次世代型クルーズ客船が日本初寄港、ロボットバーや腕時計型ナビなど6つの革新性を公開

【船内フォトレポート】

クァンタム・オブ・ザ・シーズが日本初寄港

ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)の次世代型客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が2015年6月27日、福岡県・博多港に初寄港した。これにあわせ、RCIと福岡市港湾局(博多港)は記念式典を開催。船内見学会には約170名の自治体・港湾関係者や旅行業界、メディアが、福岡のみならず東京からも集まった。


船長のスレッコ・バン氏

クァンタム・オブ・ザ・シーズが注目される理由は2つ。1つは、総トン数16万7800トン(乗客定員4905人、乗務員1500人)の大型船で、これまで日本に寄港した客船では最大であること。中国をベースに、日本全国9港に計65回の寄港を予定しており、地域へのインバウンド効果が期待されている。

もうひとつは、記念式典の挨拶で同船船長のスレッコ・バン氏が「革新的な“スマートシップ”として、テクノロジーを駆使して作られた」と紹介するように、新技術を多用した最新鋭の客船であること。2014年秋就航の同船には効率化のみならず、乗客の快適性や利便性、さらにはクルーズライフを楽しませるための魅力向上の部分にも、ユニークな仕掛けが搭載されている。


RCI中国営業マーケティング部長・北東アジア担当のトーマス・ワン氏

RCI中国営業マーケティング部長・北東アジア担当のトーマス・ワン氏は、中国と日本を含む北アジアを重要マーケットとして重視するRCIの方針として、今後アジアに地域内で最大規模の5客船を配船することを説明。

このうち、1隻は来春デビューする姉妹船「オベーション・オブ・ザ・シーズ」で、中国・天津を母港とする。2015年のクァンタム・オブ・ザ・シーズはすでに完売。2016年はオベーション・オブ・ザ・シーズも含め、約8割が売れているという。新造船の人気が高いのは通例だが、「予想を超えた需要がある」(ワン氏)と、“スマートシップ”効果をアピールする。


▼気になる船内は? 新技術や新コンセプトで楽しませるアイディアがいっぱい

装飾や案内表示にはデジタル画像や映像を活用。ここまで多いのはクァンタム・クラスならではだという。

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全体的には落ち着いたシックなデザイン。デジタルがうまく溶け込んでいる。従来のアナログ形式の案内もある。

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参加者の注目を最も集めたのが、ロボットバー(バイオニックバー)。テーブル上のタブレット端末での注文を受け、パフォーマンスを交えてカクテルを作る。

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世界初の設備も多い。最上階のデッキ15には展望カプセル「ノース・スター」が誕生。海上約90メートルの高さまでアームが伸び、360度の景色が見渡せる。

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サーフィンやボディボードができるフローライダー。その後ろは、スカイダイビング疑似体験「リップコード・バイ・アイフライ」が洋上初登場。

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多目的スポーツ施設も洋上最大。フルサイズのバスケットコートの大きさで、バンパー・カーや空中ブランコ体験などエンターテイメント要素も。

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クルーズ中に撮影される様々な写真もタッチパネルで注文。好きな写真を選ぶだけ

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食事も革新的な「ダイナミック・ダイニング」。メインダイニングを6つ用意。中国発着では無料レストランは予約不要で、決められた時間内に好きなレストランに行くだけ。写真は創作料理の「シック」。

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8つの有料レストランと、ビュッフェや軽食など5つのカジュアルレストラン(無料)、8つのバー&ラウンジ(有料)もあり、食の楽しみは尽きない。写真はジェイミー・オリヴァー氏の手掛ける「ジェイミーズ・イタリアン」。

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16万7800トンは、これまで日本に寄港した船で最大。全長348メートル、幅41メートル、海面からの高さは62.9メートル。

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▼新技術でクルーズはどう変わる?

RFIDを埋め込んだ「WOWバンド」

クァンタム・クラスの特徴は、“スマート6”とアピールする6つの革新性。このうち、クルーズ体験を大きく変えたポイントは、超高速回線のインターネット導入とRFID(近距離無線通信)の基盤を整えたことによるものだ。

乗客にはRFIDを埋め込んだ腕時計型の「WOWバンド」を提供。従来の磁気型カードと同様にルームキーや船内会計、船内ナビで使用するが、よりスムーズに、またセルフで行なえる機会も増える。チェックインも事前にオンラインで自身が行ない、ターミナルでは不要に。大型船だが、到着後10分ほどで乗船が可能になるという。


アプリ「ロイヤルiQ」

さらに、スマートフォン向けアプリ「ロイヤルiQ」も制作。自身のスマートフォンで船内のイベントスケジュールの表示やダイニングや気候地観光の予約ができ、クルーズ旅程を自分で作れるアプリだ。Wi-Fiの料金プランによっては乗客同士のメッセージ機能も使えるという。船内を別行動している相手への即時性ある連絡手段としても利便性がありそうだ。

また、航行中も陸上と遜色ない速度のインターネットの導入で、日常をクルーズに持ち込めるようになるのもポイント。バン船長も「家族とクルーズを楽しみながら仕事もできる」といい、クルーズに参加しやすい可能性が広がる。

RCIのスマートシップ「クァンタム・クラス」の船団は来年には全3隻になり、そのうち2隻が中国拠点にアジアで運航されることになる。中国営業マーケティング部長・北東アジア担当のワン氏によると、RCIではITや新技術を流通や船の革新性のみならず、セールス&マーケティングにも活用していく方針。アジアで蓄積するスマートシップのクルーズデータをどのように活用していくのか、この点でも注目していきたい。


【スマート6】

  1. チェックイン:事前オンラインチェックイン
  2. コンシェルジュ:RFIDタグの「WOWバンド」使用
  3. 接続:大容量の超高速回線インターネット
  4. 体験:ロボットバーなど
  5. サービス:乗務員にタブレットを配布
  6. エコ:エネルギー効率の良い船体、エンジン、省エネ機器を搭載。コンピューター制御で効率化

【クァンタム・クラス 船隊】

  • クァンタム・オブ・ザ・シーズ:2014年11月就航 カリブ海⇒アジア
  • アンセム・オブ・ザ・シーズ:2015年4月就航 ヨーロッパ⇒カリブ海
  • オベーション・オブ・ザ・シーズ:2016年4月就航予定 アジア⇒オセアニア
  • 名称未定:2019年就航予定(2015年5月発注)

取材:山田紀子

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