サステナブルツーリズム2022、最新レポート発表、持続可能な観光の「基礎」から「海外の先進事例」まで ―トラベルボイスREPORT

これまでのツーリズムは長らく、効率化による経済性を重視した取り組みが中心だった。しかし、近年は「サステナブル(持続可能な)」という概念が頻繁に使われるようになり、SDGs、すなわち持続的な開発目標を経営計画に盛り込む事業者も増えている。しかしながら、サステナブルツーリズムとは何か。あらためて問われると、説明できない人も少なからずいるのではないか。

トラベルボイスでは、サステナブルツーリズムが生まれるに至った背景から「エコ」で終わらない取り組み、価値観、海外の先進事例を探った調査レポート「サステナブルツーリズム2022」を発表した。その概略をレポートする。

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観光の負の影響や課題が顕在化

サステナブル(Sustainable)とは、「持続可能な」という意味の言葉。1970年代以降、ジャンボジェットの登場やアジア諸国の所得向上、安価な旅行手段の登場などにより国際的な観光産業は急成長した。一方で、観光によって受け入れ側である地域や自然環境、文化などに負の影響も生じてきた。

こうした状況を受け、国際観光機関(UNWTO)は2004年、持続可能な観光の定義を「旅行者、観光関連産業、自然環境、地域社会の需要を満たしつつ、経済面・社会面・環境面の影響も十分考慮に入れた観光」と定義。そのための必要要件として、ステークホルダーの参画、強い政治的リーダーシップ、観光の影響をモニタリングする継続的な取り組みを挙げた。

産業、国単位だけでなく、地球単位で世界中の人たちが立ち上がるために、2015年の国連サミットで採択されたのが「SDGs」だ。「Sustainable Development Goals」の略で、環境問題、貧困や飢餓、経済成長、ジェンダーなど現代社会の課題が網羅されており、17の目標を2016年から2030年までの15年間に達成することが目標。このうち目標8「働きがいも、経済成長も」、目標12「つくる責任、使う責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」が、観光が明記されているテーマとなっている。

国際機関などにおけるサステナブルツーリズム指標の系譜(レポート本文より抜粋)

日本が抱える特殊事情とは

実際、日本でもコロナ禍前はトイレの不適切な利用、交通渋滞、宿泊施設の不足などが観光に起因する課題として認識されるようになっていた。2020年6月に策定された「日本版持続可能な観光ガイドライン」は、日本における特殊事情を踏まえた項目も追加されている。各地で多発する自然災害に対する危機管理や感染症対策、文化的建造物の維持・管理、混雑に対する対応といった内容だ。また、設定した指標に基づき、データを収集・調査し、結果を確認・分析したうえで目標を設定、地域の実情に応じて定期的に見直すことが重要とされている。

国単位ではなく、地方自治体自らが動いているケースもある。日本屈指の人気観光地・京都市は、市とDMO KYOTOが主体となり、観光事業者・従事者、観光客、市民それぞれの観点から行動基準(観光モラル)を策定している。背景には、外国人観光客の急増による混雑や、文化・習慣の違いによるマナー違反などが多発し、市民生活に影響を及ぼす事態に発展していたことがある。

また、鎌倉市も休日を中心に交通渋滞が激しい状況のなかで、域内の交通をコントロールするマネジメントとして、2001年から「パーク&ライド」を導入している。鎌倉地域周辺の駐車場に駐車し、江ノ電などの公共交通機関に乗り換えて目的地に向かう方法だ。利用者は協賛店や寺社などで割引のサービスを受けることもできる。

パンデミックで変わった世界の価値観

海外の先進事例も紹介したい。ベルギーのビジット・フランダースは、住民の観光に対する姿勢の可視化を進めている。オーバーツーリズムへの懸念から、住民に対して観光振興に対する調査を実施し、地域住民の声は地域の観光振興ビジョンに反映される。また、ハワイ州観光局の2020年から2025年の計画では、明確にサスティナビリティが打ち出されており、地域コミュニティへの恩恵や自然環境の保存などが明記されている。

航空機による温室効果ガスの排出量も世界的な課題だ。諸外国のエアラインは気候変動に関係する取り組みとして、CO2削減の具体的な数値目標を掲げている。フランスで、「気候変動対策・レジリエンス強化法」によって、列車で2.5時間未満の代替え手段がある場合の航空路線が閉鎖となる方向で進められているのも興味深い。

消費者のサステナブルツーリズムに対する価値観も変化している。欧州投資銀行の調査では、アメリカ、中国、イギリス、欧州27カ国の消費者のいずれもが温室効果ガスの排出量の多い航空機に対して代替え手段や利用回数の削減意向を示している。また、新型コロナウイルスのパンデミックを契機に「サステナブル」な旅行をしたいと思うようになった旅行者は42%。日本は、ベトナム、タイ、台湾、韓国など、他のアジア諸国に比べ低い傾向にある点は注視しなければならないだろう。

航空機を利用した旅行に対する意向(レポート本文より抜粋) 

世界の観光の扉が徐々に開かれつつあるなか、サステナブルは新しい時代の観光を推進するパワーワード。国内外の最新情報が盛り込まれた調査レポートは以下からダウンロードできる。

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