国連事務総長、「観光産業を再構築することが不可欠」と声明、観光復興へ5つの優先領域を提示

国連は、「COVID-19 and Transforming Tourism (新型コロナウイルスと変容する観光)」と題した政策概要を公表した。これは、新型コロナウイルスが世界の観光産業に与えた経済的影響と今後の持続可能な観光産業に向けたロードマップをまとめたもの。この公表にあたり、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が声明を出している。

グテーレス事務総長は、「観光は世界で10人に1人の雇用を生み出し、数億人の暮らしを支えている非常に需要な経済分野」と位置づけたうえで、観光産業はパンデミックによって壊滅的な打撃を受けているとの認識を示した。

国連によると、今年の5月までで、世界の海外旅行者は半分以上減少し、約3200億ドル(約34兆円)の観光輸出額が失われた。また、世界の観光業では約1億2000万人の直接雇用が危機的状況にある。グテーレス事務総長は、「特に女性や若者の割合が多い零細・中小企業で影響は大きく、小さな島国やアフリカなどの発展途上国では緊急事態となっている」と警鐘を鳴らしている。

さらに、観光は自然および文化遺産の保護にとっても重要な柱との認識を示し、「観光収益の激減は、地域社会の生活を奪うことになり、保護地域内での密猟の増加の恐れがあり、それは生態系の破壊にもつながりうる」と危機感を表した。

グテーレス事務総長は、「安全で、公平で、そして地球環境に優しい方法で観光産業を再構築することが不可欠」と強調。そのうえで、観光復興に向けた5つの優先領域を提示した。

1つ目は、パンデミックによる社会経済への打撃の緩和。2つ目が観光バリューチェーン全体で回復力を構築していこと。3つ目に観光分野でのテクノロジーを最大限活用することを挙げた。また、4つ目として、持続可能性と環境分野での成長の促進を挙げたうえで、最後に観光事業者が持続可能な開発目標(SDGs)をさらに進めていくために必要なパートナーシップを創出していく必要性を訴えた。

*ドル円換算は1ドル106円でトラベルボイス編集部が算出

COVID-19 and Transforming Tourism(PDFファイル)

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