米運輸省は、「次世代航空モビリティ(AAM:Advanced Air Mobility)国家戦略」を打ち出した。これは、いわゆる空飛ぶクルマ(eVTOL)や自動操縦航空機などの革新的な技術を米国の空域に安全で効率的に運航するためのロードマップだ。今後、2026年〜2036年の10年間にわたるビジョンを策定したもので、州、自治体、産業界、学界と緊密に連携し、次世代航空モビリティ推進に取り組む。
AAMは、単一の技術やモビリティを指すものではなく、航空分野や新型機などを総称している。すべての米国国民に対して、機動力があり、手頃な価格で、かつ利用しやすい飛行手段を提供するとともに、インフラ整備、雇用創出、イノベーションを推進することを目的としている。
具体的な道筋としては、2027年までは既存の空港インフラを活用・改修しながら、現行の機体による実証実験および初期運用を開始する。また、自動化技術企業、部品メーカー、通信事業者など、米国を拠点とする完全なサプライチェーンの構築を促進する。
また、2030年までには、複数の都市部・農村部で、新たな航空運用を開始する。これには、空飛ぶクルマによる飛行が含まれる。また、AAMやドローンなどの無人航空機のための、効率的な低高度交通管理体制を確立する。
さらに2035年までは、労働力不足や過酷な環境によってこれまで飛行が制限されていた地域における「完全自律飛行」を含む高度な航空運用を実現する。
米運輸省は、2022年10月17日に「次世代航空交通調整・リーダーシップ法」が成立したことを受けて、AAMに関する課題を検討・調査するための「AAM省庁間ワーキンググループ」を設置。議論の結果として、AAMを推進するための推奨行動を概説したAAM国家戦略、それに付随する全体計画を作成した。AAMの仕組みを構築するために、戦略は主に6つの柱(空域、インフラ、セキュリティ、コミュニティの計画と関与、労働力、自動化)を中心に構成されている。
総合計画は4つのフェーズで展開
また、国家戦略を実行するために発表された総合計画では、「LIFT」と呼ばれる4つの柱が策定された。それぞれの柱と内容は以下のとおり。
- 「L (Leverage):既存プログラムを活用したイノベーション支援と運用」では、既存の航空規制の枠組み、プログラム、手順を活用した短期的な運用を開始する。
- 「I (Initiate):パートナーとの連携、研究開発、スマートプランニング」では、優秀な人材を集め、新たな航空エコシステム構築に向けて、政策、技術、地域計画戦略を特定する。
- 「F (Forge):公共のニーズに応える新たな政策とモデルの策定」では、AAMとその支援インフラの標準的な運用と開発に向けて、必要な監督体制、資金調達メカニズム、政策を確立する新たな規制、手順、公共プログラムを進める。
- 「T (Transform):航空エコシステムの変革」では、効率性の向上、安全性の維持・向上を進め、航空機、ドローン、スマート輸送システムとの統合を可能にするAAMの大規模な運用を可能にしていく。
発表された「次世代航空モビリティ(AAM:Advanced Air Mobility)国家戦略」は、以下から確認できる。
