今年の国際会議「WIT Japan2017」の注目ポイントは? オンライン旅行で勝ち抜くテーマを深堀りして聞いてきた

テクノロジーの加速度的な進化は、旅行・観光産業にますます大きな影響を与えている。伝統的な旅行会社がオンライン旅行会社(OTA)事業を開始したり、ネット上のプラットフォームが個人宅や別荘を仲介する民泊が出現。旅行の価格比較の検索結果をわかりやすく表示して、メディア機能を果たしていたメタサーチも予約機能を持つようになった。

検索エンジンの「Google」やSNS「Facebook」も旅行分野に関心を高めており、さらなる競争激化が予想される。

最新テクノロジーを武器に、さまざまなプレイヤーが業種や旅行プロセスを超えて入り混じる「Funnel Revolution(ファネルレボリューション)」が起っているなか、各プレイヤーは競争を勝ち抜くために何をすべきか。「reimagine(再想像)」をテーマに、間もなく開催する今年の「WIT Japan2017」が示す世界の潮流とそれを読み解くヒントを、WIT Japan実行委員の責任者に聞いてきた。

 世界のオンライン旅行業界が“再想像”に向き合う時

「業界内の垣根がなくなっている今、変化をしなければこの競争に勝てない」と、オンライン旅行業界が直面する「ファネルレボリューション」を説明するのは、実行委員の柴田啓氏(ベンチャーリパブリック代表取締役社長CEO)。

「業界が混沌としている中でもう一度、想像力を豊かにして旅行を再考し直す必要がある。柔軟に立ち向かうことで、今まで思ってもみなかった新しい価値が見えるかもしれない」と、WITが今年のテーマ「reimagine」に込めた意味を説明する。

この現象を「ユーザーにとっては相当に利便性が高くなっている」と、消費者側の見方で解説するのは、もう一人の実行委員である浅生亜也氏。「事業の専門性より、ユーザーの行動に密着した考え方をしなければ、ついていけない時代になっている」と意識の転換を促す。

例えばホスピタリティ産業。民泊に対して、ホテルや旅館は阻止しようという動きになるが、「消費者からすれば当然のニーズ。この流れは直面せざるを得ない」と浅生氏。「(民泊に)排他的になるのではなく、ゼロから再想像して、新しい宿泊行動に対するサービス提供をする必要がある」と述べ、「こういう話がされるのもWITならでは」と強調する。

ただし、浅生氏は「昔からの普遍的な価値もあり続る。イノベーションを起こしていくマーケットとのバランスも求められると思う」と言及。柴田氏も「それも、再想像すべきポイントの一つ」と賛同。今年のWITでは、特に日本が誇りとする伝統と革新との調和をテーマにしたセッションも設けたのも、その表れだという。

本国シンガポールをはじめ、アジアを中心に欧州や米国など世界各地で開催しているWITでは、世界のトレンドに沿ってその年の共通テーマを決め、各開催地のマーケットを踏まえたプログラムを組む。つまり「再想像」は、世界のオンライン旅行業界が向き合うべきテーマとして全世界のWITで取り上げられている。

そこで、オンライン旅行業界のリーダーの言葉で最新動向や見解を聞き、自身のビジネスの新たな価値を見出していく。「再想像」は、世界のオンライン旅行業界のムーブメントでもあるという。

スタートアップが送り込む変化とトレンド

今年のプログラムで柴田氏が見どころの一つにあげるのが、初日の「ブートキャンプ」での「スタートアップピッチ(起業家プレゼンテーション)」。注目はエントリーの数とそのバリエーションだ。

今年のエントリー数は2016年の18社から大幅に拡大。世界10か国30社を超える見込みだ。国別ではアジア中心から、北米や英国、イスラエル、中南米など世界全域に広がった。これはWITが国際的メディアになったことに加え、「ビジネスの場のボーダレス化とビジネス展開のスピード化を示している」と柴田氏。また、「世界的な観光ブームでエコシステムがしっかりしている業界として認識され、参入者が増えた」ことも要因だと、浅生氏は加える。

さらに、発表するビジネスモデルの傾向に変化が見られるという。以前はBtoCの旅行企画や体験系のアプリが多かったが、BtoCは旅行分野の特化型が増え、BtoBのビジネスも増加。そして軒並み、AI(人工知能)やチャットボットなど、最新テクノロジーを使用したモデルが多いという。

また、若い世代の旅行が多い東南アジアのビジネスにはSNSの活用が多いなど、マーケット特性や対象市場の旅行志向も垣間見られるという。このなかから、当日のピッチに立てるのは、事前審査に通った10数社になる見込みで、半数以下に絞られる。どんなスタートアップが登場するか、今後の旅行トレンドを展望する意味も含めて注目したい。

トレンドを読むための注目のプログラム

2日目のメインカンファレンスのキックオフでは、LCCピーチ・アビエーションCEOの井上慎一氏のセッションも。「全日空(ANA)から日本初のLCCを興し、成功させた。まさに『再想像』の代表者」(浅生氏)が語るその経験は、再考を求められているオンライン旅行業界にとって重要なヒントになりそうだ。

また、日本政府観光局(JNTO)理事の吉田晶子氏も初登壇する。訪日旅行のプロモーションを担うJNTOがWITに登壇するのは初のこと。「デジタルマーケティングの責任者の話を直接聞くことは、オンライン旅行業界にとって重要なこと」(柴田氏)と強調する。

このほか、日本のオンライン旅行業界のリーダーや旅館のパネルなど、日本開催で人気のセッションは継続しつつ、「AIとチャットボット」「民泊」など、未来志向の新セッションも設定。

初日のブートキャンプでは日本で初となるコーチングセッションを設ける。専門のテーマごとに業界リーダーがコーチを担当する参加型の分科会だ。テーマは最終調整中だが、例えば他の開催地では組織作りや採用からマーケティング、ファンディング、ホテル直接予約といった実務的なテーマが用意され、議論が白熱する人気のセッションだという。

さらにブートキャンプでは、スタートアップピッチの過去の受賞者のプレゼンテーションを行なうのも新たな試み。アクティビティ予約のボヤジン(Voyagin)やクルックトラベル(Klook Travel)などが登壇する予定だ。めまぐるしく変化する業界のなかで、彼らがどのようにビジネスを成長させてきたのか。その創意工夫を学ぶ機会となる。

世界とどう向き合うべきか

WIT Japanの開催は今年で6回目。世界から見れば「ミステリアス」だった日本の市場は、世界的な日本観光ブームの追い風を受け、回を重ねるごとにポテンシャルの大きい市場だと認識されるようになった。海外のプレイヤーが続々と進出し、日本市場もその流れに順応。国内の業界絵図は大きく変わってきている。

「旅行分野ではWITが、その情報ハブの役割を担っていきたい」と柴田氏。オンライン旅行業界ではその変化に追いつくスピード感が重要だが、次の飛翔のために今こそ一息ついて再考する時だと、今年のWIT Japanは呼びかけている。

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