旅行系サイトのデータでみる「コロナ危機」、欧米の旅行需要は3月下旬から急下降、オンライン会議は急増【外電】

オンライン旅行会社(OTA)、旅行比較サイト(メタサーチ)、航空会社やホテルなど、旅行予約系サイトへのトラフィック数(サイトへの合計訪問数(のべ) )を分析した結果、新型コロナウイルス危機で世界的に旅行需要が激減している状況が鮮明となった。

ウェブサイトのアクセス解析を行うシミラーウェブのデータをもとに、CFA協会認定証券アナリストのジェレミー・スコット氏が分析した白書「米国における新型コロナウイルスの影響(2020年3月23日付)」では、まだコロナ危機の影響がほとんどなかった今年1月と、2~3月の状況を比較。短期間でマーケット状況がどのように悪化していったか分析している。

シミラーウェブのトラフィック分析は、同社独自の技術で計測した傾向値。 各グラフからは、3月下旬に入り、世界中でOTAやメタサーチ、航空会社、ホテルなどへの需要減がさらに深刻化している様子が浮き彫りになる一方、米国では、食料日用品デリバリーやウェブ会議のサイトへのトラフィック数が急増していることが分かった。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

同白書によると、旅行関連ウェブサイトへのトラフィック数の推移が大きくマイナス傾向に転じる最初のタイミングとなったのは、それぞれの国・地域内で感染者数が「20人に達した」時点と分析。以下のグラフでは、欧米豪および香港の主要7カ国・地域の感染者数平均が20例に達したところを点線で示しているが、ここからトラフィック数の減少率が一段と悪化していることが伺える。なお、同様に感染者が100人、4000人を超えるタイミングで、トラフィック減少率がさらに悪化しているとも指摘している。

以下、棒グラフは7カ国平均の感染者数、折れ線グラフは同平均のオンライン旅行プラットフォームへのトラフィック数減少率(%)を示している。

コロナ感染者数と旅行プラットフォーム(OTA、メタサーチ等)へのトラフィック減少率
(米、英、独、仏、伊、豪、香港の7カ国・地域の平均値)

また同7カ国・地域で感染者がそれぞれ20人を超えたタイミングをゼロとし、その後の経過日数と、旅行サプライヤー各社(航空、ホテル、レンタカーなど)サイトへのトラフィック数の前年比増減率も算出(後述)。世界各国のコロナ危機にまだ改善の兆しは見えないが、唯一、香港では感染拡大の沈静化を示唆する動きもある。

米国マーケットでのトラフィック推移

シミラーウェブが米国マーケットの推移をまとめたグラフからは、企業による渡航や集会の禁止が広まるのに呼応して、トラベル系サイトのトラフィック数では、週を追うごとに減少幅が拡大している様子がうかがえる。これとは対照的に、ウェブ会議や食料雑貨品のデリバリー事業には、追い風も吹いている。

では、OTA、サプライヤー、宿泊サービスなど、業種カテゴリー別に、詳細を見てみよう。以下のグラフは、2019年12月~2020年3月、米国におけるデスクトップおよびモバイル経由での各ウェブサイトやプラットフォームへのトラフィック数について、短期間の変動幅をブランド単位で表したもの。増減率は、今年2~3月の各期間については、欧米市場でまだコロナ危機の影響が出ていなかった今年1月と比較した数字としている。

1. オンライン旅行プラットフォーム

OTAやメタサーチ各社は、いずれも大打撃を受けている。具体的には、プラットフォーム各社の対1月比のトラフィック減少率は、3月15~21日の一週間で55~75%減。前週と比べても減少率が2倍に悪化している。2月下旬の時点では5~25%減だった。

3月初旬は、まだ一部でバーゲン狙い需要や、海外旅行を近場にプラン変更する人の利用があったものの、同下旬になり、米都市部でロックダウンが始まると、マイナス幅は拡大したことがわかる。感染者の増加と航空座席の供給減が続くなか、今後も下落が続くのは必至だ。

米系旅行プラットフォーム各社へのトラフィック数推移 (1月vs12月、2月vs1月、3月1~21日vs1月、3月15~21日vs1月)

2. 主要航空会社

航空便の利用は世界的に減少中だが、3月前半、航空各社の直版ウェブサイトへのトラフィック数は一時、急増していた。これは払い戻しや旅行のキャンセル手続きをする利用者が、直販サイトに殺到したためと思われる。またフライト運航状況を確認する人、渡航制限が続々と発出されるなかで最新情報やコロナ対策のアドバイスを求めてアクセスする人が増えていた。

しかしその後、トラフィック数は一気に減少に転じている。航空会社とホテルは、企業による出張禁止、会議や大型イベント中止が続き、さらに厳しい状況に追い込まれているが、催事キャンセルは、今後8~12週間は続く見込みだ。

米系航空各社のウェブサイトへのトラフィック数推移 

3. ホテル、民泊

ヒルトン、マリオット、ハイアットなど大手ホテルチェーンおよび民泊を扱うエアビーアンドビー、ヴァーボのウェブサイトへのトラフィック数は、航空会社とほぼ同じ動きとなっているが、民泊系では減少幅がやや小さい。3月15~21日の一週間では、各社合計のトラフィック数のマイナス幅は50%超だった。

ホテルチェーンおよび宿泊プラットフォームへのトラフィック数推移 

4. イベント&エンターテイメント

3月後半にトラフィック数が最も急激に下降したのがイベント&エンターテイメント系のプラットフォーム各社だ。イベント系プラットフォーム合計でのトラフィック数の減少幅は、3月15~21日の一週間で75%まで拡大している。

旅行の場合、少数ながら「リスクをとる」人もいるが、イベント市場にこうした需要はない。米主要都市では、一定以上の規模のイベントは開催が規制されており、対象期間を5月末までとしている自治体もある(例:テキサス州オースティン)。

イベント&エンターテイメント・プラットフォームへのトラフィック数推移 

ウェブ会議と食料雑貨デリバリーの急伸

一方、コロナ危機によって、アクセス数が急増している業種もある。米国では、企業によるテレワーク推奨に伴い、zoom、meet.google、bluejeansなどウェブ会議プラットフォームへのトラフィック数が、3月後半に入り、過去にない勢いで伸びている。シミラーウェブのデータによると、各社合計での伸び率は、3月第3週には600%増。なかでも無料利用できる制限時間を延長したズームは、900%増以上と突出している。グーグル・ハングアウトでも、有料利用者向け機能を7月1日まで無料公開する方針を打ち出した。

主要ウェブ会議プラットフォームへのトラフィック数推移 

同様に、食料雑貨品デリバリーのサイト(sameday.costco、freshdirect、peapodなど)も3月に入って利用が急増しており、3月第3週目では325%増、1月の3倍超となった。なかでもコストコの同日デリバリーの伸びが目立つ。これに対し、宅配ピザや飲食店からのフードデリバリー・プラットフォームへのトラフィック数の増減は、まだら模様を呈している。小規模レストランを取り巻く経営環境が非常に厳しいこと、オンライン注文ではなく、近所の店に出かけてテイクアウトする人も多いことから、全般的な増加傾向には至らない可能性も指摘している。

同白書では「コロナ危機のような“一生に一度”の大事件は、パラダイムシフトを促し、人々の消費パターンを大きく変える。すでに過去10年ほど見え隠れしていたトレンドが、一気に拡大する契機になるだろう」と予測している。

国別での推移

最後に、日本を含む世界の国・地域別の動向について、オンライン旅行プラットフォーム、および航空会社やホテルなどサプライヤー直販サイトへのトラフィック増減率をまとめた。

コロナウイルス感染拡大の時期は地域によって差があるため、感染者数が20人を超えた日をゼロ地点とし(例:米国は2月22日、英国は3月1日、香港は2月4日など)、以降の経過日数と、地域別のトラフィック数の増減率を比較している。対象地域は米、英、独、仏、伊、豪、香港、日本、ブラジル。

国・地域別のオンライン旅行プラットフォームへのトラフィック推移 

国・地域別の旅行サプライヤー直販サイトへのトラフィック推移 

なお、日本市場については、3月までは旅行プラットフォームとサプライヤー直販サイトのどちらもトラフィック数の減少幅が比較的ゆるやかに推移している。しかし感染者数の増加に伴い、今後、マイナス幅がさらに悪化する可能性も高いとしている。

なお、サプライヤー直販サイトへのアクセス数は、各地域とも一時的に増加したが、これは米国市場の場合と同様、予定していた旅行のキャンセル増によるもの。特に航空会社サイトについては、各国政府が発出している渡航制限の確認や、旅行の際の注意事項など、情報ソースとしてのニーズが大きいと分析している。

最も激しく落ち込んでいるのがイベント関連プラットフォームへのアクセス数で、地域別ではドイツ、フランス、イタリア、米国で60~80%減とマイナス幅が大きかった。

国・地域別のイベント・プラットフォームへのトラフィック推移

地域別に大きく傾向が分かれたのは、eコマースサイトへのトラフィック数の増減だ。米国ではコロナ危機が続くなか、増加傾向が鮮明になっている一方、EUやアジアでは横ばいやマイナス傾向だった。この点について、同白書では、米国ではコロナ危機以前から、日用品の購入でネット利用が浸透していたことが一因としている。また前例のない状況下で、今はまだ消費者の混乱が続いているものの、今後、時間の経過とともに、新たな現実に即した暮らし方へのシフトが進むのではないかと分析している。

国・地域別のeコマース・プラットフォームへのトラフィック推移

シミラーウェブ資料「米国における新型コロナウイルスの影響(2020年3月23日付)」

※シミラーウェブの資料上の「トラフィック」とは、分析対象となったドメインに対するすべてのセッション合計数であり、「サイトへの合計訪問数(のべ)」を示している。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Tracking declines in online travel web traffic as restrictions hit across the globe

著者:Linda Fox氏

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