最高級クルーズ「シルバーシー」が日本発着クルーズを再開、その船内と拡大する配船計画を取材した

日本に、外国客船による日本発着、寄港するクルーズが戻ってきた。2023年3月15日には世界で高級客船を運航するシルバーシー・クルーズが、客船「シルバー・ミューズ」(4.7万トン:乗客定員597人)による日本発着クルーズを再開。3月27日の横浜寄港にあわせ、旅行会社やメディアを対象にした船内見学会を開催した。

シルバーシー・クルーズは、小型船を中心としたラグジュアリー客船を運航するクルーズ会社。全ての客室がスイート仕様で、船内でのアルコール類を含む飲食やアクティビティ、寄港地観光、チップ代などが乗船料金に含むオールインクルーシブ制でサービスを提供する。米国のロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)のグループだが、モナコに本社を置く欧州発祥のクルーズ会社で、全室にバトラーが付くのが特徴だ。

同社は2023年3~4月にかけて、シルバー・ミューズによる大阪発着クルーズとシルバー・ウィスパー(2.8万トン:乗客定員388人)による東京発着クルーズを各3本、計6本運航。2023年秋は、両船で横浜発着と東京発着のクルーズを計3本運航する。

同社は2007年頃から日本への寄港を開始。日本・韓国支社長の糸川雄介氏によると、日本クルーズの人気が年々高まる中、2019年の春と秋に実施した日本発着クルーズは同社クルーズで最も収益性の高いクルーズとなった。これを踏まえ、2021年からは2船体制で春と秋にクルーズ運航を予定していたが、コロナ禍で2年にわたり中止を余儀なくされた。

しかし、糸川氏は「当社の意欲は衰えず、日本には変わらずに春と秋に2船を配船する」と、日本発着クルーズを重視している姿勢を強調。実際、2023年春のクルーズは、空室は数室のみでほぼ満船。2023年秋も出航日によってはすでに満船に近いクルーズもあるほど、日本でのクルーズに対する欧米市場の需要が高いという。

2024年は、春にシルバー・ミューズと同型船のシルバー・ムーンによる東京発着・横浜発着クルーズを計4本予定。2024年秋にはシルバー・ミューズと最新鋭のエコシップ「シルバー・ノヴァ」(5.5万トン:乗客定員728名)を日本に配船し、この2年間で計15本の日本発着クルーズを実施する予定だ。

さらに2025年には、4大陸の30カ国59港をめぐる136日間のワールドクルーズの出発地として初めて、日本(東京)を設定するなど、日本でのクルーズ運航に力を入れている。日本人の乗船も見込んでおり、糸川氏は「5月にはコロナの感染症の分類が5類になる。日本市場での外航クルーズ再開から復活のフェーズに代わるタイミングだと思っている」と期待を示した。

日本・韓国支社長の糸川雄介氏

日本人のクルーズも回復傾向、探検船の人気上昇

一方、同社の海外クルーズに乗船する日本人のフライ&クルーズに関しては、個人旅行者は2022年春頃から、ツアーなどグループ客も2022年秋頃から動き始めた。今年は春先から秋にかけて、地中海など欧州クルーズを中心に予約が増えているという。

特にコロナ以前との違いでは、「探検船」の予約が活発に動いていること。同社では、一般的な海域に配船する客船「クラシックフリート」(6船)と、探検船「エクスペディションフリート」の2タイプの客船を保有しており、探検船では南極や北極、ガラパゴス、豪州の北西部キンバリーなどを運航している。

探検船の人気について糸川氏は、「海外旅行に行けない状況になり、3年間も抑制されていた分、行ける段階になったら『絶対に行きたいと思っていたところに行こう』という意識が強まったのではないか」と推察した。

なお、同社では新造船の就航が相次いでおり、探検船では2022年に「シルバー・エンデバー」(2万トン:乗客定員200名)を就航。クラシックフリートでは前述のエコシップ「シルバー・ノヴァ」を2023年に、その同型船「シルバー・レイ」を2024年に就航する予定だ。両船はLNG(液化天然ガス)と電池バッテリーのハイブリット駆動で、温室効果ガスの排出量を従来の船に比べて40%削減。停泊中に排気ガスなど有害排出物を出さない業界初のラグジュアリー客船になるという。

コロナ後も変わらない船内・サービス

コロナ禍を受け、クルーズ会社は様々な感染予防対策を実施した。しかし、今回取材した船内は、客室やパブリックスペースなど、乗客が乗船中に過ごすエリアでは一見、何の変わりもないように見られた。

これについて糸川氏は、「ラグジュアリーシップはもともと1人当たりのスペースが広く、サービスも違う」と説明。例えば、ビュッフェでは以前から、乗客が選んだ料理をウェイターが取り、そのままテーブルまで運ぶ。サラダや前菜など、乗客自身が料理を取る一部のコーナーでは、再開直後はウェイターが料理をとるスタイルに変更したが、現在では通常通りに戻している。

客室にはブルガリのポーチにマスクやアルコールジェルなどを入れた“感染防止グッズ”を置き、乗客が希望に応じた感染対策をできるようにしているが、以前と同じような感覚でクルーズ体験ができそうだ。

ブッフェエリア。奥のコーナーで料理を選ぶと、ウェイターがテーブルまで運んでくれる。サラダなど手前のコーナーは自分で盛り付ける

ベランダ・スイートはシルバーシーで最も数の多い客室で、広さは36平米。ベッドの手前にはバスタブと独立シャワーのついた大理石のバスルームとウォークインクローゼットがある。左の鏡はテレビも兼ね、タッチパネルで操作も可能。

ベッドの上に置かれたブルガリのポーチには、感染予防グッズを用意

プールデッキエリア。チェアは十分な数を用意しており、「席取りをする必要はない」という言葉にもゆとりを感じる

9つあるレストランのうち2つは有料。その1つ、フレンチの「ラ・ダム」は人気が高くすぐに予約が埋まるという

5万トンに満たないシルバー・ミューズだが、スモールラグジュアリーシップを運航する同社では最大の客船。着岸した横浜港の新港ふ頭客船ターミナルは目の前に観光スポットがあり、到着後すぐにデスティネーションが感じられる港の1つ

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…