
JTBとエアビーアンドビー(Airbnb Japan)は、多様な業界の企業・団体と共に地域の課題を解決し、持続可能な価値を生み出す新たな仕組み「地域未来にぎわい工房」を創設した。地域の文化やアイデンティティに寄り添いながら、賛同するパートナー企業と共に、観光支援の枠を超えた「持続的なにぎわい創り」を支援していく。
両社は、2025年1月に新たな包括連携協定を締結。東日本を中心に地域資源を活用した体験型観光プログラムの開発や地域の新しい観光モデルの構築を支援してきた。「地域未来にぎわい工房」では、全国に取り組みを拡大し、2028年までに125地域での展開を目指す。
この取り組みを発表する記者会見に登壇したAirbnb共同創業者兼最高戦略責任者ネイサン・ブレチャージク氏は、「この共創事業によって、旅行者を都市から地方に分散させることができ、地域の経済活性化にも貢献できる」と期待感を示した。
日本国内のAirbnbユーザーの宿泊予約数を2023年と2024年で比較したところ、2024年の国内地域の宿泊数は前年比25%増だった。また、流通総額(GBV)に占める非都市部の割合は、2019年の4%から6%へと上昇。地方への予約の3件に1件は、日本人による国内旅行だという。
さらに、日本人の18歳から40歳半ばの85%が、今後1年以内に主要都市以外の地域を訪れたいと回答していることから、ブレチャージク氏は「地域の旅行市場の潜在性は高い」との見解を示した。
「地域未来にぎわい工房」の意義を強調するブレチャージク氏
一方、JTB専務執行役員ビジネスソリューション事業本部長の大塚雅樹氏は、今回の取り組みについて、「交流創造事業を展開していく中で、この取り組みを通じてAirbnbと同じ目線で地域を変えていくことができる。今後、社会的価値と経済的価値の融合にチャレンジをしていく」と話した。
この共創の仕組みでは、JTBが全国のネットワークを生かしてプロジェクトの組成や運営を担い、Airbnbは空き家の宿泊施設化やマーケティング支援を進めていく。
「地域が持っている良さを引き出していく」とJTB大塚氏重点テーマは4つ、日本の成功事例を世界に
この取り組みでは、重点テーマとして、再エネ事業と連動した滞在インフラを整備する「再エネ地域」、人材の滞在を支援する「産業集積地域」、遊休資産を避難所や仮住まいとして活用する「防災対応地域」、観光・移住検討者の交流拠点を整備する「離島・周辺地域」に焦点を当てて、活動を展開していく。
このうち、北海道上ノ国町では再エネ地域として取り組みが始まっている。同町では、人口減少に伴い空き家問題が深刻化。一方で国内最大級の洋上風力発電が誘致されることになり、その関係者の宿泊問題が表面化していることから、「地域未来にぎわい工房」の枠組みで空き家の利活用を進めている。同町の工藤昇町長は「不良資産が優良資産に生まれ変わる夢のような話」と今後に期待を寄せた。今後、町全体で30~40ヶ所の宿泊施設を整備していく計画だ。
ブレチャージク氏によると、フランスやスペインなどでも日本と同様に地域の空き家問題と地方への旅行者誘致という課題が顕在化しており、Airbnbは日本と類似の取り組みを進めているという。一方で「日本の取り組みがユニークなところは、パートナーシップのレベルが非常に高いところ」と評価する。
「地域未来にぎわい工房」では、すでに大日本印刷や良品計画、Airbnb Partnersからはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、オリエントコーポレーション、損害保険ジャパンが参画。今後さらに幅広い業種からの参加が見込まれるという。ブレチャージク氏は「日本で学んだことを欧州でも展開していきたい」と話し、同社の地方創生事業に意欲を示した。