東急ステイが始めた「宿泊権の再販サービス」、キャンセル課題を解決する新モデルの仕組みと将来展望を聞いた

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東急不動産と東急リゾーツ&ステイは、「東急リゾーツ&ステイSMART CLUB」の会員限定サービスとして、新サービス「東急ステイ公式宿泊権リセールサービス」の提供を始めた。このサービスは、宿泊予約者が急な予定変更で宿泊や利用が困難になった場合でも、自分自身で宿泊の権利をリセール(再販)できる仕組み。将来的には他社への展開も視野に入れている。

同社がこのサービスを開発した背景やホテルが抱える課題、宿泊権リセールの仕組みなどについて東急リゾーツ&ステイ事業統括部統括部長の白倉弘規氏に聞いた。

開発の背景にある課題とは?

宿泊権をリセールするサービスは、宿泊事業者が抱える課題解決を目的に生まれたものだ。白倉氏は、その課題として3つの構造的な問題を挙げる。

まず、キャッシュアウトが先行してしまうこと。OTAに頼る宿泊事業者では、契約によって異なるものの、チェックアウトが含まれた当月の末締め、翌月末払いで入金されるケースが多く、その間、前払いしなければならない費用が先に出ていってしまう形になる。つまり「宿泊事業者はキャッシュフローの構築が難しい」事情がある。

また、キャンセル率が高いというのも宿泊施設の悩みの種だ。白倉氏によると、特にインバウンド比率が高い施設では、キャンセル率も高い傾向にあるという。東急グループの場合、キャンセル率は40~50%。稼働率を高水準で維持するためには、予約を約2倍入れる必要がある「非効率な市場」になっているのが現状だ。また、キャンセル料が実質取れていないケースも多く、直前で空いてしまう在庫を捌かなければならないという課題も発生する。

そのため、3つ目の課題として、客室平均単価(ADR)と稼働率を高めるためのレベニューマネジメントの難易度が上がり、その手間も増えることになる。

その構造的課題から、白倉氏は「一定程度キャンセルされない、売上が確定している予約を、レベニューマネジメントのベースとして積み上げておきたいというニーズがホテルには間違いなくある」と話す。

宿泊権リセールサービスについて説明する白倉氏

「リセールプラン」を前売り券としてNFT化

このような課題の解決策として、東急ステイでは、通常の売買プランに加えて、NFTを活用した「リセールプラン」を立ち上げた。このプランでは、宿泊日が確定した宿泊予約を、NFT(非代替性トークン)を活用してデジタルチケット化し、「リセール可能な前売り宿泊券」として販売する。

エンドユーザー(一次流通購入者)は、キャンセルせざるおえない時、単純にキャンセルするのではなく、NFT宿泊チケットを東急ステイの公式サイトで二次流通として出品できる。それにより、一次流通購入者はキャンセル料の支払いリスクを回避できるとともに、リセールの機会を得ることができる。また、室料は宿泊日の直前になるほど高くなることが一般的だが、直前で部屋を探す二次流通購入者にとっては、必要な宿泊を市場価格よりも割安に購入できる可能性がある。

白倉氏は、この2次流通市場を形成していくことで、「将来的にはユーザーをOTAから自社サイトへ誘導する動機づけにしていきたい」と話す。

一方、この仕組みは宿泊施設にとっても、キャッシュフローの改善という点でメリットは大きい。この仕組みでは、予約をした段階で入金が確定するため、キャッシュインが大幅に早まることになる。また、二次流通でリセールされる場合、一次流通時よりも高い値段で取引されることもあり得ることから、収入増の可能性もある。白倉氏は「宿泊施設にとって、この仕組みは相当大きなインパクトがある」と自信を示す。

リセールプランの仕組み(報道資料より)

ユーザーと宿泊施設の双方にメリット

リセールプランの構築に向けては、通常のプロセスで予約売買できるように気を配ったという。NFTはブロックチェーン技術で構築されているが、ユーザーが専用ウォレットを個別に作成・管理する手間を排除し、既存の予約フロー(UI/UX)にシームレスにつないだ。

SMART CLUB会員には、Web3.0のウォレットを自動的に紐づけし、利用規約の変更に同意するだけで機能が有効化される仕組みを構築し、新技術導入の障壁となる「複雑さ」を排除。従来の予約サイトと同じ感覚で、直感的な操作性を実現した。

また、予約が確定したユーザーのチェックイン時は、QRコードを自動チェックイン機にかざすだけで完了するようにした。

リセール価格は一次流通出品者が決める。最低1000円から上限は100万円。販売は予約日の前日23時59分まで可能だが、売買が成立しなかった場合は、返金されず、そのままノーショーの状況となる。

二次流通で売買が成立した場合の二次出品者への支払いは、システム利用料3%、二次流通手数料20%を差し引いた金額を電子マネー(Amazonギフトカード、EdyギフトID、nanacoギフト、PayPayなど)あるいは東急ステイ会員向けSMART CLUBポイントで支払われる。

一方、白倉氏は、ユーザー側だけでなく、運営側にとってのメリットも強調。「通常のオペレーションと同じ形で完結できるため、新しい仕組みでも現場に負担がかからないのも大きなポイント」と説明した。

グループ内での横展開や他社での利用を視野に

宿泊権リセールサービスは、東急ステイ6施設(水道橋、蒲田、門前仲町、札幌、京都三条烏丸、博多)で開始したのち、全国の施設(アコーホテルズとのダブルブランド2施設は除く)に拡大した。

30万人強(2026年3月現在)のSMART CLUB会員向けサービスとしてはビジネススケールが小さいのも事実だ。そのなかで、白倉氏は目標値として、OTAからの自社サイトへの流入3%増、自社サイトでの宿泊権リセールサービスのシェア10%を目指すと明かした。

宿泊権リセールサービスは、拡張性を狙って構築された。東急リゾーツ&ステイが運営する「ゴルフ場」や「スキー場」の会員権・リフト権への横展開も視野に入れている。加えて、白倉氏は「ブロックチェーンを使って NFT という形で提供する背景には、他社ホテルにも利用してもらいたいという思いが強い」と話す。

「東急ステイの中で実験的に展開し、定量的な効果を見せることで、他社にも興味を持ってもらえる。宿泊権リセールサービスは、さまざまな宿泊施設に使ってもらうことで、初めてビジネスとして成り立つもの」との考えだ。

今後、東急ステイでの活用を通じてさらにブラッシュアップを進めていく。 2026年度の第4半期には多言語対応もおこなう予定だ。

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