訪日リピーター拡大のカギは「地方空港」、すべき路線誘致や未来の「大きな存在」を予測 -OAG・JTB総研セミナーより

航空スケジュールデータの世界大手OAGとJTB総合研究所は初めてとなる「地方航空の活性化と今後の日本ツーリズムの展望」をテーマとするセミナーを開催した。これは、OAGの持つ航空座席データから日本の双方向ツーリズムを考察するとともに地方空港の活性化を展望するもの。OAGアビエーション・ワールドワイド日本支社セールスマネージャーの山本洋志氏が「データと海外から見るインバウンドツーリズム」について説明したほか、JTB総合研究所研究理事の黒須宏志氏が「Two Way Tourism戦略研究」を発表した。

OAGの山本氏は、まず日本の航空の現状を説明。2019年夏スケジューでは計約1億2500万席が114の航空会社から提供され、そのうちフルサービスキャリア(FSC)が約9900万席、LCCが約26万席。政府目標である訪日外国人4000万人に向けては供給は足りるが、今後、航空機の小型化が進むと予想されることから「6000万人には難しい(航空座席がたりない)」との見解を示した。

JTB総研の黒須氏は、その4000万人について、成長率が鈍化していることから2020年の達成は困難との見方を示したうえで、達成は2022年ごろにずれ込むと予想。そのうえで、「今後は、東南アジアからの旅行者と4回以上のリピーターが市場をリードする」とした。空港への誘致ではファーストタイマーが多い東南アジアからは成田、羽田、関西の主要ゲートウェイ、一方リピーター需要を増やしていくためには地方空港への路線誘致がそれぞれ必要になるとの考えを示した。

JTB総研のプレゼンテーションから

現在、定期便が就航する79空港のうち国際線が就航する空港は34空港のみ。そのうち、ほとんどが上位7空港に集中している。山本氏は、GDSからOAGが収集したデータをもとに2018年の流動に関する各空港の国際線実績も紹介。それによると、新千歳は約207万人の旅客数のうちインバウンドが約160万人と大部分を占めているのに対して、中部は計約323万人のうち約160万と半分。その反面として、日本人の海外渡航(アウトバウンド)が多いが、その大部分がトヨタ関連の業務渡航が占めるとし、そのためチケットの平均販売額を積み上げたレベニューでも、インバウンドは相対的にかなり低くなっている。

山本氏は、こうした流動データから「インバウンドが非常に強い那覇のような例外はあるが、航空会社は基本的にアウトとインのバランスを見て、リスクの少ないところから路線を決める」と話した。

OAGのプレゼンテーションから

ツーウェイツーリズムで旅行需要の「正の循環」に期待

黒須氏は、海外旅行需要が増加傾向にあることから、「訪日需要と海外旅行需要の成長がリンクするようになっている」と指摘したうえで、「今後は、特に東南アジアなど訪日旅行の成長が続くと予想される方面では、海外旅行増加の正の循環が続きやすくなる」と予測した。

東北6県の方面別旅行者数と仙台空港の利用者数を比べてみると、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンなど東南アジアの日本発旅客需要はあるものの、仙台空港はその需要を満たしておらず、黒須氏は「そこに航空路線を誘致する潜在力がある」とコメントした。

山本氏も、東南アジアにおける日本発の座席数は現在の1066万席から2028年には1600万席になる可能性があり、どの地域よりも成長率は高いと指摘。ベトナム、タイ、インドなどの経済成長の高い国から地方空港への路線誘致の可能性は大きいとしたうえで、「インバウンドだけでなく、アウトバウンドのプロモーションも考えながら誘致策を考えるべき」と強調した。

さらに、山本氏は日本の地方空港と極東アジアのハブ空港への接続についても言及。特に中国の地方空港は、将来的に中部と同規模の空港になる可能性があり、現在でもタイなどの東南アジアへのネットワークを拡大していることから、そうした空港と接続することで、中国だけでなく東南アジアからの日本へのインバウンド、あるいは日本から中国経由のアウトバウンドでの乗り継ぎ需要を開拓できる可能性があるという。ただし、「逆に言うと、中国の航空会社の路線戦略では、日本の地方空港にとって東南アジアはライバルになる」と付け加えた。

このほか、両氏が重視したのは在留外国人の存在。黒須氏によると、国の政策によって在留外国人数は2018年の255万人から2030年には441万人に増加すると推計されており、その時点で日本発アウトバウンドの約2割が在留外国人になると予想されることから、「地方空港も国籍主義から居住地主義に考え方を変えて、路線誘致を考えるべきでは」と提言した。また、山本氏も航空会社は在留外国人の需要を見ているとし、例えば「フィリピン航空は在日フィリピン人の需要を安定して獲得できる空港を狙っている」と紹介した。

JTB総研のプレゼンテーションから

取材・文 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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