出張経費管理の米スタートアップ企業、フィンテック活用で急成長、時価総額も倍増し8338億円、コロナ禍でも躍進するビジネスと目指す未来とは?

出張経費管理ソリューションを提供する米スタートアップ「トリップアクションズ(TripActions)」が好調だ。これまでに13億ドル(約1495億円)の資金を調達。その評価額は72億5000万ドル(約8338億円)まで上げた。ハンデミックで多くのスタートアップが苦しむなか、資金調達を繰り返し、新製品も発表。2021年5月にはMICE関連会社も買収した。昨年開催された「フォーカスライト・カンファレンス2021」に共同設立者兼CEOのアリエル・コーエン氏が登場。同社のビジネスについて語った。

トリップアクションズは2015年に創業。クラウドベースの旅行経費管理プラットフォームを提供している。フィンテック技術を活用して、リアルタイムデータで企業の判断を早め、従業員の安全な出張、効率的な経費管理、経費削減を可能にするという。創業6年でその従業員数は世界で1500人、大手ブランドなど5000社と契約するなど急成長した。

コーエン氏は、同社のサービス・プロダクトについて、「考え方はとてもシンプル。予約から決済、経費管理、福利厚生まで出張に関わる手続きをひとつのプラットフォームで提供すること」と話し、伝統的なトラベル・マネジメント・カンパニー(TMC)と出張経費クラウドのコンカーを合わせたビジネスと説明する。

コーエン氏自身は、それまでは旅行業界とは全くの無縁。「GDSも知らなかった」という。現在のサービスは、プロダクト開発出身のコーエン氏が自身の経験から不便だと感じていたことを製品化した。

「パンデミックが発生して以降、企業は、オンラインソリューションへの移行の重要性を再認識した。しかも、ひとつのベンダーから」とコーエン氏。コロナ禍では、旅行規制が頻繁に変更されるため、予約のキャンセルが増大した。それは、出発前だけでなく、出張中でも起こった。「コールセンターでその手続きをすると、平時であれば1分ほどで完了するのに、コロナ禍では数分かかる。感覚的には数時間も待たされているような気になる」。

オンラインであれば、帰国あるいは帰社させるために必要な情報をリアルタイムで把握することが可能になる。コーエン氏は「大切なことは、テクノロジーとヒューマンタッチを融合させること」だと話す。

さらに、伝統的なTMCについても言及。「彼らは、出張者個人のことだけにフォーカスしすぎる。ビジネストラベルとは、出張だけでなく、企業活動全体のことだ」と話し、すべてをひとつのプラットフォームで網羅することの重要性を指摘した。

このビジネスを始める前はフォーカスライトも知らなかったとコーエン氏フィンテックを中心としたテクノロジーがカギ

フィンテックを中心としたテクノロジーは同社の成長のカギだ。決済経費管理製品の「Liquid」は、クレジットカードを読み取り機器に通すだけで、経費管理が完了するもの。コーエン氏「利用者は何もする必要がないし、企業側も煩雑な経費精算などの経理業務が必要ない」と強調する。

さらに、トリップアクションズは、イベントや会議に出席するグループ向けに出張経費を管理する「チーム・トラベル」もリリースしている。

同社は昨年、MICEビジネスを展開する「Reed & Mackay」を買収した。コーエン氏は「同社とは我々のミッションを共有できる。我々とは異なるアングルから事業を見ているため、相乗効果は大きい」と買収の背景を説明した。ただ、今後の買収による事業拡大については、「慎重に考えていく必要がある」と話すにとどめた。

トリップアクションズの契約社数は現在のところ約5000社。そのうち約30%がいわゆる大企業。コロナ禍でもその数を伸ばし、zoom、Adobe、ハイネケンなどとも契約した。「我々の野心は、大企業だけでなく中小企業も含めて、世界中のすべての企業とその従業員にサービスを提供すること」とコーエン氏の鼻息は荒い。

「我々は、ブロックバスター(レンタルビデオチェーン)からネットフリックスになる。ネットフリックスは、視聴者が誰であろうが、常にイノベイティブだ。我々も、相手が大企業であろうと中小企業であろと、イノベーションで新しい製品をマーケットに投入していく」。

トリップアクションズの企業評価額は2019年の40億ドル(約4600億円)からほぼ倍増した。

※ドル円換算は1ドル115円でトラベルボイス編集部が算出

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