【年頭所感】観光庁長官 田端浩氏 ― 2020年は「総仕上げの年」、当たり前の受入環境整備と双方向交流の拡大へ

観光庁長官の田端浩氏が2020年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

田端長官は2020年、東京オリンピック開催と同時に訪日客4000万人の目標達成に向けた総仕上げの年と述べ、ストレスフリーで快適な旅行環境の実現に向けた「当たり前」の受入環境整備や、地方誘客と消費拡大など各種取組を推進することを強調。同時に、昨年10月に開催したG20初の観光大臣会合での「北海道倶知安観光大臣宣言」に基づき、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりに取り組む意志も示した。

また、アウトバウンドについては相互理解を深めていく外交政策の観点からも極めて重要とし、取り組みを強化。観光産業の基幹産業化では人材不足の解消が喫緊の課題とし、各種環境整備の推進とともに、初等中等教育における観光教育の促進にも言及している。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2020年 年頭所感

明けましておめでとうございます。

2020年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、まず、9月から11月にかけ、アジア地域で初のホスト国として、我が国においてラグビーワールドカップ2019日本大会が開催されました。大会期間中は、欧米豪諸国を中心に海外から多くの観戦客が試合会場となった全国各地を訪問し、多くの地域住民との間に交流が生まれました。観戦客の皆様が日本の良い印象をSNSなどで発信していただけていることはとても喜ばしいことであり、この良い流れを繋げて行きたいと思います。

また、10月には30の国や国際機関等の参加の下、G20の正式な関係大臣会合として初の観光大臣会合を北海道倶知安町において開催しました。本会合でとりまとめた「北海道倶知安観光大臣宣言」に基づき、各国と知見を共有しつつ、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりに取り組んで参ります。

他方、昨年は、6月の山形県沖地震、9月の台風15号、10月の台風19号の上陸など大規模な災害が相次ぎ、各観光地にも深刻な影響を及ぼしました。これらの災害に対し、旅行・宿泊料金の割引等の支援や需要回復プロモーション等、観光需要の喚起に向けた取組を引き続き進めて参ります。

国際観光に目を向けますと、2018年において訪日外国人旅行者数が3119万人に達し、初めて3000万人の大台に乗りました。昨年は災害の発生や日韓関係の悪化等の事情により対前年同月比でマイナスとなった時期もありましたが、1月から11月までの累計で2936万人となり対前年同期比2.8%増となり、過去最高で推移しております。

さて、本年はいよいよ、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催年であると同時に、2020年訪日外国人旅行者数4000万人等の目標達成に向けた総仕上げの1年となります。これまでの大規模イベントの開催経験も踏まえながら、より多くの国の方々に、日本各地へ足を運んでいただけるようけるよう、各種取組を進めて参ります。

具体的には、まず、ストレスフリーで快適な旅行環境の実現に向け、「当たり前」の受入環境整備を一層進めて参ります。訪日外国人旅行者の旅行動態の変化に対応しつつ、観光地・公共交通機関での多言語対応や無料Wi-Fiの整備はもちろんのこと、訪日外国人旅行者にとってわかりやすく魅力的な多言語解説の充実等についても迅速に進めて参ります。

また、地方への誘客促進や消費機会を拡大させていくためには、訪日外国人旅行者の満足度を向上させる新たな体験型観光コンテンツを開拓・育成していくことが重要です。そのため、国際競争力の高いスノーリゾートリゾートを形成する取組を全国10ヶ所程度で進めて進めて参ります。加えて、地域の眠れる観光資源を夜間・早朝も楽しめるようにする環境整備、全国各地の城や寺を宿泊施設として活用した「城泊・寺泊」、体験型観光コンテンツ等の魅力を発信できる通訳ガイドの育成・強化といった取組等についても進めて参ります。

さらに、これらの取組を現場で実行していく「観光地域づくり法人」の育成も喫緊の課題です。経営感覚をもったトップ人材を確保し、観光庁が緊密にアドバイスして、質の高い「観光地域づくり法人」を育成して参ります。

インバウンド拡大に向けては、東アジアや欧米豪地域からの取込を強化するべく、オリパラの機会を着実にインバウンド拡大に繋げるための戦略的なプロモーション、さらに重点市場のほか新たな市場に対してもプロモーションの強化を図って参ります。

また、訪日数とともにその消費額の増加も訪日数とともにその消費額の増加も図るべく、MICE誘致、特にインセンティブ旅行の誘致促進や、「ブレジャー」と言われる、ビジネス客による観光の促進等を推進してまいります。

アウトバウンドについては、諸外国との双方向の交流拡大を通じて相互理解を深めていくという我が国の外交政策の観点からも極めて重要であり、昨年1月から11月までの出国日本人数は対前年同期比6.0%増の1836.8万人と好調に推移しています。

昨年1月には、若者のアウトバウンドを促進するため、「若者のアウトバウンド推進実行会議」を立ち上げ、海外渡航経験がない20歳の若者に海外体験を無料で提供する「ハタチの一歩~20歳 初めての海外体験プロジェクト~」に取り組んでいるところです。

本年は、こうした取組に加え、海外修学旅行等を通じた青少年交流のより一層の拡大に向け、本年1月を目途に官民連携の協議会を設置し、様々な施策を展開して参ります。今後も日本の若者に海外体験の機会を様々な形で提供できるよう、こうした官民一体となった取組を積極的に推進して参ります。

また、近年、双方向の観光交流拡大の流れをとらえ、直行便就航都市及び運行便数も拡大しています。観光庁としても、この機運を捉えて旅行業界等と連携しつつ、新たなディスティネーションに向けた旅行を促進するなど、各国との交流の更なる拡大を図りたいと考えております。

観光産業の基幹産業化に向けては、深刻化する人材不足を解消することが喫緊の課題です。観光庁では、女性・高齢者や就職氷河期世代の方々なども活躍できる環境を整備するとともに、中核人材育成のため、観光産業従事者を対象としたプログラム実施のほか、生産性向上が一層効率的かつ効果的に推進されるよう支援して参ります。また、各省庁や団体と連携し、初等中等教育における観光教育を促進して参ります。

さらに、昨年4月に新たな在留資格である「特定技能」が創設され、宿泊業においても国内外において技能測定試験を実施し、外国人材の受入れを進めています。本年も技能実習2号への職種追加も含め、引き続き宿泊業における外国人材受入れのための環境整備を進めて参ります。

民泊については、昨年のラグビーワールドカップ2019日本大会や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会などの大規模イベントを控え、イベント民泊をこれまで以上に有効に活用していただけるよう、イベント民泊ガイドラインを改訂しました。違法民泊の排除、届出のためのシステムの利便性の改善など引き続き関係省庁や関係自治体と連携して、健全な民泊の普及に努めて参ります。

観光庁といたしましては、以上のような数多くの重要な施策について、昨年1月から徴収が開始された国際観光旅客税の税収も活用しながら、観光先進国の実現に向けて、政府一丸、官民一体となって取り組んで参ります。

観光関係の皆様、国民の皆様におかれましては、今後とも観光政策にご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げて新年のご挨拶とさせていただきます。

観光庁長官 田端浩

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