デジタル健康証明アプリ「コモンパス」CEOが語る、世界で普及するためのカギ、必要なのは「信頼性」と「汎用性」

デジタル健康証明アプリ「コモンパス」には、まださまざまな課題がある。現在数カ国と協力しているにも関わらず、デジタル健康パスポートとして機能しているのはカリブ海のオランダ領アルバだけだ。

コモンパスは、米ロックフェラー財団が資金提供し世界経済フォーラムと非営利団体のコモンズ・プロジェクト基金(Commons Project Foundation) が中心となり、37カ国の民間企業が参加して開発されたデジタル健康証明。旅行者の新型コロナウイルス検査結果を保存・認証するアプリで、出入国の際に目的地の入国要件に見合うものなのかを確認することが可能になるもの。世界各地で実証が始まっているが、日本発着の国際線でも実証実験が予定されている。

コモンパスの普及を進めているコモンズ・プロジェクト基金は、各国政府に対して、これは旅行だけのものではなく、広く市民の健康を守るものだと訴えている。

コモンズ・プロジェクト基金は2021年3月17日に、アルバ政府と新型コロナウイルス検査企業のVault社およびXpresCheck社と協力して、コモンパス・プラットフォームを立ち上げ、ボストン発アルバ行きのジェットブルー航空の乗客に使ってもらう取り組みを始めた。

コモンズ・プロジェクト基金CEOのポール・メイヤー氏は「これは重要なマイルストーンだ」と自信を示し、「これは商品としてのローンチで、試作品はない。検査結果と航空会社を結びつけるシステムというだけでなく、アルバの入国管理システムにも統合されるものだ」と話す。

今回、APIが初めて連携される。これにより、政府、航空会社、その他の関係組織がこのシステムをスケールアップすることが可能になる。

メイヤー氏は「空港に到着後、コモンパスを通じて、健康検査で求められる要件が証明できるため、コモンパス保持者はファストレーンで通過することが可能。それだけ早くビーチに向かうことができるということだ」と続けた。

信頼のネットワーク

最初のトライアルから時間が経っている。コモンズ・プロジェクト基金は非営利団体としてロックフェラー財団によって設立されたが、メイヤー氏は「各国政府に対して、市民の健康データは安全であることを納得させる必要がある」と指摘する。

コモンパスをはじめとするデジタルパスポートは、検査結果やワクチン接種歴を保管することができるが、それは旅行のためだけでなく、ホテル、レストラン、コンサートなどの市民生活の再開にも必要なことだ。

コモンズ・プロジェクト基金は、世界経済フォーラムとともに、官民の関係者による自主的な枠組み「コモン・トラスト・ネットワーク」を立ち上げた。メイヤー氏は「言い換えれば、その組織は仲介者のようなものだ。大手テクノロジー会社に今にも飲み込まれそうなスタートアップではない」と冗談めかして説明する。

「データ利用の標準化に積極的な医療機関と信頼のエコシステムを作り上げていく。もちろん、各国政府の参加も歓迎だ」とメイヤー氏は言う。

点と点を結ぶ

アルバは昨年12月に世界ではじめてコモンパスの採用を決めたが、他にもこのプロジェクトに関わっている国はある。二国間の取り組みよりむしろ、東アフリカ6カ国連合など隣国グループとの話し合いを進めている。

メイヤー氏は「東アフリカ6カ国は、我々が最初に協力したグループ国のひとつ。この6カ国はもともと信頼関係があり、積極的にコモン・トラスト・ネットワークに参加してもらっている」と明かす。

一方、欧州連合は、国際線乗客向けに、ワクチン接種、検査結果、感染からの回復状態などの情報をまとめた「グリーン・デジタル証明」という独自の仕組みを構築しようとしている。

「欧州連合はワクチン証明を医療目的に開発すると聞いていたので、当初は歓迎していた」という。

また、コモンズ・プロジェクト基金は、英国政府のほか、今夏のオリンピックに向けて準備を進める日本とも以前から取り組みを進めてきた。さらに、最近ではアマデウスのシステムとも統合されることも発表された。キャセイパシフィック航空は3月15日に香港/ロサンゼルス線でのコモンパスの実証を行った。機運は明らかに高まっている。

しかし、メイヤー氏は、同じくコモンズ・プロジェクト基金が共同議長を務める「Vaccination Credential Initiative」が開発した「スマート・ヘルス・カード」を米大手スーパーのウォルマートが導入することも明らかにした。

航空会社の登録だけでなく、さまざまな業種を統合するとなると、さらにあと何年もかかってしまう。各国政府は、採用を決める前に、そのことも覚えておいたほうがいいだろう。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Why Digital Health Passports Still Need to Gain More Trust

著者:マシュー・パーソンズ(Matthew Parsons)

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