産直EC「雨風太陽」、東証に新規上場、関係人口を生み出す旅行サービスを強化、訪日客向けコンテンツの創出も

産直ECプラットフォームを展開する「雨風太陽」は、東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。同社は、生産者と消費者とを直接繋ぐ「ポケマル」のほか、その生産者ネットワークを生かした旅行系サービスも展開している。現在の登録ユーザー数は約70万人、登録生産者数は全国で約7900人。2023年12月期の売上高は9億5500万円、純損失は1億8500万円を予想している。

同社代表取締役の高橋博之氏は上場発表会見で、同社がミッションに掲げる「都市と地方をかきまぜる」について、「経済的・人的な流通量を増やして、都市と地方の分断を解決し、地方を持続可能にしていく」と説明。そのうえで、ビジネスの一番の強みとして「生産者との関係性が強固なところ」を強調した。

ECアプリ「ポケマル」は2016年9月からサービス開始。コロナ禍で登録生産者も登録ユーザー数も大幅に伸びた。その要因の一つがスマホで完結するプラットフォームを構築したこと。生産者は、出店・出品、値付け、発送まですべてスマホ上で完結できるほか、消費者と直接コミュニケーションを取ることもできる。成約率は一般的なメルマガと比較して高く、購入者に占めるリピート率は約8割にのぼるという。

(左から)大塚氏、高橋氏、コーポレート部門長の相澤まどか氏長期的には人口の20%の関係人口創出を

この生産者ネットワークを活用して、旅行系サービスも始めた。2022年からは生産者を親子で訪れる「ポケマルおやこ地方留学」を開始。親は旅先テレワーク、ワーケーションで仕事をしている間、子どもは生産者から学ぶプログラムを開発した。高橋氏によると、岩手県で実施したプログラムでは、応募人数の倍以上の申し込みがあったという。今年は全国5カ所に拡大した。

同社によると、「おやこ地方留学」を通して、都市住民が生産現場で過ごした日数は、2023年第3四半期で計2631日。コロナが5類に移行したこともあり、その数は第2四半期から約5倍に急増した。高橋氏は「全国に広がるネットワークを生かして、順次地域を拡大していく」と意欲を示した。

また、インバウンドへの取り組みも始める。訪日客に人気の日本食をフックに地方の生産者が提供する体験をコンテンツ化していく考え。同社取締役人流創出部門長の大塚泰造氏は「将来的に、OTAとしてか、あるいはランドオペレーター的な役割で展開するのかを考えている」と話した。

このほか、第3の柱として自治体向けのサービス支援にも力を入れていく。産直ECでの販売促進の支援や農業体験プログラムの実施のほか、インバウンド観光コンテンツの創出でも協力していく。大塚氏は「訪日客と生産者を接続していくガストロノミーツアーなどで、自治体と一緒にコンテンツをつくっていきたい」と今後を見据えた。すでに大分県では「インバウンド観光コンテンツ高付加価値化促進事業」として支援サービスを展開した。

「関係人口」という言葉を著書の中で提唱した高橋氏は、事業計画の中のインパクト指標として、顔の見える流通総額のほか、生産者と消費者のコミュケーション数と都市住民が生産現場で過ごした延べ日数を挙げた。長期的には、日本の人口の20%、2050年で約2000万人が主体的に地域に関与する関係人口を創出することを目指す考え。

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