世界大手オンライン旅行会社（OTA）4社のブッキング・ホールディングス（Booking.com）、エクスペディア・グループ（Expedia）、トリップ・ドットコム・グループ（Trip.com）、エアビーアンドビー（Airbnb）は、2024年にマーケティング分野で合計約175億ドル（約2.5兆円）に及ぶ巨額の投資をおこなった。2025年第1四半期のマーケティング支出は、前年同期比で増加している。
大手OTAは、近年、ソーシャルメディアなどのチャネルでの実証、グーグルなど巨大チャネルへの依存を減らすためのAI開発などに取り組んでいる。競争の激しい市場で顧客獲得とブランド強化を目指している。
ブッキングは、2025年第1四半期のマーケティング費用が前年同期比10%増の約18億ドル（約2600億円）に達したと発表した。総予約額に占める割合は、1ポイント上昇して3.8%となった。また、エウアウト・スティーンバーゲンCFOは4月下旬、過去1年で流通チャネルを介さないBtoC販売の割合が年間60%台前半から60%台半ばに増加したことを明らかにした。
また、ソーシャルメディアへの投資に対するROI（投資収益率）は順調。それによって、既存のマーケティングチャネルの一部でもパフォーマンスが向上し、同程度のROIで予約件数が増加しているという。
ソーシャルマッチング
エクスペディア・グループは、新たにリリースしたAI搭載ツール「Trip Matching」を通じて、ソーシャルメディアへの注力を強化。第1四半期の営業・マーケティング費用を6%増の17億6000万ドル（約2534億円）に増やし、「Instagram上での迅速な予約へのアクセス」を始めた。
アリアン・ゴリンCEOは、このツールによって、旅行者は「Instagramのリール動画をベースに旅程を作成し、エクスペディア上でそのまま予約ができるようになる」と自信をのぞかせる。この戦略は、旅行者をエクスペディアブランドに呼び戻し、カスタマイズされた旅程などを生成してもらうことにある。
ゴリンCEOは、第1四半期の決算報告で消費者がChatGPTなどのAI関連企業を利用するようになり、検索行動が変化していると述べた。「自社ブランドが、これらのプラットフォームに適切に表示されるようにする必要がある。オーガニック検索だけでなく、OpenAIの『Operator』などのエージェント機能（AIが代わりに予約をおこなう）との連携も重要になってくる」との認識を示している。
中核事業と市場を超えて
エアビーは第1四半期に販売・マーケティングに5億6300万ドル（約811億円）を投じた。これは前年同期比で9.5%増加となる。同社はコアサービスの宿泊施設以外にも事業を拡大。テレビ広告を通じてブランドイメージの向上を図っている。最新のキャンペーンは、「体験」プラットフォームのリニューアルと同時に実施された。
エアビーは、中核市場以外への投資も継続している。エリー・メルツCFOは、「まだ進出していない市場では、製品とマーケティングでより地域に密着したアプローチをしている。これは複数年にわたる戦略だが、すでに効果的な成果を上げている」と話す。こうした市場の成長率は、5四半期連続で中核市場を大きく上回った。
ブライアン・チェスキーCEOは、成長市場としてスペイン、イタリア、ドイツ、メキシコ、ブラジル、中国、インド、韓国、日本を挙げ、「我々はアクセルを踏み込む。海外市場（米国外）は、我々が再び2桁成長を達成するための最大の成長原動力の一つになる」と話した。
トリップ・ドットコム・グループは、第1四半期に販売・マーケティング費用を30%増加させた。4億1300万ドル（約600億円）の投資額は、他の大手OTAには及ばないものの、中国に拠点を置く同社にとっては大きな飛躍だ。同社は決算説明会で、60歳以上のシルバー世代をターゲットとした施策を進めていくことを明らかにした。
※ドル円換算は1ドル144円でトラベルボイス編集部が算出
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ（PhocusWire）」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事：OTA marketing spend rose in Q1 2025
筆者：Linda Fox氏
観光マーケティング実務スタッフ（旅行好き大歓迎！）【株式会社マーケティング・ボイス】
