スイスのサステナブル観光の5本柱、共通認証制度などの戦略を政府観光局CEOに聞いた

スイス政府観光局は、スイス国内での観光産業でのサステナビリティの取り組みを強化している。このほど来日した同局CEOのマルティン・ニーデッガー氏は、「欧州では以前から環境保護の意識が強かったが、パンデミックの中でさらに高まった。ツーリズムは、パンデミックから多くのことを学んだ。それをさらに発展させていきたい」と話す。同局のサステナビリティ戦略として推進する5つの柱と、近年の航空と鉄道の連携を聞いた。

共通のサステナブル認証制度を設定

まず、同局では新たに共通の認証制度「スイステナブル(Swisstainbale)」を設定。サステナブルな活動に積極的な宿泊施設、レストラン、観光施設、交通機関など認証することで、その取り組みを可視化するものだ。

これまでは、さまざまな団体がサステナブル認証を発行していため、旅行者にとっては分かりづらい面があった。観光産業での統一した認証ブランドを設定することで、事業者の活動強化とともに、旅行者への啓蒙活動も強めていく考えだ。

認証プログラムとして、基準に応じて3段階のレベルを設け、認証を受けると公式ロゴを使用することが可能になる。今年初めまでに約1300社が認証を受けた。今後、最終的には約5000社の参画を目指すという。

また、長期滞在の需要も拡大させたい方針だ。「旅行者はコロナ禍を経て、よりゆっくりとリラックスした旅を楽しみたいと思うようになっている」と市場動向を分析したうえで、地域の経済活性化にもつながる長期滞在旅行者を増やしていきたい考え。ニーデッガー氏は「コロナ前よりも平均で2泊は増やしていきたい」と意欲を示した。

旅行先やシーズンの分散化も進めていく。人気の都市や観光地だけでなく、さまざまな地域に旅行者を誘客することで、地域創生につなげる。日本を含めた遠距離市場は夏季に需要が集中しているが、春、秋、冬のコンテンツを発信していくことで、シーズナリティの平準化を目指す。

スイス政府観光局は、日本市場でもその取り組みを強化。スキーのほか、ウィンターハイキング、雪見鉄道、クリスマス、伝統の祭りなどの訴求を強めていくほか、先日引退を発表したロジャー・フェデラー氏がお勧めする冬の楽しみ方も紹介していく。

このほか、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーションも重視し、スイス独自のサステナブルツーリズムを「スイスウエイ」として広めていくという。ニーデッガー氏は「サプライヤーもサステナブルツーリズムは重要なテーマであると認識している。これは、単独で進められるものではなく、協業が必要。トップダウンではなく、ボトムアップの取り組みが求められる」と話したうえで、「サステナブルは20年単位の取り組み」として、長期的視点に立った活動と位置づけた。


スイスでも進む航空と鉄道の連携

欧州各国と同様に、スイスでもCO2排出量削減の一環として、鉄道利用が見直されており、航空と鉄道との連携も進んでいる。今年12月から、スイス・インターナショナル・エアラインズは、スイス連邦鉄道(SBB)との「エア・レール」パートナーシップを拡大。1枚の搭乗券だけで、チューリヒ空港からインタラーケンとルツェルンへの乗り継ぎを可能にする。ニーデッガー氏は「サステナビリティの観点から、航空と鉄道の連携は拡大していくのではないか」との認識を示した。

ニーデッガー氏によると、欧州では「6時間ルール」というものがあり、政府機関や企業には6時間以内の移動時間では航空ではなく鉄道を利用することが推奨されているという。法律的に義務化されているわけではないが、自主的な努力として進められている。

そのなかで、「航空ネットワークは縮小せずとも、欧州では今後航空の運航便数は減っていくのではないか」と予想。ただ、6時間ルールなどがツーリズムに与える影響については、「現時点では分からない」と話すにとどめた。

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