観光庁の2021年度予算を閣議決定、総額にすると前年比1.6倍、ワーケーションやDX推進を新規予算化

政府は2021年12月21日、2021年度(令和3年度)の観光庁関連予算案について、前年度から4割減となる408億7400万円で閣議決定した。

このうち、国際観光旅客税(いわゆる出国税)財源としての充当額は、新型コロナウイルス感染拡大に伴うインバウンドの激減で49%減の260億6500万円と大幅に減少。一方で、東北復興枠30億円、GoToトラベル事業を除く2020年度(令和2年度)第3次補正予算649億9100万円を加えると、総予算額は対前年度1.55倍の1061億6500万円に上った。このほか、GoToトラベル事業の2020年度第3次補正予算として1兆311億1400万円を計上している。

政府は12月3日発表した「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」で、GoToトラベル事業延長、ワーケーションなどを普及させながら国内観光の需要を喚起しつつ、国内外の感染状況を見極めたうえでインバウンドの段階的復活に向けた取り組みを推進すると明言。こうした方針を受け、閣議決定された予算でも観光再生に向け、「新たな旅のスタイル」促進事業、宿泊施設を核とした地域における新たな観光ビジネス展開支援、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出の3点を新規予算化した。

「新たな旅のスタイル」促進事業:5億400万円(新規)

具体的な新規予算については、「新たな旅のスタイル」促進事業として5億400万円を計上。コロナ禍で顕在した、テレワークを活用しリゾート・温泉地で余暇を楽しみつつ仕事を行う「ワーケーション」、出張機会を利用して余暇も楽しむ「プレジャー」、企業・団体の本拠から離れたところに設置する「サテライトオフィス」の需要に対応した環境整備、普及啓発、旅行商品の造成支援を図る。

このほか、ワーケーションの活性化にもつながる宿泊施設を核とした地域の新ビジネス展開の支援で1億円を計上した。

DX推進による観光サービスの変革と観光需要の創出:8億円(新規)

また、コロナ禍の観光再生を左右するキーワードとして声高に叫ばれているのが、DXである。デジタル技術の複合的な活用によって、オンラインを活用した来訪意欲の増進、観光体験、地域観光の変革を進めるため、イノベーションを起こすことが可能な企業、地方公共団体、DMOからなるコンソーシアムを募集し、国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの造成を目指す。

受入観光整備やインバウンドの段階的復活:208億2100万円

もっとも、新型コロナウイルスの影響でほぼ消滅状態となっているインバウンドについては、「受入観光整備やインバウンドの段階的復活」の予算額が対前年度比で51%減にあたる208億2100万円、「国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツ」が25%減の177億7200万円に減少した。

コロナ感染の見通しが立たないなか、観光庁は「感染状況が落ち着いている国・地域から、ビジネストラックに準じた防疫措置を徹底のうえ、管理された小規模分散型パッケージツアーを試行的に実施する段階」と言及。訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業として、すでに2020年度(令和2年度)補正予算として50億円を計上しており、密を避けたポストコロナにふさわしい観光メニュー発掘も講じる。

戦略的な訪日プロモーションの実施:73億7000万円

今後の戦略的な訪日プロモーションの実施については、コロナの収束を見極めつつ、2030年訪日外国人旅行者6000万人の目標を堅持。日本政府観光局(JNTO)運営費交付金として73億7000万円を充て、JNTOのウェブサイト、アプリを通じた安心・安全情報の発信、コロナ後に向けたアジア10市場のリピーター層に対するキャンペーン、既存プロモーションのさらなる強化を図る。

GoToトラベル事業の延長:1兆311億円

2020年度(令和2年度)第3次補正予算案として、GoToトラベル事業の延長に伴って計上された1兆311億円については、2021年6月末までを基本想定としつつ、感染状況を踏まえ柔軟に運用。国内旅行需要の本格的な回復につなげるため、中小事業者や被災地など、観光需要の回復が遅れている事業者・地域への配分に配慮し、平日への旅行需要分散化を講じるとした。

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