欧州の人気都市でオーバーツーリズムが再燃か、米国人旅行者の「リベンジ旅行」で、市民生活にも影響

3年間のパンデミックを経た2023年の夏、欧州で人気の観光都市では、旅行者が2019年の記録を上回ると予想されている。その需要増加を後押ししているのが、米国人旅行者だ。AP通信がその需要の強さを報じている。

ドル高を背景に、バルセロナ、ローマ、アテネ、ベネチアからギリシャのサントリーニ島、イタリアのカプリ島、スペインのマヨルカ島などの風光明媚な島々に至るまで、いわゆる「リベンジツーリズム」を動機に多くの旅行者が米国から訪れる。航空券やホテルの高騰を気にかけることもないようだ。また、フランスで最近起きた暴動も気にしていない。

マスツーリズムの復活は、コロナ禍で苦境に立たされたホテルやレストランにとっては歓迎すべきことだが、持続可能な観光を目指す行政の取り組みは無視されている。国連世界観光機関(UNWTO)欧州地域局長のアレッサンドラ・プリアンテ氏は、「パンデミックは私たちに多くの教訓を与えてくれたはず。目先の収益に目が向いているが、2、3年先のことに目を向けるべきだ」と話す。

UNTWOによると、欧州への旅行者および欧州内の旅行者は現在のところ2019年同期比で10%減少。ウクライナ近隣国への旅行者が減り、中国路線の回復が遅れているためだ。ギリシャでは、今年の訪問者数を3000万人と予測。2019年の3400万人にはまだ及ばない。

それでも人気の観光地に旅行者が集中。人で溢れかえっている。アテネではアクロポリスに入るために2時間以上待つ事態だ。

一部都市への集中が招く価格上昇

イタリアのホテル協会フェデラルベルギ氏によると、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、カプリなど一度は行ってみたいと思われているイタリアの都市への米国人旅行者は、パンデミック前の水準を上回っている。

一部の都市への集中は、価格の上昇を招いている。イタリアの消費者団体コダコンズによると、フィレンツェの宿泊費は昨年に比べて53%上昇。ベネチアでは25%、ローマでも21%上がった。

さらに、民泊の需要も急増。フィレンツェとは異なり、ベネチアでは民泊に対して何の制限措置も取られていない。運河沿いの歴史的中心部には 4万9432人が暮らしている一方、観光客用のベッドが4万9272床あり、そのほぼ半数が短期賃貸可能な民泊だ。

これによって、市民がスーツケースを持った観光客で溢れる公共水上バスに乗るのは難しい状況。賃貸物件が高騰しているため、学生が手頃な価格の物件を見つけるのに苦労している。観光需要の増大で生活費も高騰し、市民生活にも影響が出始めている。

ベネチア市は、入込客数の制限を目的とした日帰り客への入域税の導入を延期した。この措置に対して、ベネチアを「遊園地」化するものだとの批判も上がっている。

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