
モナコ政府観光会議局ディレクターのギー・アントネリ氏が、2025年6月に開催された大阪・関西万博モナコ館ナショナルデーに合わせて来日し、同国の観光政策や市場動向などについて説明した。
モナコへの日本人旅行者数は、コロナ後も国際情勢の影響によって減少が続いていたが、最近になって回復傾向を見せている。2025年5月単月では前年同月比20%増という結果を残した。ピークだった2000年の日本人旅行者のシェアは5%でトップ10市場に入っていたものの、2019年には1.2%まで縮小。そのなかで、アントネリ氏は、近年の回復基調を踏まえて、「今後、2019年の倍となる2.5%までの回復を目指す」と意欲を示した。
モナコ政府観光会議局は、2023年から「比類なき美しい国、モナコ(Like Nowhere Else)」をテーマに観光プロモーションを進めているところ。このコンセプトについて、アントネリ氏は「モナコは、同じ地中海沿岸のコート・ダジュールともリビエラとも違う独特の雰囲気がある」と説明。日本市場に向けては、その独自性とともに、クオリティ、安全性、清潔性、歴史と文化など日本人の価値観と共通するものを訴求していくという。
また、アントネリ氏は、モナコの重要な市場である富裕層についても言及。その世界的な市場動向について、「地政学的リスクと関係なく、非常に盛況」との認識を示し、通常の旅行市場とは違う動きであることを付け加えた。そのうえで、世界中を旅行している富裕層は、「ハイレベルの国際的スタンダードと同時に、ローカルな体験を求めている」ことから、「モナコは、グローバル性とローカル性の両立、つまり『グローカル』な滞在価値を提供していく」と話した。
一方で、日本市場に向けては、新たに現代的な素材が増え、ホテルのカテゴリーも多様化しているなかで、「20代から40代の若い世代に向けてのアプローチも強めていく」とともに、インセンティブ旅行などの法人・ビジネス旅行の誘客にも力を入れていく考えだ。
さらに、アントネリ氏は、地中海沿岸周遊の拠点としてのモナコの存在価値を強調する。フランスやイタリアにも近く、また、フランスのコート・ダジュールでは、シーズンオフになると閉館する高級ホテルもあるが、モナコのホテルは通年でオープンしていることから、観光のハブとして利便性が高いとアピールした。
日本市場への期待を語るアントネリ氏
万博モナコ館を観光のショーケースに
大阪・関西万博モナコ館のテーマは「Take Care of Wonder」。サステナビリティに焦点を当てたものだ。アントネリ氏は、Wonderに込められた意味として、「感動すること」と説明する。そのうえで、「このテーマは観光施策にも大きく関わっている」と話し、「未来の観光は、さまざまな文化に感動することなしにはありえない。モナコを、単なるミュージアムではなく、訪れて気持ちのいい場所、暮らして気持ちのいい場所にしていく」と続けた。
また、環境面では、2030 年までに55%の温室効果ガス排出を削減、2050 年までにカーボンニュートラル実現を目指していることにも触れ、モナコのホテルの80%がエコ認証を受けていることを紹介した。
最後に、アントネリ氏は、万博モナコ館がモナコ観光のショーケースとなることから、「モナコのハピリオンを訪れて、その独特の雰囲気を感じてほしい」と呼びかけた。
関西大阪万博のモナコ館外観。内部にはワインバーや、モナコの景観を体感できる展示、庭園がある(撮影:トラベルボイス編集部)