ロケーション(位置情報)テックは観光分野でどう活用できるか? ナビタイムの技術と活用事例を紹介するイベントを取材した

ナビタイムジャパンは先ごろ、初めて法人向けにオンラインイベント「NAVITIME Business Conference 2022」を開催し、同社がナビゲーション技術と位置情報を組みあわせて発展させてきた、独自のロケーションテックの活用事例を紹介した。

ナビタイムといえば消費者向けサービスの印象が強いが、いまや業務支援サービスから戦略策定、社会課題の解決などまで、企業や自治体での活用も増えている。あらゆる移動のタイミングでターゲットとの接点が持てるというロケーションテック。同イベントから観光分野での活用事例をピックアップした。

「トータルナビ」をコア技術として展開

冒頭で、ナビタイムジャパン代表取締役社長で工学博士でもある大西啓介氏は複数の移動手段を組みあわせて最適な移動経路を提示する同社の「トータルナビ」が、同氏と副社長の菊池新氏が1998年に世界で初めて完成させた、経路探索技術であることを説明。「今でこそMaaSの形で複合交通のナビが取り上げられているが、我々は20年以上も前からMaaSの経路探索の技術を確立している」と自信を示した。

同社はこの「トータルナビ」をコア技術に、独自のロケーションテックを展開している。事業領域はドライブ事業や公共交通事業、ツーリング事業、バス・ウォーキング事業、MaaS事業などの移動に直結するものから、マーケティングを含むメディア事業、トラベル事業、地域連携事業、キャリア協業事業など14もの分野に拡大。大西氏は、「多くの分野で位置情報を活用したDXの重要性が高まっている」と話し、参加者に本カンファレンスで紹介するサービスやデータの活用を促した。

たとえば、訪日旅行アプリ「Japan Travel by NAVITIME」では、日本の観光開発に役立てることを目的に利用料金を無料とする一方、利用者にはアンケート回答とデータ使用の許可を求め、国籍や性別、訪日の目的や、位置情報のログなどの分析をしている。それによって訪日外国人が注目している観光スポットの発見や、国籍による旅行行動の違いの把握が可能になる。また、特定の観光スポットとその周辺スポットとの関連性を調べるアソシエーション分析なども実施している。

大西氏は「このようなデータ分析は観光庁や内閣府などでも活用されるようになった」と話し、今後も回復傾向にあるインバウンドの施策で大きな役割を果たすことを示唆した。

国籍によって旅行行動に違いがあることも明らかに。伏見稲荷大社での分析

未来の行動へのアプローチが可能

また、メディア事業部兼トラベル事業部の事業部長・毛塚大輔氏によるセッションでは、ロケーションテックを搭載した同社メディアサービスの特徴を説明。これを観光関連企業や自治体が活用することで、適時にターゲットにアプローチしたり、課題解決をはかることができるという。

同事業部では消費者向けに、「NAVITIME乗換案内」などの移動系サービスや、「NAVITIME Travel」「Japan Travel by NAVITIME」など国内・訪日・海外の旅行サービスを運営。現在、月間の有料会員が約480万人、月間延べユーザー数は5100万人に及び、経路検索は月間3億回の検索がされている。そして、経路検索をした70%の人が、実際に24時間以内に目的地に行っている(東京23区のデータ)。毛塚氏は、「移動の計画を立てるサービスを利用しているので、検索後に目的地に行くのは当たり前」としながらも、「ここまで未来予測できるのは当社のナビゲーションならでは」とアピールした。

こうしたユーザー特性がある中で、企業や自治体が活用できる例のひとつが「消費のハブ」としての側面だ。毛塚氏によると「ユーザーの移動導線上に手配導線を配置して、移動シーンに沿った最適な情報提供をしている」という。

具体的には、経路検索結果で有料特急列車の移動を案内している部分に当該列車のチケット予約のボタンを、目的地の部分に宿泊予約のボタンをそれぞれ配置するといったもの。検索時の日付・時間設定を引き継いだり、交通各社とデータ連携して新たな会員登録の手間をなくしたりなど、少ない手間でスムーズに予約できるようにする工夫も盛り込んでいる。

ユーザーの「移動」を軸にしたカスタマージャーニーにおいて、「あらゆる移動タイミングで接点を持っている」(毛塚氏)のも同社の技術の強みだ。移動の前後では「きっかけ」「検討/調査」「移動計画」「意志決定」「現地行動」といったタイミング・ステップがあり、特に「移動計画」から「現地行動」の段階は、「最も強みとするユーザーとの接触タイミング」と強調する。

具体的には、同社サービスで経路検索などをしている最中に、経路の駅、路線、エリアなどをもとにした情報配信のターゲティングが可能だ。タビナカで行動中の人に対しては、指定エリア内に入った瞬間にプッシュ通知で情報提供もできる。検索履歴データなどから沿線居住者、特定の道路通過者、自転車保有者といったセグメント分けをおこない、確度の高いターゲティングも可能だ。毛塚氏は「誘導させたい施設付近に行くユーザー、あるいはそこにいるユーザーの未来の行動へのアプローチが可能」と話した。

実際、こうした仕組みの活用事例も増えてきている。京浜急行バスでは空港バスの利用促進を図るべく、羽田空港を出発地として乗換検索するユーザーに対して、乗換なしで快適に移動できることなど、空港バスの利便性の高さを伝える広告を表示するようにした。また港区エリアの商業施設では、「Japan Travel by NAVITIME」ユーザーの訪日外国人をターゲットに、周辺エリアに入った際にプッシュ通知して施設へ誘導したところ、実施前と比べて来訪者が7倍に増加するなど大きな効果が得られたという。

ユーザーへのアプローチやターゲティングが正確にできることをアピール

ナビタイムのサービスを外部活用できる機能も

ナビタイムでは、交通・観光分野の企業・自治体には、コンテンツの充実や消費者の行動分析を可能にするサービスも提供している。企業が運営するウェブサイト内に簡易的な乗換・ルート検索の機能を追加できる仕組みや、企業サイト上で独自にルート検索と旅行プランニングの機能を運用できるようにする仕組みなどを用意し、ユーザーの利便性向上や観光周遊の促進につなげるものだ。

たとえば中部国際空港ではルート検索の機能を自社サイトに追加し、空港を発着地点とした経路検索、他の公共交通機関のチケット手配、ホテル予約を可能にしている。そこで検索された情報は毎月ナビタイム側からレポーティングしており、二次交通網の整備、シャトルバスの運用の効率化、旅行商品の開発、自治体との連携などに活用しているという。

観光周遊の促進の面では、先述の通り「NAVITIME Travel Platform」という名称でサービスをパッケージ化している。観光情報、経路検索、旅程プランニング、宿泊・チケット予約などの機能を、各社が独自にカスタマイズしながら低コスト・短時間で自社サイトとして提供できるものである。API連携によって観光情報を取得し掲載でき、乗り換えやスポットの位置関係を把握しながら旅程をプランニングする機能も利用できる。ユーザーの行動分析が行えるという利点以外に、自社や地域が発行している周遊チケットのルートを優先して案内するような独自の経路を追加できるのもポイントだ。

こうした取り組みを総合すると、同社が提供するのは移動をサポートするためのツールにとどまらず、人の移動を軸に据えたマーケティングツールであり、国や地域の観光施策の基盤になりうるメディア、プラットフォームでもある。

移動をサポートするナビゲーションサービスは、日常生活でも、非日常の遠出や旅行時にも、人の行動に寄り添い、溶け込んでいる。企業のビジネスはもちろん、社会的にも大きな役割を果たせるプラットフォームとして活用できるだろう。

ナビタイムの技術や機能を企業・自治体に提供

取材・記事:日沼 諭史

編集:トラベルボイス編集部

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