タビナカの観光コンテンツ、選ばれる分岐点はレビュー数20件、タビナカOTAらが集結したイベントを取材した

タビナカに特化した観光イベント「Tabinaka Summit(タビナカサミット) 2025」が初めて開催された。JTB、GetYourGuide(ゲットユアガイド)、ジェイノベーションズ、羅針盤の4社が共同主催したもの。ツアーオペレーター、体験を提供する事業者、行政、OTA、DMOなどが一堂に会し、対面のセミナーと交流会には約250名、オンラインには650名が参加した。

※写真:対面セミナーの会場の様子

「旅の最中に生まれる体験価値」をテーマに議論を深めたセミナーのうち、「主要OTAが読み解くタビナカ体験の最新トレンド」では、Klook Travel Technology(クルック)、GetYourGuide、ベルトラ、KKday JAPAN、アソビューのタビナカ大手5社が登壇し、課題から販売傾向、レビュー対策、予約獲得の秘訣まで、さまざまな意見が交わされた。

現在の課題と、レビューの重要性

議論は現在の課題感からスタート。Klookの田中美晴氏は「一極集中」を挙げ、「SNSでバズったというだけで、意図しないところで一極集中が起こっている。地域で連携しながら、その周りにもいい影響が出るような動きをするべきではないか」と指摘した。国内を主力とするアソビューの江部隼矢氏は、「地域の体験のさらなる拡充」を挙げ、GetYourGuideの仁科貴生氏も「需要自体は増加しているが、供給が足りていない」と発言した。

一方、ベルトラの二木渉氏は「AI」を挙げ、「テクノロジー発展のスピード感は、もう異常なぐらい速い。その新しいイノベーションを適切にマーケットに提供していくことが重要」と指摘。また、KKdayの小川雄司氏も、テクノロジーに触れ、「事業者のオペレーションの効率化と持続化に対する課題感は大きい」とした。

また、予約拡大に向けてレビュー(クチコミ投稿)の重要性についても意見を交換した。Klookの田中氏は、「レビューがあるから予約が入るというところもある。最初は我慢が必要」と話したうえで、その分岐点はレビュー数20件程度と明かした。GetYourGuideの仁科氏は「レビューが3つ以上つくと、トラフィックが出やすい」と明かした。

一方、ベルトラの二木氏は、レビューの数よりもその質が重要と指摘。「体験談の中身が旅行者にとって有益な情報であることのほうが大切」とした。KKdayの小川氏も「エピソードや思い出など良質なコメントを書いてもらえるような働きかけをしている」と続けた。

「Tabinaka Summit 2025」はオンラインでも配信。(左から)KKdayの小川氏、ベルトラの二木氏、GetYourGuideの仁科氏、アソビューの江部氏、Klookの田中氏

どんな商品が売れる?

各社の売れ筋商品も紹介した。

GetYourGuideの仁科氏は、インバウンド向けの相撲体験を挙げ、その理由を「日本に対する期待値が、うまく体現されていている」と説明。また、ベルトラの二木氏は「プライベートガイド」を挙げた。「プライベートガイドは、あまり大量には供給できないが、我々がパートナーシップを組んでやっていくと、利益性もそれなりに確保できるし、差別化しやすい」と明かした。

KKdayの小川氏は「商品棚の中から選んでもらうためには、記憶に残るような写真や動画が大切」とタビナカを提供する事業者に向けてアドバイス。一方、OTA目線では、補助金ありきの商品を一例に「ターゲットやテーマが曖昧で、しかも短期間の販売のため、売りにくい」と話した。

アソビューの江部氏は、売れている商品の共通点としてオンライン上で「即予約」ができることに言及。「そのまま予約が確定する商品は、利用者にとっても安心感がある」と指摘した。

掲載の基準は?

タビナカ事業者にとって気になるのがOTAへの掲載の審査基準。この点について、GetYourGuideの仁科氏は即予約と旅行者目線の商品を挙げ、Klookの田中氏も「リクエスト予約は事業者側のオペレーションが増えてしまう」と続けた。

アソビューの江部氏は、安全面からの資格と商品のユニーク性を挙げた。安全面については、ベルトラとアソビューも同意。KKdayの小川氏は、「これから夏に向けて、たとえば、シュノーケリングやダイビングなどのアクティビティではインストラクターの資格や経験値を確認する」と具体例を示した。

加えて、ベルトラの二木氏は「事業者のストーリーに共感が持てるものは、積極的に獲得(掲載)したいと思っている」と続けた。

Klookの田中氏は、「単発的に出して消すのは一番もったいない」としたうえで、「OTAとして、事業者と一緒に時間をかけて、そのページ(商品)を育てていくことも醍醐味」と話した。

最後に、今後のタビナカ市場の成長に必要なポイントとして、KKdayの小川氏は「持続性」、ベルトラの二木氏とアソビューの江部氏は「AI」、GetYourGuideの仁科氏は「共感」、Klookの田中氏は「キラーコンテンツの活用」を挙げた。

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