米国テック見本市「CES2020」、今年の注目された9つのポイントを整理した

米国ラスベガスで2020年1月7~10日に、世界最大のエレクトロニクス技術見本市「CES2020」が開催された。今年は4400社が出展し、2万件以上の最新テクノロジーを披露。総面積290万平方フィートの会場に約17万人の来場者が訪れた。グローバル大手テック企業から新興スタートアップまで、出展各社から提案されたイノベーションにより、2020年も世界にさらなる変革の波が広がっていくことは確実だ。

日本からはアメリカン航空がラスベガス直行便を期間限定で運航するなど日本企業の参加熱も高く、トヨタから豊田章男社長が登壇して街づくりを語ったことなどが話題となった。今年の特徴としてあげられるのがトラベル系の話題が豊富になったことだ。基調講演では、デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)が、航空会社から初めての登壇者として登壇。また、未来の交通サービスも注目のテーマとなった。

AP通信によると「CES2020は、世界中の主要産業をつなぎ、インスパイアする場。ここに登場したイノベーションが新しい産業の在り方を創り出し、雇用を生み、世界経済を動かし、人々の暮らしを向上させる」と、同イベントを主催するCTA(消費者テクノロジー協会)代表兼CEOのギャリー・シャピロ氏はコメントした。

またCESのエグゼクティブ・バイスプレジデント、カレン・チャプカ氏は「CESに参加して実感するのは、どの企業もテック・カンパニーであるということ。グローバル・テクノロジー企業と、非・技術系と見なされてきた企業が融合し、あらゆるマーケットにおいて、イノベーションがビジネスを発展させていることが分かる。10年先の未来が見えてくる」と話した。

CES2020では、ビジネスモデルやマーケットの進化を促す革新的な技術が多数、披露されている。今年の主な注目ポイントは以下の通り。

人工知能(AI)

AIは2020年のCESにおける全展示を通じて最も重要な「素材」となり、今後10年間を左右するカギとなりそうだ。会場では、Brunswick、Doosan、John Deere、京セラ(Kyocera)など多くの企業が、最新のAIソリューションを披露した。

5Gとモバイル・コネクティビティ

コネクティビティ、交通、拡張・仮想現実(AR・VR)、ヘルス関連など、5Gを取り巻くエコシステムを担う各社が勢ぞろい。Verizon、Sprint、AT&T、Nokiaなどの通信系企業は、5Gのスピードや安定感、効率の高さをアピールするデモをおこなった。

新しい産業界からの参加

CES常連のテック企業とは違う、新しい分野からの参加企業が目立ったことも今回の特徴だった。デルタ航空、Bell、ロレアル、NBC Universal、プロクター&ギャンブルなどが革新的な技術をお披露目する場としてCESを活用。人工の豚肉を扱うフード系のImpossible Food、AIやロボティクス関連ではJohn Deereなどが注目された。

健康に役立つ技術

進化したデジタル技術が、人間の抱えるリアルな問題、例えば麻薬中毒やメンタル・慢性疾患などの解決に役立つ、というのも今回のCESの主要テーマとなった。健康を支えるデジタル治療法やウェアラブル機器、リモートでの患者ケアなど、デジタル・ヘルスへの関心の高まりを反映し、HumetrixやInBodyが参加。今年は「ヘルス&ウェルネス」カテゴリーで出展数が前年比25%増の135社となった。同様に出展規模が拡大しているのがスマートシティ関連の技術で、今年は米国運輸省、日立、シーメンスなどが参加。展示スペースは前年比で約25%拡大した。

また今回は、CES主催団体であるCTA(消費者テクノロジー協会)が世界銀行とパートナーシップを組み、「グローバル・テック・チャレンジ」を開催。健康やジェンダー格差とテクノロジーをテーマに、より良い社会実現するためのソリューションを呼び掛けた。

スタートアップの祭典「ユーレカ・パーク」

CESといえば、世界最大のスタートアップ向けイベント「ユーレカ・パーク」も目玉の一つ。「ベンチャー企業が資金や支援を獲得するチャンスの高さでも知られている」とID8イノベーションの共同創業者で、CTA取締役会メンバーでもあるマーラ・ルイス氏。

今年の同イベントでは、Oval Homeが室内の温度、明るさ、湿度、動きなどを感知、分析するスマートセンサー技術を提案。そのほかヨガに役立つモーション・キャプチャー技術のYoganotch、在宅看護などの支援技術を提供するCaregiver Smart Solutionsなど、世界46カ国から1200社のスタートアップが参加し、投資家や大手企業向けにイノベーションを提案した。

ダイバーシティとインクルージョン(D&I)

CES2020では「すべての人のためのイノベーション(Innovation for All)」と題した会合を開催、Bosch、HP、ウォールマートの各社からダイバーシティ担当責任者が登壇し、D&Iへの投資がもたらす効果や取り組み方について紹介した。

トラベル&ツーリズム

今回は、デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)が、航空会社からは初の登壇者として基調講演を担当。同社の最新アプリ「フライ・デルタ」を活用したデジタル・コンシェルジュ、バイオメトリクス認証でのセキュリティ、パラレル・リアリティを活用した航空サービスのカスタマイズなどの戦略について話した。

交通テクノロジー

未来の交通サービスも注目のテーマとなった。自動車メーカーの世界大手が9社そろい、アウディ、BMW、ダイムラー(メルセデス)、FCA、フォード、ホンダ、現代、日産、トヨタが参加したほか、車両テクノロジー関連企業も150社以上、出展。コンセプトカーや自動運転車両を披露した。

Cスペース

コンテンツ・クリエイター、ハリウッドや音楽業界、広告、メディアなど、マーケティングやエンターテイメント関連では、60社超が出展し、ストリーミング・サービスなど未来の方向性が模索される場となった。出展企業は、AT&T Services、Comcast、グーグル、HP、 Hulu、iHeart、NBC Universal、Pandora、Reddit、Roku、SiriuXM、Snap、Twitch、Turner、Univision、WWEなど。

なお、2021年のCESは、同じくラスベガスで1月6~9日の日程で開催される予定だ。

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