高速バス「ウィラー」、供給減も過去最高益へ、ホテル高騰で「新幹線+ホテル」客を獲得、インバウンドも2割増

WILLER EXPRESS(ウィラーエクスプレス)は、2025年の高速バス事業について、2024年比で増収増益となり、過去最高益を見込んでいると発表した。このほど開催された記者説明会で代表取締役CEOの平山幸司氏は、要因に「物価高による夜行バスへのシフト」と「インバウンドの増加」をあげた。新規客の増加と、それによる客層の変化が単価上昇に寄与しているという。

一方で、2025年も乗務員不足が続き、販売座席数は減少。コロナ前の2019年比で22%減、2024年比でも6%減となった。ただし、平均乗車率は87.5%で、2019年(79.2%)、2024年(85.8%)を上回る高水準で推移。平均単価は5594円となり、2024年比5.0%増、2019年比15.4%増と大幅な伸びを示した。

快適性重視のカテゴリ整備とブランディングが奏功

好業績の背景にあるのは、客層の変化だ。主要客層である学生(18~23歳)が全体の39.8%に低下し、代わりに若手社会人(24歳~30歳・23.6%)、シニア(51歳以上・12.1%)が拡大した。特に、ホテル価格の高騰を背景に、これまで夜行バスを敬遠してきた可処分所得の高い客層の「新幹線+ホテル」を獲得しているという。

平山氏は、これらの客層が選ぶポイントは「快適性」といい、多様なシート仕様をそろえ、快適性を訴求してきた同社のバス車両が選ばれたと見ている。特にプライバシー性の高いシェル型シートの「ドーム」「リボーン」は、乗車率がほぼ100%の推移だという。“推し活での遠征”など、エンターテイメントなどの公演日程が確定する2カ月程度前に予約が入るケースが増え、学生の予約と競合することで客層のシフトが起きているとみている。

一方、インバウンドも拡大傾向。2025年は空港発着の路線を除いても、2024年比で約2割増となった。特に関東/関西線が顕著だ。同社は今後、日本の人口減少が見込まれる中、インバウンド需要の獲得にも注力する方針だ。

乗務員の採用に課題、大卒採用も開始

同社の乗務員の在籍数は、2025年10月時点で264名となり、2024年1月時点から10名増えた。採用活動が実を結んだ理由として平山氏は、未経験者向け教育施設「WILLER LABO」と運行管理システム「RootS」を備えたわかりやすい教育・サポート体制と、年収(600万円・新卒2年目目安)という明確なリターンがあることの2点をあげた。

同社では2024年から、乗務員の名称を「ハイウェイパイロット」(HWP)に変更した。名称変更は“運転士”のイメージ改善の目的もあるが、同社では運転技術だけではなく接客サービスも重視しており、差別化の意味もある。平山氏は「バス出発時に自ら『今日のハイウェイパイロットは〇〇です』と堂々と挨拶できるのは、それだけのサービスを提供する自負があるからこそ。最近はSNS上の乗客のコメントからも浸透していることを実感している」と説明した。

採用対象も拡大しており、2025年は2月に外国人、7月には高卒の求人も開始。9月には、中途採用者向けの教育課程「LABO EXPERT」を開始した。外国人HWPは、現在までに候補生7名が内定、4名に内々定を出した。高卒2名、大卒5名も内定済だ。今後は、HWPの純増30名(10%増)を目指すが、50代以上の自然減を考慮し、実質60名増が必要と見込んでいる。

一方で平山氏は、採用活動における制度的な課題にも言及した。外国人採用では、バス・タクシー乗務に必要な日本語能力試験(JLPT)「N3」の受験機会が半年に1回と少ない。そのため、受験機会が多く、基準の低いトラック業界へ人材が流れる傾向がある。平山氏は、検定手段の拡充など「制度変更が必要」と訴えた。

高卒採用では学校推薦が必要な地域が多く、地元企業との関係性が重要。また、求人情報もハローワークの紙の求人票が基本だ。「後発の当社は信頼を得るハードルが高い」といい、今後はSNSでの発信を強化する考えだ。

一方で、世界的に専門技術や能力を持ち、収入の高い“アドバンスド・エッセンシャルワーカー”が注目されている状況もある。同社は大卒のHWP採用を計画していなかったが、学生の意向を受けて採用を開いた。平山氏は「AI時代が来て、高度なスキルを持った労働が求められている。当社は、高度なエッセンシャルワーカーを教育する仕組みを有することをアピールしていく」と話した。

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