
UNツーリズム(世界観光機関/UNWTO)は、2025年第1四半期の国境を超える世界の国際旅行者数が前年同期比5%増で約3億人を超えたと発表した。2019年同期比では3%増となり、地政学的リスク、貿易問題、インフレに直面しているにも関わらず、世界の旅行市場は好調に推移した。
地域別に見ると、アジア太平洋への旅行者数は2024年同期比12%増、2019年の92%に達した。特に北東アジアは同23%増となり、2019年水準の91%まで回復した。
欧州全体では2024年比2%増、2019年比5%増。中欧・東欧は、バルト海沿岸諸国を中心に需要が拡大し、2024年比8%増となったが、2019年の水準は依然として下回っている。欧州の地中海地域は、一部の目的地でオフシーズン旅行の需要が増加したことで、旅行者数は2024年比で2%増加した。
南北アメリカは2024年比2%増加。南半球の夏季シーズンとなる南米の数カ国で旅行者が好調に増加した。
中東は、近年の驚異的な成長の反動で増加率はより緩やかになり、同1%増にとどまったものの、パンデミック前の水準を44%上回った。
国際航空運送協会(IATA)にると、2025年第1四半期の国際線の航空旅行需要は2024年同期比8%増加、座席供給量は同7%増加した。世界の宿泊施設の稼働率は3月に64%に達し、2024年3月(65%)とほぼ同水準だった。
日本の国際観光収入が急増
国際観光収入(インバウンド収入)を見ると、アジア太平洋地域では、日本が2024年比34%増と急増。ネパール(18%増)、韓国、モンゴル(いずれも14%増)も2桁成長を記録した。
世界最大の国際観光収入国である米国は、2024年に14%の増加を記録したものの、2025年第一四半期は前年同期比3%の増加にとどまった。世界第2位の国際観光客数を誇るスペインは、2025年の最初の2か月間で同9%の成長を記録。第一四半期では、ノルウェー(20%増)、デンマーク(11%増)、トルコ(7%増)、フランス(6%増)、ギリシャ、イタリア、ポルトガル(いずれも4%増)が増加した。
2025年、経済的不確実性がリスクになる可能性
UNツーリズムは、2025年の国際旅行市場について、経済成長の鈍化、旅行費用の高騰、関税の引き上げといった経済要因が市場動向に影響する可能性があると指摘。また、地政学的および貿易摩擦に起因する不確実性も旅行意欲を低下させる要因になりうると付け加えている。
UNツーリズムの観光信頼感指数では、2025年5月から8月までの期間、専門家パネルの45%が需要の見通しが改善(40%)または大幅に改善(5%)すると予測。一方で、33%は2024年同時期と同程度の実績とみている。また、約22%は観光の実績が悪化すると予想した。
UNツーリズムは今年1月に、2025年の海外旅行者数について3%から5%の増加という予測を発表したが、現在のところこの予測は修正していない。