HIS決算、旅行・ホテル好調で増収増益、海外旅行がけん引、矢田社長「看板は他社に譲らない」 ―2025年10月期

エイチ・アイ・エス(HIS)は2025年12月12日、2025年10月期(2024年11月~2025年10月)の連結決算を発表した。売上高は前期比8.7%増の3731億600万円、営業利益は同7.1%増の116億2700万円で、旅行、ホテルなど全セグメントで増収増益を達成した。経常利益は同8.9%増の113億8100万円。ただ、純利益はトルコ法人の事業縮小に伴う事業整理、ホテル事業の減損損失の計上で同45.9%減の47億1900万円と、当初業績予想を下回った。

決算会見で代表取締役社長の矢田素史氏は今後の事業展開について、「コアである旅行、ホテルなどのネクストコア、新規領域の成長段階別に再編し、主力の旅行事業を強化しつつ、ネクストコアをM&Aなどで拡大させ、資源投資の重点化を図りたい」と語った。

ヨーロッパ、中東の添乗員同行ツアーが好調

主力の旅行業の売上高は同8.9%増の3091億3900万円で、約251億円の増収となった。日本発海外旅行がけん引し、シニア層中心にヨーロッパ、中東方面の添乗員同行ツアーなど高付加価値な商材が好調だった。ダイナミックパッケージのAirZ(エアーズ)も同44%増と伸長した。営業利益は同3.6%増の96億3600万円。ただ、海外法人はヨーロッパが好調だったが、これまでけん引してきたカナダが景気減速や大口契約の終了により営業損失を計上した。

ホテル事業の売上高は同9.8%増の252億4400万円で、営業利益は同18.7%増の36億1800万円。訪日需要の高まりや大阪・関西万博効果で高い稼働率となり、国内ホテルは売上、営業利益ともに過去最高となった。主力である「変なホテル」のブランドを細分化するなどマルチブランド戦略を進めており、2026年10月期は売上高で前期比12%増の283億円、営業利益で同24%増の45億円を見込む。海外ホテルはグアムがレジャー需要の低迷で苦戦したものの、前期に開業投資で減益だったトルコ・カッパドキアの黒字化が増収増益に寄与した。

九州産交グループは売上高が同5.8%増の253億8100万円、営業利益が同85.5%増の8億600万円。訪日外国人旅行者の増加に伴って阿蘇くまもと空港の乗降客数が国際線中心に増加し、バス事業や航空代理店事業が伸長。不動産事業である大型複合施設でありバスターミナルを併設するサクラマチクマモトでは来館者数が年間1400万人を超えた。

また、販売管理費は同6.6%増の1063億4600万円に増えた。早期予約や繁忙期の需要獲得を図る広告展開として広告費に同15%増の93億200万円をかけたほか、社員に対する基本給の定期昇給とベースアップを実施し、人件費が同4%増の579億6900万円となった。連結従業員数は同2%増の1万2710人。

矢田氏「海外旅行の看板は、他社に譲らない」

2026年10月期の業績予想については、売上高が前期比12.6%増の4200億円、営業利益が同20.4%増の140億円、経常利益が同23%増の140億円、純利益90.7%増の90億円を見込んでいる。

このうち、営業利益の内訳は、旅行事業が同14.2%増の110億円、ホテル事業が同24.4%増の45億円など。旅行事業については、日本人出国者の回復を見込むのに加え、グローバルマーケットの受客ビジネスを強化する。矢田氏は「日本人海外旅行の遅れに対し、セールやイベントを航空会社、JATAと連携し強化する。国へもパスポート取得促進を要望するなど多角的に対応し、海外旅行の看板は、他社に譲らない」と強調。座席供給数を自力増加するため、定期便の買い取りの強化、チャーター便の運航を進めるほか、グローバル事業では海外法人を統括する「HIS Global DMC」の設立を通じ、横断的なBtoB営業による販路拡大を図る。また、韓国発の旅行需要を取り込むため、韓国旅行最大手ハナツアーと協業するなど、需要獲得を目指す。

なお、同社は2027年度からの新・中期経営計画に向けて、2026年度をスタートダッシュの助走期間の「新・中期経営計画0年度」として展開する。

具体的には、AI、テクノロジーと人との協業による変革を基本方針に掲げ、「AI、テクノロジーによる体験価値の創造、生産性向上、人財の最適配置」「グローバル(non-Japanese)マーケットでの事業拡大」「グローバルネットワークを活かした新たな流通の構築」「M&A・投資・提携による新規領域への参入と既存事業の拡大」「グループ横断的なCRM導入によるLTV(顧客生涯価値)の最大化」「DEIB推進による多様な人財の活躍」「持続可能な成長を支えるガバナンス体制の確立」の7つをアクションプランとして推進していくとした。

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