ツーリズムEXPO2025が始まる、石破首相・観光は「地方創生2.0」の切り札、初の愛知開催、初日を取材した

「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2025」が2024年9月25日、愛知県Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開幕した。9月28日までの4日間、観光に関する多方面のキーパーソンが登壇するシンポジウムやセミナー、プロフェッショナル向けセミナー、展示会、商談会が開催され、4日間で計10万名の来場を見込む。

※写真は、25日夜に開催されたウェルカム・レセプションの様子。名古屋で毎年8月に開催される「にっぽんど真ん中祭り」の受賞団体が熱気あふれる踊りを披露。

今年の出展企業・団体数は1350。国内から45都道府県(630小間)、海外から82カ国・地域(442小間)、その他(392小間)の合計1472小間での観光展示会がおこなわれる。商談会の参加者は、セラー826社、バイヤー703名、商談セッション数(事前マッチング)は6071セッション規模となる。

イベントのテーマは、「旅は“知”の再発見」。主催者会見で日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行氏は、テーマの意図について「世界で広がっているアドベンチャーツーリズムやSDGs関連の新たなスタイルの旅行を広めるきっかけになればよいと考えている。新しい時代に合致した新しい旅を世の中に知らしめる機会にしたい」と説明した。

開会式では、石破首相からのビデオメッセージが寄せられた。石破首相は、TEJ開催でインバウンド、アウトバウンドとともに活性化することで、国内外の旅行者を「地方に誘客する弾みになることを期待している」と話した。そのうえで、「観光は地域の根幹的な産業であり、政府がすすめる『地方創生2.0』の切り札」と強調。インバウンド好調の経済的な恩恵を全国に広げていくことが重要で、「日本の地方に足を伸ばしてもらうことが大事」と締めくくった。

石破首相からのビデオメッセージ

UNツーリズムのエグゼクティブディレクター、ゾリッツア・ウロセヴィック氏は、観光の役割が単なるレジャーを超えていると指摘。観光が人々をつなぐ架け橋であり、平和の大使として文化を超えた対話を促す存在であると強調した。

そして、日本のインバウンド客数が2019年レベルを超えたことに対して、日本の観光地が持つ持続的な魅力と高い適応力の証であると評価した。特に注目すべきは、回復が主要都市圏にとどまらず地方へ広がっている点であると指摘。そのうえで、ウロセヴィック氏は、地域観光は経済機会を多様化し、訪問体験を豊かにすることから、観光の健全性にとって極めて重要であるとの見方を示した。また、観光は自然環境や文化の保護という重大な責任も担っており、持続可能な発展を実現しなければならないと訴えた。さらに、TEJの場でこうした視点を共有することが、未来志向の観光の真の力につながると呼びかけた。

UNツーリズムエグゼクティブディレクター、ゾリッツア・ウロセヴィック氏エグゼクティブディレクター、ゾリッツア・ウロセヴィック氏

初めての愛知開催、中部国際空港の活性化へ

今年、愛知での開催となった目的は、愛知・中部北陸の魅力の発信、中部国際空港のさらなる国際化、北陸地域の復興支援、BtoB強化による業界の活性化。中部国際空港の国際線の回復が8割程度にとどまっていることから、「魅力ある観光地があることをしっかりアピールしセントレアの活性化につなげていきたい(JATA髙橋会長)」という背景がある。

主催者会見では、中部経済連合会・会長の勝野哲氏が、同地域を「国内外で知ってもらう絶好の機会」として「東京、京都、大阪に次ぐ新たな観光地として認知される機会にしたい。そして、イベントを皮切りに交流につなげ、地域の活性化につなげたい」と意欲を示した。

中部経済連合会・会長の勝野哲

TEJのスペシャル・サポーターに就任した愛知県瀬戸市出身の瀬戸朝香さんも登場。自身の旅の経験を披露する28日のトークショーに向けて

同日夜におこなわれたウェルカム・レセプションでは愛知県の大村秀章知事が挨拶に立ち、これまで長年にわたってTEJの誘致活動をおこなってきたことを明かし、開催にあたっての謝意を示した。

大村知事

インバウンド商談会も、VISIT JAPAN トラベル&MICEマート

2017年からTEJとの相乗効果を狙って、JNTOが同時開催している訪日旅行の商談会「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート(VJTM)」も盛況だ。今年の海外バイヤーは270社、国内セラーは330社・団体が参加し、6300件の商談がおこなわれる。今年は、地方誘客を進めるなか、小規模自治体の参加にかかる負担減のために、「地域優先枠」を新設。通常3日間の参加が必要なところ、半分の1.5日での参加を可能としたことで商談機会は拡大している。

JNTO理事長の蒲生篤実氏は「多くの商談機会を提供することでインバウンド好調につなぎ、地方活性化につなげていく」と意欲を示した。そして、商談会後に開催されるバイヤーの視察ツアーに向けて、TEJのブースでの情報収集によって充実した視察となることに期待した。

視察ツアーは、一般的な観光コースに230名、MICEコースに20名が参加する予定。愛知・中部北陸地域をめぐる予定だ。

VJTM会場内の様子

大臣会合、「回復を超えて変革の段階に」

「激変する地域観光~地域連携戦略と人材育成」をテーマにした大臣会合には、7カ国の観光大臣・副大臣、及び国際観光機関6団体のトップの合計14名が出席。日本からは、国土交通大臣政務官𠮷井章氏が参加した。

会合で、UNツーリズムのウロセヴィック氏は、世界の旅行者が15億人を超え、2兆ドル規模に達した観光産業は「回復を超え変革の段階に入った」と指摘。持続可能性と地域多様化が急務であり、デジタル活用や資源管理が課題とした。

各国代表も観光の多様化や地域連携を強調。カンボジアやウズベキスタンはエコツーリズムや新ルート開発に注力し、スロベニアやヨーロッパ(ETC)は、「数より質」を重視したマネジメントへ移行。人材育成の重要性を訴え、AIやデジタルも活用すべきとされた。各国・機関からの発言は、観光を単なる成長産業ではなく、地域社会や環境と調和し、レジリエントで持続可能な未来を築く手段と位置づけるものであるとの見方で一致した。

大臣会合の様子

以下は、展示会の初日(業界日)のごく一部の様子。TEJは、会場内を撮影した数多くの画像を公式サイトで公開している。

香港政府観光局:今年1月に公開し大ヒット映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の世界観を再現した。設置されているインテリアや小物類は、内部まですべて香港で製作したもの。

インド北西部のラジャスタン州は、チャパイと呼ばれる木型を用いた染物や、ラックと呼ばれる樹脂をつかった伝統工芸の実演も

愛知県は、例年の3倍規模のブースを出展。県内の多くの自治体や組織、事業者が、ブース出展参加した。開催地の常滑市は自らブースを出展し、大盛況

新たなドライブツーリズムを提供する2社がユニークな車を展示。右のテスラのサイバートラックを展示したのは、高級車レンタカー「ISレンタリース」。左のランドクルーザーを展示するのは、食品輸入業者から観光界隈に参入した、シンオー社

日本観光振興協会が「観光DX支援セミナー」を開催。日本観光振興デジタルプラットフォームのデモもおこなった。地域のデータをどのように可視化し、今後のマーケティング施策等にいかしていけるのか、画面を見ながら考える機会を提供

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