コネクテッド・トリップとは? ブッキングドットコムCEOに、その未来を聞いてきた

世界で約1万7000人の従業員を抱える世界有数のOTAに成長したブッキング・ドットコム。その設立は1996年。実は1998年設立のグーグルよりも早い。その大組織を束ねているのがブッキング・ドットコムCEOと、親会社のブッキング・ホールディングス社長兼CEOを務めるグレン・フォーゲル氏だ。2000年にブッキング・ドットコムの前身プライスラインに入社。今年6月から現職を務めている。世界二大OTAのひとつとして、ブッキング・ドットコムは今後どこに向かうのか。アムステルダムの本社でフォーゲル氏にインタビューした。

コネクテッド・トリップとは?

「大企業になっても、Making travel easier for everybody to experience the world (すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を)というブッキングの創立の理念は変わっていない」

フォーゲル氏はそう強調する。宿泊施設予約から始め、民泊やバケーションレンタルなどオルタナティブ・アコモデーションに予約範囲を広げ、傘下にレストラン予約のオープンテーブル、レンタカー予約のレンタルカーズ・ドットコムを持ち、ローカル体験予約の「ブッキング・エクスペリエンス」も立ち上げた。直近では、欧州の航空券予約サイトEtraveliとのパートナーシップによって、欧州7カ国で航空券の予約も始めた。

「航空券の予約は、そのうち世界中に広げたいと思っている」とフォーゲル氏。レストランについても、オープンテーブルは地域が限定されていることから、ブッキング本体がオープンテーブルとは異なるオペレーションで乗り出す考えも示す。

その方向性を示すキーワードが「コネクテッド・トリップ(Connected Trip)」。フォーゲル氏は「すべての旅行に関するサービスをプラットフォーム上で、ワンストップでシームレスに予約できるようにしていく」と話す。

旅行では何か迷う場面に大にして直面する。「たとえば、私が東京に旅行に行くときに、映画『ロスト・イン・トランスレーション』のロケ地になったパークハイアット東京のニューヨークバーに行きたいと思っても、値段も場所も分からない。そのバーは非常に高く、近くで他のオプションを探したい時にも、どうすればいいか分からない。そういった煩雑さをテクノロジーで解決する」。フォーゲル氏は「コネクテッド・トリップとはそういう発想だ」と説明した。

昔なら人に聞くことでそうした問題を解決していたが、「ブッキングは同じようなサービスをテクノロジーで提供し、人よりも早く、安く、そして簡単に提供していく」と言葉に力を込めた。

ただ一方で、コネクテッド・トリップはまだ初期段階との見解。ライバルOTAのエクスペティアもトリップ・ドットコムも、そしてエアビーアンドビーさえも、「コネクテッド・トリップ」的なアプローチを見せている。また、アジアではWeChatやGrabなどモバイルアプリが「スーパーアプリ」化し、旅行商材を扱うようになってきた。今後、激しい競争の中で、ブッキングがどのようなスピード感でコネクテッド・トリップを発展させていくのか注目が集まる。

コネクテッド・トリップを熱心に説明するフォーゲル氏

グーグルはライバル?

ライバルはOTAやスーパーアプリだけではない。グーグルも旅行ビジネスへのアプローチを強めている。Reserve with Googleには、日本のasoview!をはじめタビナカ体験プラットフォームの参画も相次いでいる。

「グーグルとは広告クライアントとして長年にわたっていい関係を築いている。グーグルから多くの顧客をブッキングに送ってもらっている」とフォーゲル氏。ブッキングにとって大切なことは、消費者とサプライヤーに素晴らしいサービスを提供することと答えた後に、こう聞き返した。「たとえば、楽天のサービスを受けている消費者が最初にグーグルに行くと思うか?」と。

「アマゾンのカスタマーは、最初にグーグルではなくアマゾンに行く。ブッキングでも同じだ」と自身の問いにそう自答した。フォーゲル氏の考えは、グレートなサービスを提供すれば、消費者はそのまま直接戻ってきてくれるというもの。「だから、他のサービスを気にすることはない」と強気だ。

リアルエージェントは生き残る?

トーマス・クックの破綻は、フォーゲル氏にとってもショックだったようだ。「100年以上も続く老舗があっという間に消えるとは・・・・」。ただ、そこには大事なメッセージが含まれているという。「企業は技術開発を続け、イノベーションを求めて、機敏に動いていくことが大切ということだ」。

一方で、「今後リアルエージェントが生き残っていくのは大変だと思う」とも言う。テクノロジーは、人間が行ってきたことをより早く、より快適なものに発展させている。機械学習によって、一人ひとりの好みを把握し、パーソナライズされたサービスも提供してくれる。「特に若い世代はテクノロジーが好きだし、使い慣れている。彼らが年を重ねるにつれて、リアルエージェントはさらに苦労するだろう。車が登場すると、馬車は一気に姿を消した。その流れは誰にも止められなかった」。

一番思い出に残っている旅は?

「ラグビーワールドカップで日本は世界中の注目を集めた。2020年はオリンピック・パラリンピックでその注目度はさらに増すだろう。個人的には、世界の旅行者に日本の旅館文化を体験してほしいと思っている」。そう話すフォーゲル氏に最後に聞いてみた。「これまでで一番印象に残っている旅は?」。

「それは、自分の子供のなかで誰が一番好きかと問われるくらい難しい質問だ」と笑ったあと、こう答えた。「大学生のときに、スペインに留学した。いまから37年前の話だ。それが最初の一人旅だったからよく覚えている。今でも旅行を通じて新しいことをいっぱい発見している。みんなにそうした体験をして欲しい」。

トラベルジャーナリスト 山田友樹

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