農協観光が個人旅行のネット販売に注力する理由とは? 農業体験や生産者との交流を促進へ、新システム導入の狙いを聞いた(PR)

農協観光が、個人旅行の販売を強化している。2023年に同社の旅行販売サイト「e-たび日和」を開設。その機能強化を目的に2024年10月、日鉄ソリューションズの旅行業界向けDX支援ソリューション「TRIPHOO(トリップー)」を導入した。宿泊やツアーなど、同社の個人旅行商品をオンライン販売へシフトし、強化を進めている。

これまで、団体旅行を主力としてきた農協観光が、なぜ、個人旅行を強化するのか? その基盤となる旅行販売システムに「TRIPHOO」を選んだ理由とともに、キラーコンテンツ作りなどDXで見据える未来を、担当事業部の責任者らに聞いてきた。

団体旅行強化に向けて個人旅行をオンライン販売

農協観光は、JAを中心に地域に密着した旅行事業を展開している。JAグループの組合員約1000万人、役職員約20万人が主な顧客だ。農業の閑散期における組合員の旅行や地区内の親睦を兼ねたイベントや地域交流など、いわゆる団体の取り扱いが多い。

そんな農協観光がなぜ、個人旅行のオンライン販売を強化するのか。執行役員事業推進部部長の村松久司氏は、2つの目的があると話す。

1つは、主力の団体旅行の強化だ。団体旅行では、従来の職員旅行など縮小している分野はあるものの、村松氏は「組合員や役職員の需要は底堅く、まだ当社が取り切れていない部分がある」と説明する。そこで、個人旅行の販売はオンラインにシフトし、その分のマンパワーを団体旅行の営業に振り向ける。団体旅行の需要をしっかり取り込み、事業を底支えする戦略だ。

もう1つは、顧客層の拡大と地域への送客。JA関係以外からの需要を獲得するためには、オンライン上での商品展開や情報発信は欠かせないと考えている。

現在、農協観光は、JAグループ以外を対象とする事業として、「農福連携事業」と「地域共創事業」の2つの柱を展開している。農福連携事業は農業と福祉、それぞれの課題を解決しながら、新たな価値を創造する事業。地域共創事業は、農山漁村地域の交流人口や関係人口の創出を支援する事業で、食農イベントや地域資源の活用、教育旅行、インバウンドなどの事業が含まれる。いずれも、社会に貢献し、地域を活性化する事業だ。

農協観光 執行役員事業推進部部長の村松久司氏村松氏は「これまでは、組合員をお客様として旅行を提供してきた。今後は組合員と手を組み、地域の『食』と『農』の魅力を発信して、地域に農業体験や援農で旅行者を送り込む。グループの強みを生かしたキラーコンテンツを作り上げ、旅行者が来訪することで地域を活性化し、各組合員の副収入を生み出す。それが農家支援につながる」と話し、オンライン販売が担う新たな役割を強調する。

こうした「農」を軸とした特殊性の高い商品をオンラインで販売するためには、柔軟で拡張性の高い旅行システムが不可欠だった。そこで、農協観光がパートナーとして選んだシステムが、日鉄ソリューションズの旅行業務支援「TRIPHOO」だった。

農協観光が「TRIPHOO」を選んだ理由

TRIPHOOは、旅行会社の仕入・造成・販売・管理といったツアーの企画・販売に必要な一連の業務を網羅する、オールインワンのシステム。国内外のOTAや主要GDSとAPI連携をし、タイムリーな在庫・料金に自動で連携する。また、造成機能では、基本ツアーの登録内容に応じた派生型ツアーを自動で造成や更新をし、航空やホテルの仕入れ価格や集客状況に沿ったダイナミックプライシングに対応。予約客の情報と手配状況の確認、在庫状況や各種精算管理なども可能だ。

TRIPHOOとは、旅行会社のツアー企画・販売に必要となる一連の業務を管理・実行できるシステム

もともと農協観光は、旅行販売のシステムを従来のものから切り替える必要があった。ANAの旅客サービス系基幹システムの移行を受けて、同社もそれに対応可能なシステムにする必要があったからだ。

その際、同社商品の強みを発揮できるシステム導入を望んだ。2023年に販売サイト「e-たび日和」を立ち上げたが、当時のシステムでは販売商品は国内宿泊単品や現地発ツアーに限られていた。同社の強みである農業体験や生産者との交流、さらには(一社)全国農協観光協会による田舎暮らしや援農といった、JAグループならではのツアーやプランはオンライン上で販売することが難しく、従来型の対面販売を続けていた。

同社事業推進部リテール事業課課長代理の鈴木哲也氏は、TRIPHOOを採用した決め手として「当社が求める機能があらかじめパッケージ化され、他社システムや各種API連携など拡張性が高いシステム。地域の組合員との共創による商品も、TRIPHOOなら登録・販売できると思った」と説明した。

導入にあたり、日鉄ソリューションズは農協観光のビジョンにあわせ、「e-たび日和」の強化に向けた段階的な導入・拡張計画を提案。2024年3月からのフェーズ1では、月に2回の定例ミーティングを設けた。当時の業務プロセスを徹底的にヒアリングし、TRIPHOOがすぐにカバーできる点とできない点を洗い出して確認。農協観光のツアー造成を担う岡山にある商品企画センターにも足を運び、掲載可能な商品のすり合わせをした。

日鉄ソリューションズは、旅行会社出身の担当者が対応することから「旅行会社の悩みや、当社商品の特殊性に由来する課題にも理解があり、その解決を含めた提案をしてくれたのは大きかった」と、鈴木氏は振り返る。

農協観光 事業推進部リテール事業課課長代理の鈴木哲也氏

JAグループならではの独自性ある販売サイトへ

こうした経緯を経て、農協観光は2024年10月から、TRIPHOOを導入した新サイトを稼働した。掲載する宿泊施設数は、当初の約1000軒から現在では5000軒以上に大幅に増加した。大手OTAとの連携が可能になったことが大きく、将来的には1万軒の掲載を目指している。

さらに、地域と連携した農体験商品もオンライン販売の可能性を検討。今後はこうしたJAグループならではのユニークな商品も拡充していきたい考えだ。

また、それまでほぼ手作業だった在庫管理などのバックヤード業務もシステム上で可能になり、効率化を実現。TRIPHOOにはCMS(コンテンツ管理システム)も搭載されているため、それまで外部委託していた商品やキャンペーン等のページ作成も、内製化が可能になった。リアルタイムに手直しができるようになり「小回りが効き、即時に必要な情報を出せるのは大きな変化」と鈴木氏は話す。

フェーズ1を終え、村松氏は「これから本格的な販売強化を進めていく」と意欲を示す。

農協観光の個人旅行販売サイト「e-たび日和」。国内宿泊やツアーのほか、「農関連ツアー」も。今後は、フェーズ2として、2025年11月頃から航空会社とのシステム連携を開始する予定だ。宿泊や農体験商品の単品だけでなく、航空券も組み合わせた自社企画のパッケージツアー販売も進める。村松氏は「まずはJAグループの皆さんに使っていただくことが第一。アクセス数が増えることによって、商品の幅も広がっていくだろう」と話す。

「e-たび日和」の本格運用で、社内をはじめJAグループ内でオンライン販売への理解が進むことへの期待も大きい。主なターゲットとなる組合員や役職員の理解・周知に向けては、現場の営業力が大切になるからだ。「これまで地域でチラシを配り、対面で対応していた担当者が『オンライン販売ならLINEやX(旧Twitter)を連動させたらどうか』と考えるようになる。個々のDXの取り組みが、大きな変化をもたらす一歩だと思う」と鈴木氏も続ける。

旅行商品の販売だけではなく、農家の事業や暮らしに触れられるコンテンツも掲載とはいえ、村松氏は「課題はまだある。現在進行形で改善を進めている」と、さらなる向上に向けた意欲を見せる。現在も日鉄ソリューションズとは月1回のペースでコミュニケーションを続けているという。その伴走支援に対しては「運用するのは、我々人間。コミュニケーションが取れなければ、うまくいかない」と評価する。

「まずは、TRIPHOOを組み込んだ『e-たび日和』を軌道に乗せていく。そのうえで、他社との差別化を図った商品をオンライン上で販売していく」と村松氏。目指すのは、JAグループが掲げる「国消国産」(国民が必要とし、消費する食料は、できるだけその国で生産するという考え方)を観光の場でも体現し、地域活性化に貢献することだ。「そのオンリーワンの存在を追求していく」と村松氏は力を込めた。

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対応サービス:TRIPHOO

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記事:トラベルボイス企画部

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