
政府はこのほど、人口規模が縮小しても経済成長し、地方を元気にすることを主眼とした構想「地方創生2.0」の目玉の政策として、関係人口を可視化する「ふるさと住民登録制度」の創設を打ち出した。今後、行政サービスのあり方や制度面についても検討をすすめ、具体的な事業や戦略は2025年度中に策定する。
「地方創生2.0」構想は、2025年度から2034年度までの10年間の方向性を提示するもの。10年後に目指す姿として、「若者・女性にも選ばれる地方をつくる」「地域資源を活用した高付加価値の地方経済をつくる」などを掲げた。東京圏へ極端に人口・経済が集中するなか、「都市」対「地方」の対立ではなく、相互につながり、高め合う社会の実現を目指す。
専用アプリで簡単に登録
「ふるさと住民登録制度」は、住所地以外の地域に継続的に関わる人を登録することで関係人口の規模や地域との関連性を可視化し、地域の担い手確保や地域経済活性化につなげる仕組みを創設するもの。専用の「ふるさと住民アプリ」を通じて簡単に住民登録・発行ができることを想定するなど、間口の広いプラットフォームのシステム構築を進める。
登録制のイメージ像は、自治体がイベントや行政サービスの情報を提供し、ふるさと住民は特産品購入やふるさと納税、観光リピーターなどを通じて地域経済の活性化に寄与するとともに、ボランティア副業、二拠点居住などで地域の担い手として活躍する姿を視野に入れる。先行する事例としては、宿の手伝いなどをすることで宿泊料を免除する新潟県南魚沼市の「帰る旅」、福島県外在住が県内に滞在しコワーキングスペースなどでテレワークをおこなった費用を補助する「ふくしまぐらし。×テレワーク支援補助金」などがある。
総務省資料より
このほか、構想では地域課題を解決するためのAIの活用、自動運転など新たなモビリティサービスの社会実装、電子渡航認証制度による厳格・円滑な出入国審査なども掲げた。
石破茂首相は、地方創生相だった2014年にも人口減少を主眼に置いた地方創生策を発表していた。6月3日の新しい地方経済・生活環境創生会議では「人口減少が急激に進むなか、かつて増加期に作り上げられた経済社会システムを検証し、中長期的に信頼される持続可能なシステムへと転換していくことが求められている」と言及。「稼げる地方」をつくるため、「地域の多様な食や伝統産業、自然環境や文化芸術の豊かさといったポテンシャルをいかし、観光業やサービス産業、コンテンツ産業等の高付加価値化を図る」と述べた。
また、複数の都道府県と経済団体などが、複数のプロジェクトを連携して取り組む「広域リージョン」の枠組みを創設するとも言及した。