
オーストリア政府観光局、ウィーン市観光局、ウィーン空港は、このほど大阪・関西万博のオーストリア館で現地の最新動向を紹介する特別イベントを開催した。ウィーン空港は、空港機能を超えて、交通・ビジネス・生活・文化が融合して次世代インフラの実現をめざす「AirportCity Vienna」の構想を紹介。従来の空港の枠を超えた「空港都市」として、スタートアップなどの日本企業、旅行・航空関係者に欧州進出のゲートウェイとしての活用を呼びかけた。
現在、ウィーン空港に乗り入れる航空会社は72社、世界65か国・地域の195空港に運航している。2024年の年間旅客数は過去最高となる3170万人を記録し、2025年も堅調な成長を続けている。2027年にはターミナル3を7万平方メートルとする拡張計画が進行中で、最新のラウンジやレストランなどの商業施設が新たに導入される予定だ。
この整備と並行して注力されているのが、空港周辺に展開する都市機能の強化。「AirportCity Vienna」では、すでに約12万平方メートルの開発が進み、250社以上の企業が進出している。オフィス、商業施設、ホテル、医療、郵便、教育などが一体となった都市を形成。通過地点である空港としての機能だけでなく、人が「暮らす場所」として設計されており、地域を巻き込んだ生活圏としての成長も遂げているという。
今後も拡張は続く計画で、2025年中には1万7000平米の新オフィス棟「Office Park 5」が完成する予定。地熱エネルギーを活用し、完全カーボンニュートラルを実現する環境配慮型の施設となる。また、年末には510室を擁する欧州最大級の木造ホテルも開業する予定。さらに、物流面でも施設拡充や第2物流拠点を整備し「物流ハブ」としての存在感も高めていく。
ウィーン空港共同CEO兼COOのユリアン・イェーガー氏
ヨハン・シュトラウス生誕200年、ウィーン市観光局の文化戦略
ウィーン市観光局は、音楽・芸術・建築・食文化といった文化を軸に、「都市全体がミュージアム、ステージ、創造の実験室(The entire city is a museum, a stage, and a laboratory of creativity)」というビジョンのもと、街を歩けば自然に音楽が流れ、建築に歴史を感じることができる都市であることをアピールした。
また、プレゼンテーションでは、中心市街地に加えて、ドナウ川の対岸に広がる第2地区レオポルドシュタットや、都市開発が進む「アスペルン・ゼースタット」といった郊外エリアも紹介。これらの地域を、都市の多様性と文化の広がりを体現する新たな観光資源として位置づけており、今後はウィーン中心部だけにとどまらない市内の体験を提案していく。
ウィーン市観光局CEOのノルベルト・ケットナー氏
そして、2025年はウィーンを代表する作曲家ヨハン・シュトラウス2世の生誕200周年。記念事業の目玉のひとつとしては、5月31日におこなわれたウィーン交響楽団による特別コンサートを紹介。ウィーン交響楽団が演奏する「美しく青きドナウ」をリアルタイムで信号化して宇宙空間に発信し、太陽系外を飛行中のボイジャー1号に23時間後に到達させるという壮大な取り組みだ。ウィーンの芸術と科学を融合させた壮大な文化プロジェクトで、ウィーン市の文化的想像力が表現されている。
なお、当日の演奏は、オーストリア応用美術博物館MAKでおこなわれ、宇宙へ送信に成功。ニューヨークとウィーンでも無料公開上映された。その様子は、オンライン上でも公開されている。
万博のオーストリア館内の様子。葛飾北斎の浮世絵が描かれたピアノは世界16台限定モデル。自動演奏もおこなわれる