法人旅行の最新トレンド、「生成AIにより出張はこう変わる」、旅費管理のデジタル化やパーソナライゼーションの進化も【外電】

アマデウスの法人旅行モバイルソリューション事業、シトリック・イージー(Cytric Easy)と、英国の旅行トレンド調査会社、グローブトレンダーは、このほど2024年のビジネストラベル動向調査の結果を発表。計7項目にまとめた注目トレンドのトップを飾ったのは、AIによるパーソナルアシスタンス(AI PAs)だった。

AIは、「自分が生きている時代に起きた最も重大な変化」「“火の使用”以来の大変革」などと評され、業種を問わず注目されているが、同調査では特にAI PAsに注目しており、セルフブッキングによる出張手配が劇的に変化する可能性について考察している。

アマデウスでは現在、アクセンチュアやマイクロソフトと共に、AIを活用した法人旅行向けプロダクトやサービス開発に取り組んでいる。

アマデウス・シトリック・ソリューションズのコマーシャル担当上級副社長、アリーネ・コイル氏は、調査レポートの中で、「生成AI搭載のチャットボット登場により、出張はまったく違うものになるだろう」との見方を示した。

昨今は、出張者が社外にある各種ツールを使って、目的地や必要事項を入力することが多いので「これをすべて統合できるように、マイクロソフトのコミュニケーションツール『Teams』で、生成AIのチャットボットに相談しながら手配できるものを目指している。会社の出張規定に即したおすすめ情報や、日程やルートに関するベストな選択肢を提案できるようにしたい。出張者にとっても、管理する企業側にとっても画期的なものになるだろう」。

旅行各社で生成AI活用のサービス進化

法人旅行を扱う旅行各社の間では、生成AIを活用し、出張者や企業のトラベルマネジャー向けのサービスを進化させる動きが活発になっている。

トラベルマネジメントを手掛けるCWT社のIT設計担当副社長、マシュー・ニュートン氏は、法人旅行会社こそ、AI開発の最前線から絶対に目を離すべきではないと説く。同社では、出張者向けメッセージングサービスにマイクロソフトの「Azure OpenAI」で生成AIを搭載する方針を打ち出している。

「少々、人間味に欠けていた既存の自動化サービスを、より洗練されたものにしてくれるのが生成AI。おかげで出張者や社内外のトラベルマネジャーなど、顧客との接点に近い部分でも投入できるようになった」とニュートン氏は話す。「粗削りだった部分がスムーズになったので、メッセージング・ソフトウェアを使い、これまでより迅速に、より適切な言葉遣いで返信できるようになる。旅行カウンセラーのノウハウを幅広い業務に、効率的に活用することも可能になる」。

さらにCWTでは、膨大なレポートの分析や要約作業での活用方法も試しているところだ。「既存のチーム体制のまま、業務の質も量も拡大できる。情報収集に費やしていた労力を、必要な情報の詳しい精査に充てることが可能になり、サービスをレベルアップできる」(同氏)と期待している。

2つ目の注目エリア、旅費管理のデジタル化

パーソナルアシスタンスに次いで、法人旅行関係者が注目しているのは、出張旅費管理におけるAI活用だ。出張経費管理テクノロジーを手掛けるセンター社のCEO、ナヴィーン・シン氏は、AIのパワーに目を奪われるのではなく、「顧客が実際に抱えている課題解決にどう活かすかが重要だ」と話す。

「出張者の経費の使い方に関する行動分析を完全に自動化できれば、かなり面白い活用方法になるだろう」とシン氏は話す。「月次ごとに経費レポートをまとめるのが一般的なやり方だが、出張者の行動の理由などは漠然としているのが実情だ。だがAIを使って主な出張消費パターンを分析し、実際の状況に関連づけて自動分析できれば、それだけでも充分に興味深い。さらに企業の出張規約作りや、各出張内容に応じたダイナミックな運用に活かすことで、大きな効果につなげられる」。

またシン氏は、旅費の処理方法や出張規約も、これから変わっていくと予測する。同社が実施した最近の調査では、法人カードの利用が大きく増えているのに対し、旅費管理ソフトの導入はここ数年、あまり増えていない。こうしたツールでは、もはや状況の把握や出張経費コントロールに実効性がないと企業の財務責任者が感じていることが理由としている。

法人カードが「出張のコントロール、コンプライアンス、そして業務自動化の最前線となりつつある。(カードの方が)導入や初期設定が簡単なので、財務責任者にとって使い勝手がよいからだ」と同氏は説く。

「法人カードを否定する主な理由は、『使途をどうやって確認すればよいのか?』、つまりコンプライアンスや管理業務の問題だった。だがソフトウェアとカードを組み合わせることで、こうした不安が減り、カード・プログラムをもっと大々的に活用できるようになりつつある。管理業務が楽になるし、出張者も普段から慣れている決済手法が使える」。

「もう一つは、働き方の多様化や、便利な決済ソリューションに慣れたZ世代が労働人口に達したこと。管理職にもミレニアル世代が増えて、個人カードでの立て替えなしで、法人カード決済できる方が好まれるようになったこと」と同氏は指摘する。

グローブトレンダー-シトリック・イージーの調査レポートでも、出張経費レポートのデジタル化は、注目トレンドの一つで、「人の手作業による煩雑な出張経費の管理業務や紙のレシートのやり取りは、過去の時代のものになる。これに伴い、取引履歴の記録から業務の処理・分析方法までが抜本的に変わっていくだろう」と予測している。

パーソナル化のカギは検索フィルターの充実

デジタル化が進むのに伴い、パーソナライゼーションの重要性も高まると同レポートでは予測している。実際、多くの法人旅行マネジメント会社が、2024年の重点領域としてパーソナライゼーションを挙げており、Festive Road社のレポートや、英国の法人旅行会社のネットワーク組織、アドバンテージ・トラベル・パートナーシップ(ATP)がまとめた「グローバルビジネストラベル・レビュー」でも注目トレンドとして取り上げられている。

ロンドンで2月に開催されたATPのシンポジウムでは、参加各社へのアンケート調査で「トラベルマネジメント分野に最も影響が大きいトレンド」となったのがパーソナライゼーションだった。

同シンポジウムに登壇したトラベルポートの欧州中近東・アフリカおよびアジア太平洋担当ビジネス開発ディレクター、ポール・ブロートン氏は、「パーソナライゼーションは難しい。旅行者のペルソナは、個人ベースでも日々、変化しており、テクノロジーだけでは解決できない。旅行する人、予約する人が自分に合ったものを選べるようにすることがカギになるのではないか。当然、企業の規約などに準じる必要はあるが、個人で旅行する時だって、自分で条件フィルターを選んで検索できる方が喜ばれる。GDSの役割は、利用者が自分に合ったものを選択できる条件フィルターなどのリッチ・コンテンツを提供すること」とし、日程や時間、価格だけでなく、例えばサステナビリティなど、検索条件を増やすことに取り組むべきとの考えだ。

ATPのグローバルビジネストラベル・ディレクター、ガイ・スネルガ―氏は、顧客の好みを推測して提案することのリスクにも言及した。

「例えばアマゾンは、私に色々なものを勧めてくるが、全く興味ないものばかり。顧客に提案するものを事前に選ぶのは容易ではない。みんな自分で選びたいのだ。パーソナライゼーションで成功している事業者は、顧客に対するエンゲージメント、コミュニケーションの取り方に違いがある。出張者の年代は以前より幅広くなっており、予約問い合わせの方法ひとつ取っても好みは分かれる。ワッツアップを利用したい人、オンライン予約ツールを自分で見て、あらゆるオプションを吟味したい人、10年来の付き合いがある担当者を何より信頼している人など様々だ」。

CWTのニュートン氏は、パーソナライゼーションが2024年、どうなっていくのかについて「私が今のチームに参加した2017年以来、最も注力している部分で、具体的にはインテリジェント・ディスプレイ開発に取り組んできた。基本的な方向性は同じで、コンテンツを充実させること。情報源を増やすと同時に、各情報の内容もより深めること。最も面白くて役に立つ情報を、最初の数ページ、できれば一番最初のページに載せて、時間や労力も軽減することがパーソナライゼーションの基本形だ」。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:SPOTLIGHT ON 3 TECHNOLOGY TRENDS IN CORPORATE TRAVEL

著者:リンダ・フォックス氏


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