった。

その結果、ホテルチェーンとの契約は、最終的にまとまらなかった。上記の4つの要素すべてが揃っていなかったからだ。ホテルチェーンは、我々ではなく、例えばビアターのように、4つすべてを提供できる企業に頼った。一方、我々は、すでにテクノロジー以外の3要素は揃っていたOTAに、テクノロジーとデータを提供することになった。

ブロックチェーンもよく似ている。技術面だけを考えるなら、すばらしいテック・ソリューションになりそうだが、業界全体で、いつでもどこでも利用できて、どんな取引にも活用できるものになるためには、残りの3要素について、さらなる取り組み強化が必要だ。結論として、ブロックチェーンが本格的に台頭してくるのは、今後10年間の後半になりそうだ。ただし、間違いなくやってくる。

その他の予想

BlooLoop(アトラクション施設関係者向けの情報サイト)によると、観光アトラクション施設で今後、要注目の分野は以下の6つ。いずれも市内観光ツアーや体験でも、参考になりそうだ。

  1. バーチャルリアリティー(VR)
  2. 拡張現実(AR)
  3. ロボット
  4. 人工知能(AI)
  5. インタラクティビティ
  6. eスポーツ

特にVR、AR、AIについてのBlooLoop予測は秀逸なので、ぜひ参照することをおすすめする。

※編集部注:この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:10 predictions for the next decade in tours, activities & sightseeing

著者:アレックス・ベインブリッジ(DestinationCTO 創設者)

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