世界の富裕層が注目するウェルネス旅行の最新トレンド、国際組織「ヴァーチュオソ」が選んだ8タイプ、深い睡眠の追求から、腸内環境の改善まで【外電】

2025年、「気分よく過ごしたい」旅行者から支持を集めている休暇は、テクノロジーを用いたバイオ・ハッキング(科学的手法で自分の身体や脳のパフォーマンスを最適化すること)から大自然に浸るひとときまで、あらゆるタイプへと多様化している。このほど、富裕層旅行の国際組織「ヴァーチュオソ(Virtuoso)」が、世界の富裕層旅行のウェルネスツーリズムに関するトレンドをレポートした。注目すべき8つのタイプを取り上げると共に、利用可能なラグジュアリーホテル、スパ・リゾート、デスティネーション、旅行会社の例を挙げた。

ヴァーチュオソは、完全紹介制で富裕層旅行者の顧客と、加盟する旅行会社、ホテル・クルーズなどのサプライヤーをつなぐ組織。

1860年、米国の哲学者ラルフ・ワルド・エマーソン氏は「第一の富、それは健康である」と言ったが、この言葉が今ほど共感を得ている時代はないだろう。世界ウェルネス機構(GWI)によると、世界全体でのウェルネス経済規模は、過去最高だった2023年時点で6兆3000億ドル(926兆1000億円)、2028年までには9兆ドル(1323兆円)に達するとの予測だ。観光産業でもトレンドの一つで、健全な身体やメンタルを追求する傾向はますます高くなっている。旅の最大の目的ではない場合でも、ウェルネス向上につながる内容を取り入れる人が増えている。

1.スリープ・ツーリズム、深い睡眠を追求

ラグジュアリー・ウェルネス・トラベル分野で、急速に拡大しているニッチ市場の一つが、より深い睡眠を追求する「スリープ・ツーリズム」だ。良質な睡眠につながる衛生環境への関心が高まっており、ウェルネス体験の中核として重視されている。

こうしたなか、ラグジュアリーリゾートやスパでは、健全な睡眠を促す各種トリートメントから数日間をかけて行うバイオ・ハッキングまで、睡眠の質と量を向上させるプログラム開発に力を入れている。深いリラクゼーションを得る方法を学んだり、不眠症を克服する鍼灸を試してみよう。あるいは、忙しい日常から少し距離を置き、睡眠を最適化するテクノロジーを導入したスイートルームに滞在するという方法もある。

2.更年期障害、ホルモン療法のプログラム

更年期障害やホルモンに起因する問題など、中年期の女性が抱える悩みは、少し前まで、話題にするのがタブーだった。しかし世の中の常識が変わりゆくなか、この複雑な(多くの女性を混乱させる)時期への関心は高くなっており、研究も進んでいる。

メキシコでは、女性向けの計7泊のプログラムが提供されており、メタボリック症候群の検診、ホルモン・バランス食、骨盤や筋肉セラピー、ストレス軽減などを組み合わせた内容だ。またモルディブでは、女性の健康に特化したスパ・トリートメント、米国各地では、更年期の女性を対象とした保養所で専門家によるワークショップが受けられる。ワークショップでは、睡眠、ホルモン管理に必要な栄養、感情のバランス維持など、様々なトピックスを取り上げている。

3.サウナ、水浴体験、温泉で心身の健康を

サウナは、温熱によるヒーリング効果やデトックス、人との連帯感など、体験から得られるメリットが多い。一部の国では、単なるトリートメントではなく、ウェルネスに欠かせない大切なものとして長い歴史がある。水浴やサウナは、ワークアウト後のくつろぎ時間というより旅行の主役として考えるべきであり、これを中心に旅程を組み立てる価値が充分にある。

アイスランドでは、伝統的なバイキングの慣習を受け継いだサウナに参加し、呼吸法、マインドフルネス、熱と冷水に繰り返し浸ることで得られる免疫力アップなどについて学ぶことができる。ヨーロッパ、カナダ、中央アメリカの各地でも、大自然が作り出した温泉に入ることで、様々な良い効果を得られる。セント・ルチアにある保養施設では、ドライ・サウナ、赤外線サウナ、火山のミネラル成分たっぷりのプールなどが楽しめる。

4.長寿、健康寿命を延ばすために

ウェルネス・トラベル領域におけるバズワードの一つになっているのが健康寿命だ。ラグジュアリーホテルやリゾート、スパ、クリニックなどでは、長く健康でいること、最適な健康状態を追求したい人々に向けて、しっかりとパーソナライズした健康維持のプログラム作りに取り組んでいる。

例えば、DNAをもとに作成する栄養プラン、最先端の健康診断、ホルモン治療、点滴治療、クライオセラピー(凍結治療)、生物学的年齢検査など。医師の指導のもと、ビタミンやミネラルの点滴を打つスパが増える一方、数日かけて総合的な健康チェックを行い、疾患の有無など、100以上の項目にわたるバイオマーカーを検査するプログラムを一人一人に合わせて組み立てるところも。中年から高齢者まで、特定年齢グループを対象にした保養施設もある。

5.感情コントロールなど、健全なメンタル維持のために

身体的な健康と同様に、メンタル・ヘルスも重視する昨今の傾向に対応するべく、スパ・リゾートでは、ストレス解消や感情コントロール、さらにトラウマの治癒までを目指したセラピーなど、幅広い内容に力を入れるようになっている。こうした保養施設は、ドバイ、モルディブ、フレンチ・リビエラ地域、メキシコなど、世界各地に広がっており、ウェルネスや医療の専門家が旅行者のニーズに応じている。当日予約での気軽な受診から数日間に渡る詳細なプログラムまでがあり、内容はソマティック心理療法、デジタル・デトックス、サウンド・ヒーリング、ブレスワーク(意識的な深い呼吸によるセルフ・セラピー)、創作活動や沈黙による癒し効果など多岐にわたる。

6.伝統文化、古代の慣習にもとづくヒーリング法

旅行によって得られる醍醐味の一つは、各地域で継承されてきた文化や伝統に触れる機会だろう。そのなかには、ヒーリング効果をもたらす様々な文化や慣習も少なくない。

ヴァーチュオソの認定を受けたウェルネス・トラベル担当アドバイザーたちは、伝承文化に関心がある旅行者におすすめのデスティネーションやリゾートについて詳しい知識がある。古代マヤ文明のテマスカル(蒸し風呂)やシャーマンが案内するセッション、そのほか古代から受け継がれてきた技法や先住民が使っていた材料を駆使した様々なヒーリング体験など、豊富な選択肢が揃っている。

7.大自然を堪能、森林浴やスパ体験

旅行者自身はもちろん、滞在先の地域環境にも恩恵がある、ダブル効果をもたらすウェルネス旅行への関心が高くなっている。リジェネラティブ(再生型)なウェルネス・トラベルを目指す機運のなかで、より注目を集めるようになっているのは、排出ガスをマイナスにし、地域環境の保全活動を資金面でサポートする一方、旅行者には大自然を堪能するひとときとして森林浴、野生食材の採集、採食中心の料理教室などを提供しているリゾートだ。

ヴァーチュオソがまとめた2025年の富裕層レポート(Luxe Report)では、ウェルネスと自然を組み合わせた休暇を選ぶ旅行者が増えていることが明らかになった。庭園の散策、ハイキング・トレイル、手つかずの自然の中で泳ぐなど、身体と心の両方に効果的な体験が、宿泊施設のすぐそばで満喫できる上、一日の終わりには、スパで各種トリートメントを楽しむ時間を過ごすことが出来る。

8.腸内環境の改善へのプログラム

ウェルネス関係者の間で話題沸騰中のトピックといえば、腸と脳の関係性だ。最近、人間のマクロバイオーム(微生物叢)の影響力に関するエビデンスは増えており、消化、免疫、機嫌や認知機能など、幅広い領域に関わっていることが分かってきた。

こうしたなか、世界の人気観光地のスパ・リゾートやクリニックでは、腸内環境をベストな状態にする各種プログラムを作成するようになっている。各個人に合わせてパーソナライズした栄養、消化器官の検診、特別メニューなど、内容は幅広い。例えば、インドに飛んで、消化機能の問題を特定し、これを改善するプログラムを作成してもらったり、ヨーロッパに滞在して身体を浄化するデトックスを体験したり。あるいは、南カリフォルニアかメキシコで週末を過ごし、炎症やストレスを抑え、健康増進につながるスパ・メニューと食事を堪能できる。


※ドル円換算は1ドル147円でトラベルボイス編集部が算出

※この記事は、富裕層旅行アドバイザーを抱える世界的ラグジュアリー・トラベル・ネットワーク「Virtuoso(ヴァーチュオソ)」から届いた英文記事を、同社の正式許諾に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:From Sauna Rituals to Sleep Retreats, These Are 2025’s Biggest Wellness-Travel Trends

筆者:Lindsay Lambert

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