観光産業の春闘2025、過去最高の賃金改善、改善率では若者に恩恵偏り、中堅以上の労働条件に課題感

サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は、2025年の春季生活闘争(春闘)の結果(2025年6月19日現在)を発表した。

賃金改善では、過去最高となった2024春闘を上回る改善率6%を方針として掲げた結果、改善率は昨年を上回る5.32%となり、実質的な賃金改善(1万918円)を含め、過去最高額(1万6351円)となった。これは集計可能な34組合の平均で、合意した加盟組合の数は前年より8組増加。6%以上の賃金改善には12組合が合意した。また、一時金の平均支給カ月も年間3.36カ月、夏期1.59カ月で前年を上回った。

サービス連合会長の櫻田あすか氏は「各加盟組合が、粘り強く交渉した結果」と、取り組みの成果を強調。その背景として「各加盟組合が産業間の格差を埋めていかなくては、少子高齢化が進む中で人手不足の解消につながらないという強い危機感を持って交渉した」と強調した。

業種別でみると、賃金改善はホテル・レジャー(1万3964円:5.34%)、ツーリズム・国際航空貨物(1万7244円:5.31%)とも、前年を上回った。一時金の平均支給カ月は、ホテル・レジャー(年間:3.03カ月、夏:1.42カ月)は前年を上回ったものの、ツーリズム(年間:3.78カ月、夏:1.74カ月)と国際航空貨物(年間:3.30カ月、夏:1.92カ月)は前年を下回った。インバウンドに沸くホテル・レジャーと、稼ぎ頭の海外旅行の戻りが遅いツーリズム、本春闘の開始時期に底を打った国際航空貨物と、各業種を取り巻く環境の違いが表れた。

総合的な労働条件の改善へ

また、櫻田氏は今春闘について、賃金改善だけではなく「総合的な労働条件を改善する闘争として臨んだ」と説明。年間総実労働時間1800時間に向けた年次有給休暇の取得促進や半日・時間単位年休の制度拡充に8組合が合意したほか、看護休暇・介護休暇の有給化など両立支援・ジェンダー平等社会に向けた各種制度、60歳以降の高年齢者の労働条件改善、カスタマーハラスメント対応などでの合意も見られた。

そのうえで、さらなる労働条件の向上には「より多くの声を集める必要がある。組織拡大は喫緊の課題」と主張。従来から取り組んでいる組織支援と強化・拡大について、今年度からの2年間、さらに強めていく考えを示した。なお、2024年には旅行会社クラブツーリズムの労働組合が加盟したという。

このほか、会長代理で組織支援局長の宇高誠氏は、賃金改善について「2024春闘は初任給にフォーカスし、今春闘は金額の一律改善で合意に至った組合が多い。その結果、改善率としては若年層に恩恵が偏った」と説明。来年度以降は、サービス連合の目標である35歳年収550万円の実現を意識し、「中堅層以上の賃金改善につながる労働条件の改善にしていく必要がある」と話した。

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