通信大手KDDIが旅行事業を本格化、高級宿泊予約「Relux」子会社化の背景と今後の展開を聞いてきた

サービス開始から4年目。旅行系スタートアップのなかでも、順調に会員数や事業の幅を拡大してきた高級宿泊予約サイトRelux(リラックス)が通信事業会社大手のKDDIの連結子会社となる。KDDIは旅行事業を本格展開する構えだ。

大きな注目を集めたニュースだが、この動きについてKDDIで旅行領域を管轄するバリュー事業本部金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏は、「以前、航空会社や鉄道会社が旅客輸送に結び付けて旅行事業を始めていたことを考えれば、通信会社の参入は自然の流れ」と話す。

KDDIが旅行領域に参入する目的や今後のReluxの展開について、KDDIの勝木氏とReluxを運営するロコ・パートナーズCEOの篠塚孝哉氏に聞いてきた。

子会社化の背景は?旅行事業への大きな期待

勝木氏によると、旅行領域への取り組みは、KDDIが推進する「ライフデザイン戦略」に沿ったもの。端末や料金、ネットワークの同質化が進むなか、大手通信各社は通信以外の領域への展開を進めている。KDDIでは、その領域を生活分野とし、通信サービスの契約者3800万人の基盤を新たな「au経済圏」とし、その最大化を目指しているところだ。

ライフデザイン戦略の事業領域

電気や保険、ショッピングなどを事業化しているが、いずれも「ライフデザイン」として各分野の新たな体験価値を提案するサービスを特徴としている。今回のReluxの子会社化は、これらの事業と同じテーブルに旅行事業が加わることを示すもの。KDDIの旅行事業への期待は高い。

そして、旅行の領域では、旅の体験で大きなポジションを占める宿泊予約サービスを軸に置く考え。「顧客満足度の高いReluxで発信したい」(勝木氏)という思いがあった。

今回の子会社化の決め手は、「UX/UI、エンゲージメント、将来性をあわせ、旅の楽しみを提供できる最有力のOTA」との評価。何より、勝木氏は以前から同サイトを利用し、実体験を通してその魅力と施設の選択眼に信頼感を持っていたという。

一方の篠塚氏は「KDDIと組んだ方が、確実に面白い未来が描ける」と決断。篠塚氏は昨年2月にKDDIのコーポレートファンドから資金調達を受けた後、1年間の協業のなかで集客基盤の「ケタの違い」を実感していた。もともとは独立でIPOを志向していたが、「一緒に組むことでサービスを伸ばせる。業界にインパクトを与えられる」と確信したという。

Relux経由の予約拡大に注力、リアル店舗の展開も視野

KDDIバリュー事業本部金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏

では、KDDI傘下でReluxはどう展開していくのか。

勝木氏は「宿泊施設やユーザーの開拓計画や目標設定はできている」というが、その数値や時間軸は非公開。ただし、グローバルOTAが著しい成長を遂げるなか、Reluxも「非連続的な成長を目指す」考え。

まずはRelux経由の予約拡大に注力し、そのための手段となりうる可能性は検討する。例えば、DeNAトラベルによるauの会員向け旅行サービス「auトラベル」との相互連携も、その範囲だ。

また、KDDIのネットワーク活用という点では、全国8か所の直営店舗でリアルの接点を持つことも、「相談窓口」という形態を含めて検討する。すでに直営店では、ネット銀行「じぶん銀行」の普通・定期預金の契約締結仲介業務を実施。このほどその銀行代理業務を住宅ローンにも広げており、旅行でのリアルの展開も現実味を帯びている。

このほか、旅行事業の拡大において他の事業者との連携も視野に入る。勝木氏は「新しい旅の価値体験を作る共通理解があれば提携したい」との考えだ。さらに、地域活性・地方創生への取り組みへの関心も高い。これは、篠塚氏もロコ・パートナーズ創設時から目指していること。KDDIの傘下に入ったReluxには、OTAに留まらない可能性がスピード感をもって広がったといえるだろう。

インバウンドや民泊の取り組みも

ロコ・パートナーズCEOの篠塚孝哉氏

一方、インバウンドや他社との協業など、これまでReluxが推進してきた事業の拡大方針はどうなるか。

インバウンドについては、国内会員を基盤とする「au経済圏」でシナジーを生むのが難しい分野だ。しかし、篠塚氏はこれまで通り、引き続き注力する方針を強調。「すべてをKDDIのリソースに頼るのではなく、グローバル事業については単独でもやっていく」。もちろん、可能性があれば、KDDIの海外支店との協業も行なう考えだ。

勝木氏も「インバウンドは宿がなければ成立しない。グローバルOTAでも、国内の全領域の宿泊施設の在庫をとるのは難しいのではないか」と話す。満足度の高い施設を揃える高品質OTAとして、グローバルと戦えるプレイヤーに育てることも視野に入る。

また先ごろ発表した、中国民泊仲介の最大手「tujia(途家)」との業務提携にも変更はない。Reluxでは民泊ではすでに、古民家など旅館業法に則った施設を扱っており、新法の制定後はそれに則った形で展開する方針。篠塚氏は、価格や形態にとらわれない満足度の高い宿泊施設を提供していくReluxのコンセプトにブレはなく「民泊は法制化がされれば安心・安全が大前提となるので、宿の種類が増えると考えればシンプル。我々が厳選することで、民泊をポジティブに捉えられる」と見ている。

勝木氏も民泊について、「旅行の要素で最も重要な宿泊の部分に、新しい価値を提供できる。Reluxで宿と民家と旅行者を、新しい価値観でマッチングできる」と、新たな宿泊体験の創出に意欲的だ。

KDDI傘下入りで、Reluxの動きに注目が集まっているが、篠塚氏は「旅行体験の質を上げていくという思いは全くブレていない」と、今後も同社が目指す方針に何ら変わりがないことを強調。サービス開始4年目でのKDDI傘下入りを、「例えるなら、Reluxの序章のエグジット。第2章のスタート」という篠塚氏。再加速の糧を得た今後の展開に期待したい。

聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫

記事:山田紀子(旅行ジャーナリスト)

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