
米国の旅行市場は、パンデミック後「リベンジ旅行」の波に乗っていたが、ここに来て需要の減速が見られ始めた。エクスペディア・グループは、2025年第1四半期の売上高が予想を下回った。バンク・オブ・アメリカは、クレジットカード取引の推移から、4月も航空券と宿泊施設の支出の減少傾向が続いていることを明らかにした。
エクスペディアによると、米国への海外から旅行者、米国国内の旅行者とも減少しているという。エアビーアンドビーやヒルトンも、第1四半期決算で同様の傾向があることを指摘。米国の大手航空会社の多くが、エコノミークラスのレジャー旅行の予約数が減少していることを理由に、減便計画を明らかにしている。
全米旅行業協会(U.S. Travel Association)は、この需要減退の要因の可能性として、経済の不確実性とトランプ大統領の関税政策に対する不安があるとしている。実際、4月には米国人の経済に対する信頼感は5カ月連続で低下し、パンデミック発生以来の最低水準となった。
観光産業の専門家は、米国外では、トランプ関税への怒りや米国国境での観光客拘束への懸念から、一部で米国旅行離れが起きていると指摘する。
米国政府は先月、今年3月末時点で国外から米国に入国した旅行者数は前年比3.3%減の710万人に減少したと発表した。この数字には、メキシコやカナダからの入国者は含まれていない。ただ、カナダからの入国者数は急激に減少しているデータもある。エクスペディアによると、今年1月~3月のカナダから米国への予約総額は30%近く減少したという。
同社のアリアン・ゴリンCEOは、「米国への旅行に対する圧力は依然として続いているが、ある程度回復もしている。欧州から米国への旅行者は減少。代わりに欧州から南米への旅行が増えている」と話した。
エクスペディアの株価は5月9日正午の取引で7%下落した。
エアビーアンドビーも旅行先としての米国への関心は低下していると見ている。同社のエリー・メルツCFOは、「カナダが最も顕著な例だ。カナダ人の米国への旅行率は低下し、代わりに国内旅行、メキシコ、ブラジル、フランス、日本などへの旅行が増えている」と明かした。
ヒルトンは客室当たり売上高の通期予想を下方修正。通期の成長率予想を2~3%から0~2%に引き下げた。しかし、同社のクリストファー・ナセッタCEOは楽観的で、「今後、数四半期で、こうした不確実性は和らぎ、経済の底堅さが再び輝きを取り戻すだろうと確信している」と話している。
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。