ハワイアン航空CEOに聞いた、日本から米シアトルへの直行便を就航した理由、アラスカ航空と統合後の戦略も

ハワイアン航空は、2025年5月13日、アラスカ航空グループとして、成田/シアトル線に週7便で新規就航した。アラスカ航空は、2024年9月にハワイアン航空を買収。ハワイアン航空が、ハワイ諸島以外の日本路線を運航するのは、これが初めてとなる。ハワイアン航空が日本から米国本土に飛ぶ意義、両航空の統合の現在地をハワイアン航空のジョー・スプレイグCEOに単独インタビューで聞いてみた。

アラスカ航空のハブとしてシアトルに大きな潜在性

スプレイグ氏は、成田/シアトル線の就航の背景として、まずアラスカ航空が長年にわたって築いてきたハブ空港としてのシアトルの存在を挙げる。現在、アラスカ航空はシアトルから100都市以上へのネットワークを有しており、「(同航空にとって)サンフランシスコやロサンゼルスなどの西海岸の主要空港からよも多い便数と就航地がある」と説明。日本から米国への旅行、米国から日本のインバウンド双方にとって利便性が高いと強調した。

また、JALとの連携による日本国内および日本からアジアへの乗り継ぎ需要への期待も大きい。ハワイアン航空はJALと2017年9月に包括的業務提携を締結。アラスカ航空もワンワールドメンバーとしてコードシェアを実施している。

さらに、シアトルについて、スターバックス、マイクロソフト、アマゾンなどの大企業が本拠としているほか、日本企業の米国での拠点も多いことから、「出張需要などビジネス旅客の利用も見込んでいる」と話した。

「ハワイ」を掲げたブランドでのシアトル就航については、ハワイアン航空の広胴機A330の活用の面もあるという。アラスカ航空の将来的戦略の一つが、アジアや欧州への長距離国際線の拡張。そのなかで、統合によって得られたハワイアン航空の国際線機材の有効活用に期待をかける。

ハワイアン航空はA330の後継機としてボーイング787-9型機を10機発注。初号機を2024年2月に受領した。スプレイグ氏は、将来的には787-9をアラスカ航空の機材として、長距離国際線に投入していく考えも示した。

このほか、シアトル就航については、ハワイアン航空の日本/ハワイ路線の供給適正化という側面もある。日本からハワイへの旅行需要の回復が遅れる中、成田/ホノルル線をシアトル線に変更した。一方で、2025年夏のスケジュールでは、羽田/ホノルル線を1日2便に増便する。

シアトル発初便のセレモニー(アラスカ航空提供)。ロイヤルティプログラムも含め、完全統合は今年10月

スプレイグ氏は、2024年9月の買収完了後「統合プロセスは順調に進んでいる」と話す。

具体的には、オペレーション、ロイヤルティプログラム、旅客サービス、従業員の4点で統合を進めており、「完全統合は今年の10月」との見通しを示した。そのタイミングでロイヤルティプログラムも統合される予定だという。

また、ハワイアン航空のワンワールドへの加盟については、「旅客サービスやロイヤルティプログラムが正式に統合されたのち、2026年の4月ごろ」と明かした。一方、ワンワールドメンバーとして、JALやアメリカン航空との太平洋路線での共同事業(ジョイントベンチャー)の可能性については、「メンバーとして、両航空とも近い関係を築き続けることができる」と話すにとどめた。

スプレイグ氏は、アラスカ航空とハワイアン航空とのブランド戦略についても説明。「両航空の路線展開は全く重なっていない」として、「ハワイアン航空は、ハワイに飛ぶエアラインとして、その強力なブランドをしっかり維持していく」と強調した。

スプレイグ氏は2024年9月にハワイアン航空CEOに就任。

ハワイの航空会社として日本へのコミットメントは変わらず

2024年のハワイへの日本人旅行者数は前年比22%増の約72万人。コロナ前2019年比では依然として5割程度にとどまっている。

スプレイグ氏は、「一番大きい要因は為替の問題」との認識を示したうえで、「それでも、ハワイは日本人にとって人気のデスティネーションであるのは変わりない。ホノルルを拠点とするエアラインとして、日本へのコミットメントは変わらない。隣島へのネットワークも含めて、日本人旅行者が以前のように戻ってきた時にしっかり対応できる体制を整えておく」と強調。日本での販売戦略も、アラスカ航空グループとして、旅行会社、直販、NDCを含めさまざまな販売チャネルで進めていく方針を示した。

このほか、スプレイグ氏は、今日的な話題として、米トランプ政権の政策による影響についても言及した。米国への旅行者が減少傾向で、特にカナダから米国への旅行控えが目立つという一部報道があるが、スプレイグ氏は「カナダからハワイへの需要に変化は見られない」と話す。

「前提条件は、日々変化してている。今は見守る時期。具体的な影響は数ヶ月経たないと見えてこないだろう」と話したうえで、「大切なのは、アラスカ航空グループとして、長期的な視野に基づいて、2つのプランドを統合し、ネットワークを拡張していくこと」と強調した。

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