欧州でホテルのクチコミ投稿に対する行動規範、透明性と信頼性を高める目的で、大手OTAや業界団体は支持【外電】

欧州委員会は、2025年9月初旬、オンラインでのホテルのレビュー(クチコミ)の透明性を高めることを目的に、新たなオンライン評価とレビューに関する行動規範「Code of Conduct for Online Ratings and Reviews for Tourism Accommodation(宿泊施設向けオンライン評価・レビュー行動規範)」を承認した。偽レビューが消費者の信頼を損なっているケースが増えていることから策定された。

この行動規範は、OTAや宿泊事業者、消費者団体らが共同で設計・署名する枠組み。レビュー投稿を「実際に宿泊したゲスト限定」とすること、アルゴリズムや評価の仕組み、編集ポリシーの開示を求めること、レビューの異議申立て制度を整備することなどの項目を含んでいる。法的拘束力を伴うものではなく、業界の自主規範として機能するもので、透明性と信頼を高めるための業界横断的な協力を促すことが狙いだ。

トリップアドバイザーやエクスペディア、ブッキング・ドットコムなどの大手OTA、業界団体「EUトラベルテック(EU Travel Tech)」は、この規範を支持。36カ国47の国内ホテル・レストラン協会を代表する「HOTREC」も、この行動規範を承認した。

EUは、行動規範に署名した組織は「オンライン上のクチコミと評価の信頼性を確保するための措置を講じることを約束する」ことになるとの見解を示している。

行動規範の草案作成に協力したEUトラベルテックは、「宿泊事業者、消費者団体、そして欧州委員会との議論を通じて共同で作成されたこの行動規範は、すべての利害関係者の利益に向けてクチコミのシステムの信頼性を促進するもの」と述べている。

偽レビュー撲滅へ業界内での協力を

新たな規範は、すでに多くのOTAが取り入れている。ブッキング・ドットコムは、すでに宿泊が確認された旅行者のみがレビューを投稿できる仕組みを採用しており、ホテル側も公開で回答できることから、新たな規範は旅行者にはほとんど影響はないとしている。

また、宿泊事業者がレビューを作成して故意にスコアを操作するリスクがあることを認めつつも、「その割合はレビュー全体の1%未満」と明かした。

同社では、AIによって生成された大量の偽レビューで企業が脅迫される詐欺行為を例に挙げたうえで、「AIを活用してAIと戦うことは、今後の優先事項となる」との見解を示した。一方で、将来的にはホテルがAIを活用して独自にレビューへの返信を作成できるようになると見ている。

トリップアドバイザーは、2024年に270万件の不正なレビューを削除。前年の削除数200万件から増加しており、不正検出は改善しているものの、問題の規模が拡大していることを示すことになった。

レビューは、今でも予約コンバージョンを左右する最も強力な要因の一つとなっている。EUトラベルテックは、この規範の価値は、規則の厳格化だけでなく、業界内の協力を促進していくことにあるとしている。

EUトラベルテック事務局長のエマニュエル・ムニエ氏は、「真のゲストレビューは信頼を醸成し、消費者に力を与え、旅行エコシステムに透明性をもたらす。これは誰にとっても利益となるもの」との考えを示した。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(Skift)」 から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事: Online Travel Agencies and Hotels Endorse EU User Review Guidelines

著者:Clara Awuse 氏


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